見出し画像

「清潔」な職場は問題が見える

これまでに「整理」「整頓」「清掃」について記載して参りましたが、5Sは、見てくれを良くするだけではありません。

5S活動は現場の仕事を楽にし、且つ経営の効率アップに直結する有効な手段であることをご理解いただけたとしたら嬉しい限りです。

また会社の利益を増やすだけの5Sではなく、活動を進めることを通じて社員の皆様のスキルアップになることも期待できます。

サントリーさんの「やってみはなれ」の精神を参考にして、良いと思ったことは何でも試しにやってみれば、確実に力が磨かれます。

さて、今回は「清潔」と「躾(しつけ)」です。
先ず「清潔」ですが、「清潔」がナゼ5Sにあるのでしょうか?

その意味を知るためには、「清潔」を、手洗いをマメにすること/身だしなみを整えること/毎日お風呂に入ること、といった理解に留まるのではなく、もっと現場の仕事に密着して効力を確かめる必要があります。

「清潔」とは、「整理・整頓・清掃が継続され目で見て整然と綺麗」です。

この中にある「綺麗」な状態を、現場で日常的に使う「正常」な状態と置き換えます。

すると、「正常」が「目で見て」わかる体制を作ることで、「正常」な状態を「継続」させることが「清潔」となります。

(今回は、何通りもある「清掃」の解釈のひとつとして記します)

「正常」ではない状態は「異常」なので、「正常」と「異常」が目で見てわかる「見える化(可視化)」を推進することです。

例えば、20231211版で記したA社の在庫削減の取り組みの中で出現しましたが、上限在庫と下限在庫を床にテープを貼って「見える化」しました。

また、高温になる設備に人体が触れないよう、床にトラ柄テープを貼り、更にコーンを置いて「見える化」し、人の侵入を防ぎます。

つまり、目標を阻害する「異常」を防ぐことが管理活動であり、換言すると「問題(=異常)」を発生させないことが管理です。

管理については別途触れますが、異常=問題、問題解決=管理=改善活動
と押さえておきましょう。

この「問題」が現場で見える体制ができると、改善は飛躍的に進む可能性があるので、皆さんの職場でも「見える化」に取り組んでみてください。

生産革新では「問題」があることは問題ではなく、「問題」を放置することが問題なので、自信を持って「見える化」を進めてください。

更に、現場で「問題」が見えれば、それを解決しようとする動きが始まることから、「正常」な状態が「継続」できることに繋がります。

ご存知のとおり「継続化」や定着化は、職場管理(改善活動)の重要課題であることから、「見える化」を改善のメインテーマとして取り組む企業様も多く存在します。

これまでをまとめて「清潔」をシンプルに示すと、「現場レベルで問題を見える化する活動」になります。

また、「清潔」の効力としては「正常な状態を継続することよるSEQDC(20231208版をご参照ください)の課題解決」です。

例えば先述の在庫の「見える化」により、「D納期」を守り、在庫に関わる「C原価」を低減します。

また、危険な場所への侵入を防ぐための「見える化」は、「S安全」を継続的に確保することを目指します。

身だしなみを整えるレベルから随分と現場に近づき、やるべきことが見えて来たとしたら、早速できることから「やってみなはれ」。

これらのことから「清潔」は、5Sの中のひとつとして無くてはならない存在であると考えます。

次に「躾」です。
見てわかるとおり「躾」は「身」と「美」で構成された文字で、規律正しいことが連想できます。

5Sの中の「躾」として、自分の立ち位置を再確認することから始めて欲しいと考えています。

自分は組織の一員であり、会社は組織で構成されているという、当たり前の理解です。

だから、工具を使いっ放しにすることはダメで、使い終わった工具はスグに決められた位置に戻し、職場の仲間に迷惑を掛けません。

だから、「おはようございます」の挨拶と「お疲れ様です」の声掛けをし、円滑な人間関係を心掛けます。

このように組織の一員であることを自覚し、相応の対応をすることが求められ、それが実行できる「躾」が必要なのです。

また、人体が細胞組織で成り立っているように、会社は各部門の組織が機能することで価値が最大化され、各部門の努力の合計が会社の業績になります。

更に会社には顧客の視点が向けられ、お客様から認められることで取引が成立していることは社員全員が知っています。

会社は社会の中に存在し、社会に反する行為や、社会から支持を得られない言動はNGであることも、多くの社員が理解しています。

しかし現実には、社会的に不適合な言動や、顧客本位とはかけ離れた対応を取る社員が現れることは残念ながら想定されるため、そのリスクをゼロに近づけるための「躾」が必要なのです。

自分の中に組織があり、組織の中に会社がある。
この思考が間違っていることを日常的にしつけることが管理監督者の役割と責任です。

更に「躾」を続けます。おそらく全国でも私だけの着想だと思いますが、「躾」の本質的な意味を理解できる独自の解釈を次に記します。

これを知ると、「躾」の方向性と組織メンバーとの接し方を修正できることから、是非とも参考にして頂きたい考え方です。

私は、「躾」は元々「仕付け」であり、裁縫の「仕付け糸」が語源になっていると考えています。

その「仕付け糸」とは、手縫い用の糸で仮縫いに使用され、本縫いが綺麗に行えるように生地同士を整えるためのものだそうです。

従って、「仕付け糸」は本縫いの品質を高めるための前準備として存在し、強すぎても、滑りが良すぎてもダメなのです。

「仕付け糸」の説明の中で最も注目すべき点は、形が整ったら取り外すという使い方です。

これが「仕付け糸」ですが、その中には私たちが学ぶべき重要なことが存在しているので、以下に整理します。

「生地同士を整える」→人間関係を円滑にすることで組織を機能させる

「強すぎても、滑りが良すぎてもダメ」→変化に順応して強弱を付ける

「形が整ったら取り外す」→必要な指導が終わったら本人に任せ自立させる

従って「躾」は「仕付け糸」から来ているとすると、5Sの最後に置かれることが相応しいことを確信するのは、私だけでしょうか。

経営の中心は人であり、正しい方向性(例:社会性、顧客本位など)を持って人を育て、人を成長させ、人を自立させるものにするために、5Sには「躾」が堂々と存在していると考えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?