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正しい原価低減vs間違った原価低減

前回版で原価低減の必要性を理解した上で、ご覧頂きたいのが今回の記事です。

皆さんは原価低減に、「正しい原価低減」と「間違った原価低減」があることを、ご存知でしょうか。

企業様の改善指導をしている中で、「間違った原価低減」をしているケースは少なくありませんが、こんな場面は私の出番と考え、都度正しい方向へ導いています。

「間違った原価低減」とは何か? ナゼ間違っているのか?
「正しい原価低減」とは何か? ナゼ正しいのか?

再確認が主になると思いますが、今回はココを確実に押さえ、「正しい原価低減」が実践できるようにしますので、お付き合いください。

「正しい原価低減」は、3つのステップに分けて行います。

第1ステップ 仕事の中に存在する「ムダ」を発見します。

「ムダ」の説明は後にするとして、この時点では皆さんが考える「ムダ」で結構です。

少し話がそれますが、皆さんが思いつく、会社及び職場に存在する「ムダ」を列挙してみてください。

多く挙げられるほど仕事に精通していると考え、ご自身の名誉のためにもチャレンジ!

更に、部下に列挙させると、仕事の力量がわかるので試してみて、今後の指導&育成にお役立てください。

第2ステップ 仕事を「価値」と「ムダ」に分けます。

全ての仕事は「価値」と「ムダ」で構成されると考え、以下のように整理します。

《仕事=価値+ムダ》

仕事には必ず目的があるので、それをハッキリさせます。
価値は、仕事の目的を達成するために直接的に役に立っているもの。
ムダは、目的を達成するために直接的に役に立っていないもの。

まだ「ムダ」の意味はしっくり来ないと思いますが、ひとまず。

第3ステップ 「ムダ」を排除します。

これ迄のステップ1~3を、「言葉の意味を調べる」という仕事例を使って理解することにします。

<動作分析> 目的:「能率」の意味を理解する
イスから立ち上がる→コピー機をよけながら移動→仲間と立ち話→書棚のスライド扉を開ける→辞書を取り出す→扉を閉める→辞書をケースから取り出す→台を探して歩いて移動→ケースを台の上に置く→辞書を開く→ナニヌネノと目を送る→ノに辿り着いて指を入れる→1頁戻す→1頁送る→「能率」で目を停める→目で文字を追う→指で文字をなぞる→【頭の中で意味を整理する】→・・・まだ続きますが、辞書を戻してイスに座る迄の部分は省略します。

第1ステップ 「ムダ」の発見
分析した中の【頭の中で意味を整理する】以外の全て。

第2ステップ 仕事を「価値」と「ムダ」に分ける
「仕事=価値+ムダ」に従うと、以下になる。
「能率」の意味を理解する=【頭の中で意味を整理する】+「その他全て」

第3ステップ 「ムダ」の排除
上記の「その他全て」を排除し、コピー機を通路に置かない/隣の人に聞く/パソコンやスマホで検索する/音声で意味を聴くなどに変えると時短ができて原価低減に繋がります。

尚、「仲間と立ち話」は、円滑な人間関係には必要なものですが、仕事の目的と直接関係がないので「ムダ」に分類しました。

ムダ排除と働きやすい職場環境との関係性、つまり「何でもかんでもムダ排除、利益、合理化、時短で世知辛い」は、原価低減の正しい解釈ではないので、この件は別の機会に説明することとします。

今回は原価低減がテーマであり、円滑な人間関係や息抜きなど、様々な出来事を「~だからムダじゃない」「ムダに分類するとは何事だ」と言い始めると、説明が複雑になり、理解が難しくなるので、ここはバッサリ分類します。

「正しい原価低減」に話を戻し、工場にある現場の事例を使って、より現実的な仕事を分析してみます。

ネジを締める仕事では、ネジを回す以外に発生する以下は、全てムダに分類されます。

工具の取り置き/ネジの取り置き/工具をネジにチャッキング/トルクレンチの取り置き/締め付けトルク値の設定/増し締めなど。

従って、ムダを排除する方策として、作業の簡素化、多機能工具、半自動、自動化などが挙げられ、原価低減が進みます。

更に、この作業の目的を「ネジを締める」ではなく「固定する」と考えると、「固定したければ、ボンディングすればネジと工具は要らなくなる」などのアイディアが出ることから、目的の捉え方も参考にしてください。

今回は極端な2つの事例でしたが、仕事の中の「ムダ」に着眼することを押さえておきましょう。

さて、あらためて「間違った原価低減」を説明します。

仕事を「価値」と「ムダ」に分けずに、漫然と原価を低減することは間違っています。

例えば、仕事を「価値」と「ムダ」に分けずに、仕事の時間短縮だけを社員に求めることは間違っています。

時短のみを考え(ムダに着眼せずに)原価を低減すると、安全が疎かになり、品質が悪化する場合があり、労働環境も良くなるとは言えないでしょう。

例えば、前出の「増し締め」を省いて終わりにすると、取り付け不完全で、商品の運搬及び使用中に部品が脱落する事故が想定されます。

少々キツイ表現ですが、仕事の速さだけを求めることは「手抜き」と表現され、お客様及び自社に対して悪い影響を与ることになることから、あってはならない仕事振りです。

「手抜き」作業をして気分が高まるハズは無いので、社員にとっても良いことではありません。

「手抜き」と「改善」の違いを知りましょう。

また、「価値」と「ムダ」に分けず、仕事を大雑把に捉えて原価低減に取り組むことも良くないことも心得ておきましょう。

過去に掲載した20231208版の中で、【SEQDを満足した上で、いかにして「C原価」を低減するか】がありましたが、

これは、前述のステップ1→2→3を進めると実現できるので、実はそれ程難しいことではないのです。

基本的には、作業の中の「ムダ」を排除してもSEQDにマイナス影響を与えることはありません。

あるとすれば、「ムダ」の純度が低く、その「ムダ」の中に「価値」が混在している可能性があるので、もう一度現場に行って実際に仕事を行いながら細かく分析してみてください。

従って、仕事を「価値」と「ムダ」に分け、「ムダ」を排除することで原価を低減するのが「正しい原価低減」であることを、しっかり押さえておきましょう。

「正しい原価低減」を進めることで、人が働きやすく、社員の能力を最大限に発揮できる職場にすることも大切な視点です。

例えば、定置化したことで工具を探すムダな動きが無くなれば、作業の能率が向上し、働きやすくなります。

そして、安全や品質には全く悪影響が無いどころか、好影響を与えることが多いものです。

昨今の材料及びエネルギー費等の高騰に対して、原価低減をしないと立ち行かない中、「正しい原価低減」に徹して乗り切りましょう。

一方で、厳しい経営環境だからこそ、安全第一で品質を疎かにしないことが大切です。

最も効率が良いのは、ミスや忘れが無く、不良を造らないことであることを知りましょう。

また、逆境や苦境の時に今迄に無いアイディアが出るもので、それで会社が変わった事例も多くあり、「試練は会社を磨く」と前向きに受け入れましょう。

最後に前出の《仕事=価値+ムダ》は、次のように表すこともできるので加えておきます。

《仕事=価値+無価値》
《仕事=必要+不要》

「必要なモノと不要なモノを分ける」は、5Sの中の「整理」なので、私は原価低減のベースは5Sであると考え、指導しています。

つまり、必要なことは確実に実行し、不要なことはしないようにすることが「正しい原価低減」です。

必要なことを確実に実行することで、「S安全」「E環境」「Q品質」「D納期」の要求を満足します。

また、不要なことを見極め、減らすまたは排除することで、「C原価」を削減します。

更に、一生懸命に仕事をしている当事者に怒られそうですが、以下に表すことで原価低減が進むならば、参考にして下さい。

《仕事=意味のある仕事+意味の無い仕事》

尚、前段で、「ムダの説明は後にするとして」と記しましたが、長くなるので今回はこれで一区切りとして、説明は次回とします。

それでは、次回迄に「ムダ」の列挙を忘れずに。

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