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見た目キレイの次へ→5S活動5ステップ

工場で仕事をしている人の多くが知る5Sですが、見てくれを良くするだけに留まり、会社の業績には結び付いていないケースが見られます。

但し、見てくれを良くすることを否定しているのではありません。

そうではなく、見てくれを良くすることが5Sの全てであり、ここで留まることはあまりにも勿体ないと考えているのです。

その理由は、これまでに改善指導者の立場で、多くの企業様の5Sを支援し、5Sは仕事の効率を上げ、生産性アップに直結する効力があることを知っているからです。

更に、これまで17年に渡り指導を続けると、5Sで労働災害がゼロになり、5Sで品質が向上して信頼が高まり注文が増加するなど、5S活動で経営効率をアップできることが証明されているのです。

このように、企業様の潜在的な力を顕在化することができれば、生産革新が経営革新に繋がり、その道筋を作り、プッシュするのが私の役割です。

例えば、20231211版の記事で出現したA社の1年目で、在庫半減の目標に向けて活動をスタートすると、現場では「ムリムリ」という雰囲気が満載でした。

しかし目標を達成し、1年目の在庫金額8.6億円が、3年後には2.6億円に減り黒字化できました。

これは、5Sを徹底的に実行したことで得られた結果であることは、過去の記事で記述しましたが、5Sで赤字が脱却できるのです。

最初は「ムリムリ」と言っていた社員が、自分たちの力で、68%の在庫削減という結果を出し、潜在的な力があったことを結果で示しました。

このような実体験から、私は見た目を綺麗にすることを第1のステップとし、第5ステップまでを示し、企業様の5S活動を支援しています。

今回は、その5つのステップを紹介することとします。

第1ステップ 《見た目を綺麗にする》

先述のとおり、「整理」「整頓」により、必要なモノは定置化し、不要なモノを片付け、見た目をスッキリさせます。

尚、見た目を綺麗にするための方法は、5Sに関する過去の記事をご参照ください。

第2ステップ 《効果を定量化する》

見た目を綺麗にした次に、それによって、どれくらいの効果が出たのかを定量化します。

例えば、前出のモノを定置化したことで探すムダが無くなり、作業時間が短縮されて年間100万円の労務費を削減。

また、不要なモノを片付けたことで、年間200万円相当の省スペースが実現できた。

このように、5S活動で得られた効果を定量化することが第2ステップになり、社員のやる気を引き出し、業績アップへ貢献していることを自覚させます。

定量化については、20231216版に関連する記事が載っていますのでご覧ください。

第3ステップ 《生産効率を向上する》

改善効果を定量化し、それを仕事の効率アップに結び付けるのが第3ステップです。

前出のモノを定置化したことで作業時間が短縮されましたが、実はここで留まっていると本当の効率アップにはならないことをご存知でしょうか。

時短されたことで、社員の余力が増えただけのケースもあり、これでは効率アップにはなりません。

効率をアップにするためには、空いた時間分の労働時間を減らす、または空いた時間を出来高アップに使うことです。ココは押さえておきましょう。

従って、ステップ2までは現場の力で実現できますが、ステップ3からは、状況判断、仕事の指示、構成員の配置、仕事量の平準化、労務管理、他部門との協業、仕組みを作るなど、マネジメント階層(例:班長、係長、課長など)の出番です。

現場改善にマネジメントが加わると、時短が生産性向上に結び付き、生産性が20%アップ!となるのです。

第4ステップ 《経営効率を向上する》

生産性がアップしたら、それを会社の効率アップに結び付け、経常利益をアップします。

前出のA社では5Sで赤字だった収支が、経常利益が出るまでになり黒字化しました。

黒字化できた主な要因は、借入金の利子負担、外部倉庫代、運搬等の労務費でしたが、部門を超えたマネジメントが利益化を実現させました。

また、同じく20231211版に出現したB社も同様でした。

B社は5Sに取り組み、5年で生産性が約1.5倍アップし、約3%だった経常利益が約8%に伸びた事例です。

こちらも製造部門が先導して5Sに取り組みましたが、設備保全部門、設計部門、品質管理部門などと連携したことが経常利益アップに結び付きました。

A社、B社ともに、会社のトップが5S活動を主導して経常利益アップが実現しましたが、私に限らず外部の専門家を上手く活用することも有効です。

全ての会社のトップが5Sに関心が高いとは限らず、関心があっても5Sを推進することに対して理解が薄い社長さんも現実的にはいらっしゃいます。

社内だけでは変化しにくい、または大きく変化しないと明るい将来は無いとお考えの時には、外部の人材を上手く使うことも選択肢のひとつです。

さて、これまでに、《見た目を綺麗にする》→《効果を定量化する》→《生産効率を向上する》→《経営効率を向上する》と4つの階段を昇ってきましたが、最後の5つ目の階段へ参ります。

第5ステップ 《人間本位の経営》

これまでの記事で述べてきましたが、経営の中心は人であり、私は「人間性の向上を通じて、生産性を向上する」ことを行動指針として企業様の支援をしています。

これは、15年間ソニーの工場でマネジメントした現場経験から来るものであり、「5S活動をすると会社が儲かる」に留まっていては、企業は伸びないと考えています。

このような考えから、5Sを通じて社員がイキイキ働き、労働の喜びを実感できる5S活動にして欲しいのです。

再三に渡り出現するA社では、第5ステップに相当する事例があったので、次に記します。

5Sで成果を出した経緯は20231211版の記事のとおりですが、5Sで黒字化を実現した指導開始から3年後に、私からA社の社長に提案し、快く承諾して頂き、実現できた事例です。

私が提案した概要は以下です。

「指導開始からすると在庫が68%減り、3年後に利益が出る会社に変身しました。指導開始前年と指導3年目の決算書を社員に公開し、黒字化できたことを社員全員で確認しませんか」

すると、トントン拍子に話が進み、社長のリーダーシップの下で経理部長が主導し、全社員を食堂に集めて「生の決算書」を前面に大きく映しました。

私は出席しませんでしたが(同席しない方が良いと判断)、社長はじめ経営幹部も全員が同席し、説明は経理部長です。

「在庫が68%減り、ココ(指導開始前年の決算書)が、コウ(3年後の決算書)変化しました。これは社員の皆さんの努力のお陰です」

社員を労い(ねぎらい)、客観的データを使って社員の手柄を認め、その大きさを伝えました。

この説明を聴いた社員はどう感じたか。何を思ったか。

指導開始から4年目以降に在庫量が悪化することなく、適正在庫数が続いたことから、良い印象を持ったことは確かだと思います。

後日、私が聴いた主な反応は「貢献できたことを実感した」「自分たちの努力が腑に落ちた」「関心を示してくれたことは嬉しい」「成長できたことを感じる」「やればデキルことがわかった」「本物の決算書は初めて見た」などです。

チームや経営に貢献できたことを、喜ばない社員はいないものですが、労働の喜びを体感し、充足感を得た印象でした。

おそらく社員の皆様は決算書の見方はわからないと思いますが、これは私の計算内であり、わからなくても全く問題は無いのです。

大事なことは決算書という事実データを全員で共有したことです。

事実は人の共感を得て、ナットクしてもらう鍵です。
また、実体験に基づいた話も説得力があることを押さえておきましょう。

これ迄をまとめると、第5ステップは《人間本位の経営》でしたが、社員の心をつかみ、社員の欲求(成長したい、正当に評価されたい、賃金も多く得たいなど)を満たす、そんな5S活動が理想と考えます。

ここで、読者の皆様へ質問です。

「人はコストか、利益の源泉か」

答は皆様が決めればOKですが、企業の成長と活力の源泉は何かを社員の皆様と意見交換してみてはいかがでしょうか。

最後に5Sの5ステップを整理します。

第1ステップ 《見た目を綺麗にする》
第2ステップ 《効果を定量化する》
第3ステップ 《生産効率を向上する》
第4ステップ 《経営効率を向上する》
第5ステップ 《人間本位の経営》

5S活動は、見た目を綺麗にするに留まることは勿体ないと考え、5つのステップを記して参りました。

5S活動をすると、働きやすい職場が実現し、会社の業績が向上し、社員が成長し、社員の物心両面の欲求が満足できるのです。

従って、「たかが5S」と言う人もいますが、正しく理解し、徹底的に実行すれば、「されど5S」になる可能性があることも事実です。

最後までお付き合いいただきありがとうございました
次回は5Sに関する20の質問です、是非ご覧ください。

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