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改善しても生産性が上がらない時の2つの対応

改善活動により作業時間を短縮しても、必ずしも生産性(生産効率)は上がらないことをご存知でしょうか。

現場の事例を使って解説します。
基本労働時間が8Hである会社の社員S氏は、毎日残業ナシの定時で終業(帰宅)していました。

社内の改善活動で、S氏の仕事は1H相当の改善をし、同じ作業を7Hでできるようにしました。

しかし、改善前の作業量はそのままで、S氏は8H働いて終業していたので、余力が1H増えただけです。

この状態が続けば、生産性(生産効率)が上がることはありません。

実は、このような「時短しても生産性が上がらない」現象は結構多く見受けられます。

さて、何が問題で、どうすれば生産性が上がるでしょうか。
この問いに応える前に、生産性の基本公式を理解する必要があります。

《 生産性 = 産出(アウトプット) ÷ 投入(インプット) 》

自動車の場合で考えると、10リットルのガソリンを入れて、100キロメートル走行できた場合の生産性は、

生産性 = 100km ÷ 10L
    = 10km/L

になります。これはエネルギー生産性であり燃費とも呼ばれ、高いほど燃費効率が良い(10km/Lよりも11km/Lが優秀)という評価です。

この時の目的と手段を整理します。
目的は100kmの移動で、手段は10Lのガソリンを入れたことです。

また、100kmの移動が産出(アウトプット)で、10Lのガソリン注入が投入(インプット)になります。

これはエネルギー生産性でしたが、このイメージを持ったまま労働生産性に移ります。

10名で8H働いた場合の工数は80H/日(10名✕8H)であり、この工数を使って1日で240,000円の売上を確保したとすると、

生産性 = 240,000円/日 ÷ 80H/日
    = 3,000円/H

となります。

売上240,000円が1日の産出(アウトプット)、
工数80Hが1日の投入(インプット)です。

従って、この場合は《生産性=売上÷工数》で生産性が算出されましたが、労働生産性は諸条件によって、または会社によって算出法は様々です。

但し、前出の基本公式《生産性=産出(アウトプット)÷投入(インプット)》は変わらず、生産性は高いほど優秀です。

また、この場合の
目的は240,000円の売上確保であり、手段は80Hの工数を投入したことです。

ここ迄が生産性の基本公式の説明ですので、この機会にしっかり理解しておきましょう。

では話をS氏の事例に戻し「時短しても生産性が上がらない」という現象は好ましくないので、「時短したら生産性を上げる」を目指します。

ここからは、時短した次に対応すべき2つのポイントを説明します。

一つ目は、労働時間の短縮です。

改善後のS氏は、1H相当の改善(時短)をしたので、7Hで終わるハズです。

従って、1H相当の労働時間が短縮でき、1H相当の労務費が削減できるハズです。

ご理解頂いているとおり、今は生産性向上の考え方を理解したいので、就業規則や給与計算の話は、一旦横に置いて話を進めます。

例えば、フレックスタイム制度を導入して、S氏は定時よりも1H早く終業すれば、1H相当の時短及び労務費の削減ができます。

二つ目は、売上の向上です。

改善前に8H掛かっていた仕事が、改善後には7Hでこなせる様になったので、1Hの余力があります。

この1Hの余力に1H相当の仕事を入れ、8H相当の仕事量にします。

例えば、翌日予定していたS氏の仕事を、1H相当だけ前倒しして当日に行います。

こちらも、ご理解頂いているとおり、今は生産性向上の考え方を理解したいので、段取り替えや在庫リスクなどの諸要素は、一旦横に置いて話を進めます。

ここ迄をまとめます。

時短した次に対応すべき2つのポイントは、「労働時間の短縮として早く帰る」ことと、「売上の向上として翌日の仕事を当日行う」ことです。

生産性の基本公式は
《生産性=産出(アウトプット)÷投入(インプット)》でした。

「早く帰る」ことで、工数が減るので当日の投入が小さくなり、
「翌日の仕事を当日行う」ことで、当日の売上が増えるので産出を大きくすることができます。

これにより、生産性が向上できるということですが、目的と手段から考えると、前者(早く帰る)が基本になります。

つまり、目的を達成するために、どこまでスリムな手段で対応できるか、という考え方が生産性向上の基本的な考え方です。

ここで先述の対応以外でも、S氏は改善後に空いた1Hは、別の社員の仕事を手伝いに行くなどの例があることも加えておきます。

これ迄にあったどの対応も、上司が明確な指示を出すことでS氏が対応できるので、マネジメント力が求められます(但しS氏自身がマネジメントする会社もあり)。

つまり、上司がS氏へ「1H早く帰りましょう」、または「残り1Hを使って翌日の仕事に着手してください」と指示を出せば、S氏はそのように対応できます。

従って「時短しても生産性は上がらない」ことの原因は、このマネジメントを怠る(指示を出さない)ことです。

「時短したら生産性を上げる」ためには、2つのポイント
1.工数を減らす ← 分母を小さくする
2.売上を増やす ← 分子を大きくする
があることを知り、確実に良い結果を出しましょう。

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