「なんでもない日」
小春日和の休日は、せっせと掃除に励んだ。
寝起きからずいぶん飛ばしてしまった。というのは、①パジャマのままで、②木酢液スプレーをガシッと掴み、③ガス台の上に置いた板に新聞紙を敷き、④その上によじ登り、⑤換気扇にくまなく噴射。
しばらく置いたのち、とにかく金たわしでゴシゴシやるべし。我が家の換気扇は鉄製なので、金たわしが最適なのだ。
その調子で気になったところにスプレー噴射しまくる。
木酢液の分解を待っているあいだに、壁の一部をダークグレイに塗った。
年末の大掃除はおせち作りに気がいくので、今のうちにやれるところはやってしまおう。
潤ちゃんと長男は庭で大工仕事。どうやら畑に柵を施すらしい。
長女は足元にまとわりつく猫らをかわしながら、大量の洗濯物を干している。
そこで、暇そうな末っ子に仕事をお願いしてみた。
天日干ししていたササゲの鞘から豆を取り出す作業。あいにくわたしの手は油と木酢液とペンキまみれの為、ササゲには触れられない。
快諾してくれた末っ子は、厨房の床にしゃがんで、黙々とちいさな手を動かし始めた。「こういう作業は細(こま)い手が向いているね」と口走った矢先に、ペルシャ絨毯のことを思い出して胸がチクッとする。
向いてるからって強制はできない。
30分ほどで作業は終了、「ありがとうね、すごく助かったよ」と言ったら、「ねぇママ、こういうときアニメとかでは、『ありがとう。はい、お小遣い』って言ったりするんだよ」
あー、あるあるだねーでもなー。
「それでお金をあげたらさ、洗濯物干したらお金、大工仕事のお手伝いしたらお金ってなっちゃうよね。ママが家族のためにご飯を作ったら、誰かがお金を払うんだろうか」
「うーん、払わない」
「ひとつ屋根の下に暮らしているんだから運命共同体、助け合おう」
「オッケー」
子どもの頃、大好きだったドラえもん。おとなになって末っ子といっしょに見てたら、「こんな内容だったんだっけ?」とびっくりした。
というのは、のび太のお母さんの厳しいことよ。なんでそんなことで怒るん?
宿題しないとか、テストの点数が悪いとか、朝起きないとか、おやつをつまみ食いしたとか、エトセトラ。
「怒る」ことじゃーないだろうよ。
って、登場人物の性格(主にのび太ママ)が気になってしまって、心底のび太が気の毒に思えた。いや待てよ、昭和のお茶の間では普通の感覚だったような。
昔は純粋にドラえもんの発明品(?)にフォーカスしてワクワクしてたけど、年齢重ねると視点も変わるんだな。もはや昭和から平成を経て、令和だった。
昼食はしばらく冷蔵庫に眠っていた茄子のハーブオイル漬けを使ってリングイネ。トマト、鯖缶、椎茸。
夕飯は庭から摘んだつるむらさき、ルッコラ、ディルを使った。
○さっと茹でたつるむらさきを刻み、納豆と混ぜる。(ひとり1パック)
○牡蠣のオイル漬けとルッコラ、ディル、白ワインビネガー、薄口醤油少し。
○大根の柿漬け。熟した柿を潰して塩と混ぜる。この漬け床で大根を漬けた。ほの甘くてサラダ感覚でたくさん食べられる。
○せいじくんが畑からとってきた間引き大根を味噌汁に。
○白米
○鮎うるか(大好物)
○成清さんの味付け海苔
冷蔵庫にある食材総動員の夕飯。
全員白米をおかわりし、お茶碗は長女が洗ってくれた。
で、男どもはお風呂に出掛け、女どもはひとつのソファにギュウギュウに座りながらめいめい過ごしている。
なんでもないいちにち。
でも、たいへん満足ないちにちであった。
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