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「二〇二三年 寺尾紗穂ライヴのお知らせ」

今年で五回目となる、寺尾紗穂弾き語りライヴ。
「毎年、三月に」と、皆んなの中で、約束ごとみたいになっている。
きっかけは、あの日はじめて話した山野さんが、「寺尾紗穂の曲いいよ。かなりいい。」と言ったこと。
とはいえ、ほとんど知らない山野さん(後々すっかり意気投合するんだけど)なわけだから、どのへんが「いい」のか確証が持てず、「ふーん」と曖昧な返事をしたと思う。
その数日後に、吉祥寺に住む八百屋さんの友人から、1冊の本とジーンが送られてきた。
「彗星の孤独」、その著者が寺尾紗穂だった。と、そこでようやくアンテナがピンと立ったのだ。
本は、「かなりいい。」ものだった。
微細な感情の揺らめきを、せいせいと、且つ非エモーショナルに綴っている端正な文章に、わたしは何度も何度も涙が込み上げてきた。社会の不寛容さを示唆する、深い洞察力と視野、そして注意深さ。かと思えば、ぴゅーんと突き抜けて、あっけらかん然としている。
こうしてわたしの寺尾紗穂体験は、本から始まった。
彼女の著書を片っ端から読んだ。もはや、彼女が音楽家ということも忘れて。
版元のスタンドブックスに取り合って、「彗星の孤独」をうちの店で販売し始めた頃、とある雑誌の取材で、フラワースタイリストの平井かずみさんがやってきた。いっしょに森に入って、かずみさんにやんばるの草花を活けてもらう、という企画だったと思う。
かずみさんが、「あ、紗穂ちゃんの本」と言った。知り合いかな、と思いきや、かつてかずみさんのお連れ合いが、メジャーデビューに携わったのだとか。
そんな符号に興奮し、いかに寺尾紗穂の文章が素晴らしいか、と力説した後日、かずみさんから紗穂さんのCDがどさっと届いた。
文章から音楽へ、「寺尾紗穂第二章」へ移行した予感がした。
透き通った声で歌う世界は、透んだ世ではなく、歌詞は哀しいくらい狂っていたりした。朗らかに高らかに、そのコントラストが強烈で、幾度も頭がクラッとなった。そしてどの曲にも根底には愛があり、「愛しい」と書いて、「かなしい」とも読む意味がわかったような気がした。
音楽は、文章と同じ世界観のまま、より広々とした場所にいざなってくれた。
「この想いを誰かと共有したい。」という共感を求めた切実さは、「弾き語りライヴ」という形に自然とまとまる。山野さんが紗穂さんに声掛けしてくれて、(山野さんは紗穂さんのアートディレクションをいくつも手がけている)アップライトピアノもお客さんのご厚意でお店に置くことが叶った。
以下、これまでのライヴの詳細。
2019年は、40名限定予約で3500円。
2020年は、60名限定予約で自由価格(投げ銭)。
2021年は、事前予約制で自由価格。
2022年も、上記と同じ。
そして、今年2023年は、いっそ予約制をやめようかな、と。
予約の安心感という予定調和はもう4年も享受したから、次は予約なしで未定調和となるのか興味がそそられる。

そういえば去年は、開け放った窓越しに、いつから居たのか近所の豆腐屋のおばあがひとりで見ていて、おばあは目をつむって、指を編んで、まるで祈っているように聴いていたのが印象的だった。まるで、その夜を象徴しているみたいに感じた。

「二〇二三年 寺尾紗穂、弾き語りライヴ」
日時 3月28日 火曜日 17時半開場 18時開演。
○おむすびやお飲み物のご用意あります。
○投げ銭スタイルはそのまま、ライヴ終了後に大きなかごを持って会場をぐるりと回りますので、どうぞ、お財布のご用意をお願いします。(クレジットカードや電子マネーは使えません)
○椅子に限りがあるので、場合によってはちいさな椅子やござの持参もおすすめします。

会場は 波羅蜜です。お問合せ090−8511−0607 

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