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「カラオケがあれば」

みちくさ牧場のクリスマス会が、今年も波羅蜜でとり行われた。
毎年恒例、季節の行事。
こどもとおとな、合わせて50人。て、なかなかの大所帯である。
料理は持ち寄り、お題は3年続けて「中華」。
「中華、ちゅうかーーーーーっ!いったい何作ればいいの?」と、頭を抱えた親たちにアッコは、「中華はね、にんにく生姜、ごま油入れれば何でもそれっぽくなるから難しく考えない!」と一喝した。
御意。

当日は、それはそれは見事な中華のビュッフェ(だったと思われる)。
というのは、最後尾(呑み専)のわたしは迂闊にも完成形を見逃した。

甘酢あんかけに人参の乱切りが数個。これはきっと酢豚だったのだろう。
同じく紫キャベツの甘酢は、肉団子であった。(わたしが作ったからわかる)
小口切りの小葱と肉の破片は蒸し鶏だったと思われ、揚げ衣のカスと油シミはきっと唐揚げね。
海老チリはいたのか?青椒肉絲は?
激戦の点心、春巻きは、Tが「大量に巻いたった!」っと息巻いただけあり、無事にありつけた。
「まあ、こういうときは何はさておき米ですよ」と言う手堅い親がふたりいたおかげで、中華おこわは最後まで皆の腹を満たしてくれたっけ。それから旬のパクチーだけは山盛りどっさり。

ケーキは子どもたちが作った。
いちごとバナナのショートケーキ。スポンジのキメが細かくて美味しかった。


今年は奮起して、カラオケセットを一式レンタルした。
最新のDAM搭載、スクリーンだってある。たちまち巷がカラオケスナックと化す、田舎ならではの(?)娯楽だ。
そしてこのセットは、実はRちゃんのために借りたようなものである。
Rちゃん、めちゃめちゃシャイで、「みんなでたわいのないおしゃべり」みたいなフリータイムが苦手。そんなRちゃんは普段、公学校に通っており、土日や夏休みなどの長いお休みにしか牧場に来ないせいもあって、みんなと少ーしだけ距離がある。
そんなRちゃんだけど、歌を歌うことはとびきり得意なのだった。
去年、偶然にそれが発覚して、「そっか、Rちゃんの居場所は歌にあるんだ」と皆がわかった。
そしてRちゃんの歌う姿は、なんとも清らかで無垢だった。「いいもの見ちゃったな」と、このいちねんの間もたまに思い出すくらい心に残る歌声だった。
カラオケは、そういうタイプの人にとって拠り所になる。
自分が歌わない時は人の歌を聞き、歌う歌を探し、また歌う。


輪になって座り、クリスマスソングに合わせてプレゼントをぐるぐる回すアレ、恒例のプレゼント交換は、今年は「1000円までの品物」という上限であった。
去年は、大きい子の輪とちびっ子の輪が別れていて、大きい子は3000円、ちびっ子は1000円だったけど、牧場主の根岸さんが、「分けてやってみたけど、なんか卑しい感じがしたから今年はいっしょにします」と言ったのであっけなく廃止。金額が分かれると、その「差」によって欲が掻き立たせるのかも。

うちの長女と末っ子は、せっせとスノーボールを丸めて焼いて、クリスマス柄の布を貼った箱にきれいに詰めた。
次の日、粉砂糖が溶けていないか確かめるために蓋を開けたら、蟻が数匹すでに入り込んでいたため、末っ子が「うわあ!」と叫んだけど、実に速やかに対処して、何事もなかったかのように元通り。
わたしが、「まぁ、Nomaの蟻は、」と言い掛けたところで、潤ちゃんに「そうことじゃない」と一喝された。
御意。
いっぽう長男は、秘密裏に現生を仕込んでいた。
「1000円までと言ったら、いちばんいいのは札でしょう」と、千円札の野口英世の顔部分に、長女の写真を丸く切り抜いてコラージュ。本人、「オリジナル感が出た」と満足そうで、おまけに大きめな箱に木材を詰めて重さも偽装。けっこう凝っておった。

もちろん、長女にも末っ子にも内緒。バレたら絶対に抗議される。

当日、札を当てたのは12歳の女の子。開けて、よくよく見て、「キモっ!」と一蹴。
長男のウィットは、ファンタジー重視のガールズにはウケが良くなかった。

賑々しい夜は、21時をもってお開き。
みんなが帰ってしんとした波羅蜜で、キョンキョンの「木枯らしに抱かれて」を熱唱したことはいうまでもなく。




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