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シリーズ・留学を考える [20] - NZラグビー中学高校留学

ニュージーランドがラグビー王国であることは、世界中の多くの人が知っている。

人口わずか500万人の小さな国が、なぜ長年にわたってラグビー王国と呼ばれることができるのか?

弊社のラグビー中学高校留学生が学ぶニュージーランドのラグビーのシステムを見ていると、その理由がわかる。

ニュージーランドには、いわゆるラグビーの強豪といわれる高校が何校かあって、部員が100名から300名程度いるところも多い。どの高校も年齢別やレベル別にたくさんのチームが作られる。その年によって部員数が変われば、チーム数も変わる。

たとえば、ロトルアボーイズハイスクールでは、U14、U15で各2チームから3チーム、U18では3チームから5チーム、合計7チームから10チーム程度が例年編成される。もっと部員が多い高校はチーム数も多く、20チーム近くが編成される高校もある。

全てのチームがそれぞれのディビジョンで大会に参加できる。全部員がどこかのチームに所属するので、全ての部員が試合に参加することができる。

大会は一年中あるのではなく、シーズンが決まっている。試合があるのは例年4月末ころから8月中旬ころまでの約4ヵ月間だ。シーズン中はほぼ毎週試合がある。そしてシーズンが終われば、試合も練習も行われなくなる。

ただ、各地域の代表に選ばれた人は10月ころまで代表チームで練習と試合があるし、セブンス(7人制)のラグビーシーズンが10月から12月まである。

練習は、強豪高校の一軍を除くほとんどのチームが放課後週に2回程度、合計しても週に3時間から4時間程度だ。試合が週1回あるので、週3日はラグビーをして、残りの4日は練習も試合もない。一軍はもう少し練習をする高校もある。

放課後の練習ではチームとしての練習が中心で、たとえば筋トレなどはあまりやらない。だから各選手は、自分で朝や放課後にトレーニングをする。強豪高校なら朝6時頃から校内のジムが使えたりするし、放課後も各自ジムにいったり、グラウンドを走ったりしている。コーチにスキル指導を仰ぐ選手もいる。

だから、強豪高校の一軍でプレーしようと思ったら、必ず自分でトレーニングをすることが求められる。もちろんトレーニングメニューはコーチも組んでくれるけれど、それをやるかやらないかは、選手次第だ。高校生の年齢から、セルフマネージメントが求められるのだ。言い換えると、きちんとセルフマネージメントができている選手が一軍に選ばれ続ける。

コーチから言われたことをやっていればいいというのではなく、自分で考えて、そしてそれを実行しなければならないから、とても厳しい環境とも言える。

ニュージーランドの高校の中には、ラグビーアカデミーの授業がある高校もある。そこでは、プロのコーチからスキルトレーニングなどをしっかりと学ぶことができる。

たとえば、ロトルアボーイズハイスクールのラグビーアカデミーは毎日1時間行われ、単位もとれる。今年は3人のコーチが指導にあたったけれど、3人とも元プロ選手で、一人は元マオリオールブラックス、一人は元スーパーラグビーのチーフスのキャプテンだった人だ。日本では絶対に学べないことが学べる。

試合はシーズン中ほぼ毎週行われる。男子の場合は土曜日が試合の地域が多い。女子は水曜日の放課後が試合の地域もある。

土曜日が試合の場合は、木曜日か金曜日に出場メンバーがコーチから告げられる。一軍の出場メンバーに選ばれると、Facebook などで発表されることもある。

強豪高校の一軍には、コーチ陣のなかにトレーナーの人が入っていることも多い。練習も見に来るし、試合には必ず帯同して、選手の体調を管理する。怪我をした選手の手当やリハビリはちろんのこと、練習や試合への参加の助言も行う。

ロトルアやクライストチャーチの高校のラグビーの練習や試合を見に行くと、どの高校も、練習方法や試合前のアップの仕方などが、よく似ていることに気づく。各高校で独自の練習方法を取り入れているところもあるけれど、基本的には、ニュージーランドラグビーユニオンのマニュアルにそったコーチングが、全国どこでも行われているのがわかる。

ニュージーランドラグビーのトップにあるラグビーユニオンが、指導方法もきちんと管理して全国に情報を伝達しているので、時代が変わってラグビーのプレーや試合やルールが変わっても、それを迅速にコーチに伝え、選手もそれを受け取ることができる。

また、U5から選手登録が行われるけれど、一度登録して割り振られた選手番号は、ニュージーランドでプレーしている間は変わらないという。そして、どの選手がどのチームでどの試合に出場し、いくつの時にどの地域の代表に選ばれたかなどを、ニュージーランドラグビーユニオンや地方ユニオンがデータとして管理している。だから、たとえ強豪高校でない高校でプレーをしていても、コーチの推薦さえあれば、地域代表に選ばれる機会が与えられるし、一度代表に選ばれたら、その経歴が選手データにずっと残る。

年齢が低いときからずっと、優秀な選手を全国から発掘できるシステムが整っているのだ。これは、どのクラブチームでも、どの高校でも、複数のチームが編成され、全選手がシーズン中に試合に出場できるシステムが整っているからこそできる。

地域代表は、地方ラグビーユニオン単位で選ばれる。たとえばロトルアやタウランガ地域は、ベイオブプレンティラグビーユニン地域内で、各年齢ごとに代表が選ばれる。そして、ニュージーランドを5つの地域に分けたスーパーラグビー地域ごとにもU18やU20が選ばれる。このスーパーラグビーレベルのU18チームに選ばれた人は、ニュージーランド高校代表チームに選ばれる可能性も高くなる。ニュージーランド高校代表は世界トップチームの一つだ。高校代表を経てすぐにオールブラックスになる選手もいる。

今までに弊社留学生が2人、チーフスU18に選ばれている。そのうち一人は、Year 12とYear 13で2年連続選出された。このレベルはおそらく日本でいうと高校日本代表レベルだろうと思う。

こうやって、U18くらいから、将来のオールブラックスを本格的に発掘していく。だからこそ、オールブラックスのレベルは高いし、選手層が驚くほど厚いのだ。

昨年弊社のラグビー高校留学生、濱野隼大選手が、日本のトップリーグチーム、神戸製鋼コベルコスティーラーズとプロ契約をした。彼はロトルアボーイズハイスクールで4年間ラグビー中学高校留学をして、高校卒業と同時にプロになった。

今までは、ニュージーランドでラグビー中学高校留学をしたあとは、日本の大学でプレーをする選手が多かったけれど、これからは直接プロ契約をする人も増えてくるだろう。今までに、石森大雄選手(ホンダ→ヤクルト→釜石)や福﨑竜也選手(サニックス)などもロトルアボーイズハイスクール出身で現在日本でプロとして活躍をしている。

しっかりとした整ったシステムの中で、セルフマネージメントができる優秀な選手を若いうちから育成し、トップ選手に育て上げる。どんな選手でもみんな、シーズン中は試合に参加できる。U5からニュージーランドラグビーユニオンがきちんと選手の力を把握する。全国どこでも、同じコーチングが受けられる。

そんな環境で、みんなラグビーを楽しみながら、優秀な選手がオールブラックスへの道を歩んでいく。

だからニュージーランドはずっとラグビー王国なのだ。

そして、その王国でラグビー中学高校留学をした人たちは、ラグビーの楽しさを知り、世界最高のコーチから、世界最高のスキルを学び、世界レベルの選手たちと一緒にプレーをし、セルフマネージメントの力をつけ、ラグビー選手としてだけではなく、人として成長していくことができるのだ。


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