今考えたい、セレショとセレオリの今後
2019/10/13
セレオリとセレショ。懐かしきワードである。
どちらも略語であり、セレソンとは決して関係ない。セレソンはポルトガル語(ブラジルの公用語)で「選抜」を意味し、ブラジル代表の愛称である。今のブラジル代表ではフィルミーノが好きだな俺は。
というのはいいとして、セレショはセレクトショップ、セレオリはセレクトショップオリジナルブランド、の略称だ。
言葉の意味、定義を知らない人は他のブログなどで調べてください。いっぱいありますよ。そういう解説でアクセス数を稼ごうとするページが。
セレショとセレオリは、ファッションに興味を持ったらすぐに高感度なブランドにリーチできる今では想像がつかないかもしれないが、10年前ぐらいはオシャレさんになるためのステップとして重要な役割を果たしていた。
だが、近年はセレショが紹介するまでもなくブランド側が直接消費者にリーチ可能になったことや、ショップの役割をインフルエンサーが担うようになったこと、セレオリと競合していたユニクロをはじめとした低価格アパレルの高品質化などを背景に、セレクトショップの存在感が以前と比べて薄くなってきているようだ。
俺は結構ファッション系YouTuberの動画を観ているが、現にあるYouTuberが、「もうセレクトショップとか売れてないでしょ? 終わりっしょ。わかんないけど」みたいな感じでセレショの存在意義を全否定していた。
「わかんないけど」ってないじゃい。わかんないなら断定調で言うな。SHOW by ショーバイに出てた頃のヒロミか。
ちゅーわけなのでそんな現状を踏まえ、今回は少し、セレショとセレオリの今後について考えてみたいと思う。
大手のセレオリ、セレショ
冒頭に述べたセレショであるが、主に大手のセレクト(セレクトショップはセレショの他にセレクトと呼ぶ場合も多い)の話と捉えていただきたい。
なぜなら、中小規模のセレクトの中には、ショップそのものがブランドの役割を果たし、そのショップが紹介するブランド=イケてる。というブランディングに成功しているセレクトがいくつもあるからだ。
今大手になっているところも当初はそういう存在だったが、セレクトショップという業態が注目され、流行り、コモディティ化する中で、“セレクトショップ”という存在自体を「ダサい」と見なす消費者も現れるようになり、代表的な存在として知れ渡っている大手セレクトショップが時代に置いていかれている印象を持つ者も少なくない。
スタンダードのポジションを取りきれなかったセレオリ
セレオリといえば、10年ほど前は買い足しアイテムを気軽に選べるブランドとして定番的ポジションを担っていた。
買い足しアイテムとはつまり、メインとなるアウターやトップス、シューズなどをハイブランドやドメスティックブランドで揃えた際に、コーデの中で存在感をそれほど発揮しなくいてもいいが、コーデを作る上では必要なアイテムである。(である。というかここではそう定義したい)
例えばベーシックなボトムス、無地のトップス、汎用性の高いパーカーやカーディガンなどである。
ハイブランドやドメと比較して手ごろな価格帯。ベーシックなデザインのシャツやカットソー、ジーンズなどの丁度いい品揃え。価格は抑えめなのに、ある程度トレンドを反映したシルエットやディティール。
かつてセレオリはこれらの要素を満たしていたため、コーデのメインどころではないアイテムとして使うのに重宝がられていた。
また、その手ごろさが初心者の入り口として機能し、高額なハイブランドやドスティックブランドに手を出していく前にセレオリを通る人は多かった。
しかし、この10年間でその状況は様変わりしていくこととなる。
手ごろとは言っても、シャツやボトムスで1点1万円程度はする。
なおかつトレンドを反映しているとはいえ、ハイブランドやドメスティックブランドほどシルエットやディティールの質が優れているわけではない。
極め付きが、主にユニクロを指して言うが、低価格アパレルの高品質化だ。
かつては野暮ったく、ファッションコンシャスな消費者には使いにくい。と言われていたユニクロだが、強烈な規模の経済性を武器に、マーケティング能力とトレンド反映の柔軟さを発揮し出した数年前から、セレオリを駆逐した最大の(セレクト側から見れば)戦犯と目されるようになった。
確かに、セレオリが1万円をつけて売っていたベーシックなシャツやボトムスを、ユニクロは3000円や4000円で売るのだから、セレクトショップからすれば商売上がったりだ。
かくして大手セレクトショップブランドは求心力を失い、逆にユニクロはブランディングに成功。
今や、全く同じシャツに全く同じ値段をつけて大手セレクトショップのタグをつけた商品とユニクロのタグをつけた商品を並べたら、ユニクロのタグをつけた方を手に取る人の方が多いかもしれない。
そのぐらい、セレオリは評判を落としたのだ。
「セレショのセレオリを買っているうちにブランドへ」という王道ルートの変化
セレクトショップは多くのブランドにとって、ライトにファッションを楽しむ消費者への普及拡大の重要なルートの役割も果たしていた。
ファッションに興味を持った消費者が、オシャレな服を売っている場所として知られるセレクトショップに足を運ぶ。最初は店内の1万円以上もするTシャツに面食らいつつ、何千円かのカットソーやシャツ、ボトムスなどを揃えていく。ある時、タグにセレクトショップ名が書かれている商品は少し安いことに気付く。店員と顔馴染みになり、また、店内の高額商品に目が慣れた頃、ショップ名とは違うタグの商品について店員に教えられ、ドメスティックブランド、金に余裕のある人はハイブランドにたどり着く。
このルートがブランドへの入り口となっていることが、ブランド側からしてもセレクトショップに自ブランドを置いてもらうインセンティブになっていた。
だがそれも今は昔になる。
これからブランドを始める若者たちは、業界でコネを作ったり大手セレクトショップに置いてもらう努力をせずに、ネットとSNSを駆使して消費者にリーチして成功を収めているブランドの姿をいくつも見ているため、SNSでの拡散に力を入れるだろう。
消費者側からしてもわざわざ足を運んで選ぶよりも、SNSのフィードに流れてきた、顔を見知った誰かの勧めるブランドに対するエンゲージ(つながり、シンパシー)を強めるから、余計にセレクトショップには難しい局面だ。
セレオリ隠し、セレショ隠しは功を奏するか
ここまで、言うなればセレショとセレオリの斜陽、と言うことについて書いてきた。
しかし、俺自身は個人的に、ここ最近のセレオリの商品企画力向上に非常に注目している。
ベーシックアイテムでユニクロと勝負するのは分が悪すぎるとの判断か、各セレクトショップが、オリジナルブランドの個性を先鋭化させているように感じるのだ。
各セレクトショップとも、セレクトショップ色を排除したオリジナルブランドを展開し、しかもアイテムのラインナップも、かなりターゲットを絞り込んで企画していると思われる。
まずどのブランドも、特徴として、大元のブランド名をつけない傾向が見られる。
かつては、セレクトショップ名+コンセプトやキャッチフレーズなどを組み合わせたオリジナルブランド名が多かった。ナントカバイエディフスとか、アーバンリサーチ ナントカとか、ナントカ ジャーナルスタンダードとか。
それが少し様子が変わってきていて、セレクトショップオリジナルブランドでも、完全に別のブランドネームをつけているところが多い。大元のショップ名をいまだに隠さないのは、ユナイテッドアローズとビームスぐらいではないか。(この2社は、セレクトショップの草分けとしての矜恃があるのかもしれないし、セレオリ離れを凌ぐブランド力があるのかもしれない)
こうしたセレショ色、セレオリ色を排除したオリジナルブランドは、かつてのベーシック市場の獲得に失敗したセレオリとは毛色がだいぶ異なる。
俺が最近気に入っているセレオリは、1970年代に日本で流行したスーツ系のトラッドをベースに、使用する素材やシルエットなどを現代風にアレンジし、フォーマル感を消した普段着のトラッドアイテムをラインナップしている。
昭和のドラマや映画が好きで、ショーケンや松田優作、中村雅俊といったの昭和のスター俳優が映画やドラマで実践していたスタイルが好きな俺に刺さる服が、そのブランドにはあるのだ。
ドメスティックブランドでそういうアイテムをラインナップするブランドはあるのだが、如何せん高額で、庶民の感覚では毎回買うことが叶わないため、代替を担ってくれている。
またあるセレオリは、ある世界的有名サッカークラブとコラボしたアイテムをリリースし、好評を博している。
サッカーと言うグローバルスポーツのため、世界で数量限定で発売する、そのクラブとナイキのコラボアイテムをそのショップが取り扱うのにかこつけて、ちゃっかりと、そのショップ独自のサッカークラブとのアイテムを企画したのだ。
これが非常に人気で、ナイキとのコラボは言わずもがな即完売で転売市場に流れていたが、ショップとクラブのコラボアイテムも、ラインナップしたコレクションのうちいくつかはすぐに完売となっていた。
かつて、このようにニッチな趣味にズバッと刺さるセレオリがあっただろうか。いや、ない。(反語)
他にも、面白い企画や取り組みを実践するセレクトショップは増加傾向にある。
このように独自の企画で成功するセレショやセレオリはなぜ増えたのか、また、今後この流れは加速していくのか。
その辺りは、また別の記事で考察していくことにしたい。
このロクでもなくやはりロクでもない世界の目を瞑ってはいけない部分を目を見開いて見た結果を記してゆきます。