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今、フィリピンでキチママと暮らしてます。(15)

2020年 大晦日 ⑵

大晦日の夜、キチママからラインがきた。


「私が戻る前に、クリスマスツリー片付けてなかったら、本気で怒るわよ」


自分で散らかしておいて何を言ってるんだろうこの人は。


「自分でやったんだから、自分で片付けてよ」と返信したら、「だったら、もう出てく。戻るまでにお金を用意しておいて」

と、生活費を含めて30000ペソ(約6万円)の費用を請求してきた。

それに、クリスマスや大晦日をキチママの家族と過ごさなかったこと、それがキチママの家族への侮辱に値すること、私が親戚の挨拶にこないことでキチママの顔が潰されたこと、そして仕事で大したことしてないくせに、家では仕事に疲れたふりをして毎日ソファでぐったりしていること、仕事から帰っても家のことを一切やらないこと、家族のことを全然大事に思ってないこと、というのが言い分だった。


あきれてものが言えないとはこのことだ。

クリスマスは仕事だったし、それは毎年恒例のことで、向こうもわかってたはずだ。

家族の集まりというだけで会社を休むのはフィリピン人では当たり前かもしれないが、日本の会社は違うって言うのは、今までずっと言ってきたこと。

フィリピン政府から外出禁止が出ているのに、リゾート行く神経も親戚全体で理解できないと思っていた。

そもそも家のことを一切やらないって、キチママが家事を一切やらないから、家政婦を雇って平日はやってもらっていて、家政婦が休みの日は自分が家事をやっている。

毎日朝から夜まで働いて、土日は家事と子供世話をして、その間キチママは何もしないでフェイスブックやらユーチューブやらで何もしていない。

以前そのことを言ったら、今までつらい人生を送ってきたから今楽をして当然だと、何をやらないことを正当化してきた。

仕事が大変じゃないって?

仕事が大変で嫌で働いてないくせして、家のことやキチママの家族が困ったときにお金を工面してあげて、それに感謝の言葉がないだけじゃなく、疲れてもいない?家族のこと考えてない?

正直、今回は頭にきた。我慢できなかった。

今まで、とくにこの1年は少しずつ酷くなってきていたキチママの横暴な態度に我慢してきた。

今までは少なくとも家の中のことを決めるときは前は相談してきてくれたし、自分の意見も聞いてくれていたが、この数年は「私が決めたんだから、従いなさい!」と一方的で、自分が納得いかないと言えば、だったら「娘を連れて出ていく」と言われた。

そうなるとこの国で、外国人でしかも男性の自分はフィリピン人女性から親権を取ることができない。そう考えいつも我慢しよう、我慢しようとこらえてきた。

でももう限界だ!

だから、「お前が何もやってないから、俺がやってんだろ!毎日遅くまで家族のために働いて、休みの日も家事やって、だから疲れてんじゃん!仕事から帰ったあとくらい、年末くらい休ませろよ!いつもいつも、自分が正しいと思って、自分の言うこと聞かないなら別れるって、理不尽すぎだろ?そんなくだらないことで別れないし、金は一銭も払わない!」と突き返した。


そしたら、「払わないんだったらあんたの親に全部、言いつけてやるからな!」

と、子供みたいなことを言っていた。

本当にキチママは幼稚だ。3歳になる娘とほとんど変わらない精神年齢を持っている。

それから少しして、父から連絡がきた。キチママから大量のメッセージが来たけど、英語だから何言ってるからわからないよと言っていた。

「また情緒が不安定なんだな」とも言われた。

キチママは自分が言うことをきかないと、年に数回は父に自分の文句を言っている。たいてい、「お前の息子は最低だ」というような内容で、父も慣れている。

「躁鬱(そううつ)病の気がある」、と言っていたのも父で、もともとは児童福祉の仕事をしてきた人で、よくアドバイスしてくれる。今回も自分は何もできないからそのままにしておきなさいと、言ってくれる父には感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


その後、父に言っても助けてくれないとわかったキチママは驚くべき行動に出てきた。「あんたが金を払うって言わないなら、あんたの友達が困ることになるよ!」と意味深なことをいってきたすぐあとで、私の友人から連絡がきた。

「おい、お前の奥さん、俺がク○リやってるってデタラメなことフェイスブックに投稿してるんだけど、今すぐやめさせろよ!」

その友人は、フィリピンでも数少ない友人で、十代のころに色々と悪さをしていた前科持ちだが、今ではまじめに働いていて、家庭を持って頑張っているパパ友だ。

前の会社で自分の部下だったが、地元のミュージシャンと仲が良くて、自分が音楽が好きなこともあり交友が深かった。

自分の娘のことをいつも気にかけてくれるすごくいいやつで、キチママの相談にもこれまで何度も乗ってくれた、そんなまったく今回の件と関係ない友人をキチママは巻き込んだ。

本当にキチガイだ。頭がいかれてる。

自分はすぐキチママに連絡をして「その友人は今回何も関係がないだろ?関係ない人に迷惑かけないでくれ。・・頼むから、・・やめてくれ。払うよ。全部。だから、関係ない人を巻き込むのは、まっとうに生きている人達を巻き込むことだけは許してくれ!」と必死に訴えたら、

「だから初めから私の言うことを聞いていればこうならなかったんだよ。全部、あんたのせいなんだからね」そういうキチママに、心の底から殺意が芽生える。

今まで生きてきて、誰かをこんなに嫌になるなんて、思ったことなかった。

キチママが最初だ。なんで、何も関係がない友人を巻き込めるのか?頭がいかれてるのか?性根が腐っているのか?

彼女にとって、言うとおりに従わせるためには誰でもよかったんだ。

「父に言いつける」っと言っても、言う事を聞かせられなかった。「娘と合わせない」と言っても、キチママの命令に従わせることができなかった。

「警察に通報するぞ、会社に言うぞ」と脅しても、私が仕事をなくしたらお金も払えなくなるという自分にとってマイナスになることは絶対しなかった。

だから、私にとって、直接関係がない、親や娘の次に大事な友人を使ったんだ。自分が友人を大事にしているっていうのを知っているから。

キチママは、娘が言うことをきかなければ、怒鳴り散らしたり、犬が言うことを聞かなければ、棒で叩いて、餌を与えないで、罰を与えて恐怖で言うことを聞かせようとしていた。

自分が言うことをきかなければ、初めはよく叩いてきたが、それでは自分をコントロールできないことはわかったから、次に子供を使ってコントロールしようとした。

子供を使っても、コントロールできないから、「親に言いつける」と子供のようなことをして、それでも駄目だから自分にとって大事な友人に迷惑をかけたくない、という自分の弱みに付け込んできたんだ。

もう、うんざりだ。こんな人といたら、自分の人生が駄目になる。その日はそう思って眠れなかった。


***

翌日、その友人に電話をして謝罪した。そして、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないから、もう会わないことを伝えた。自分と関わらなければ、迷惑をかけなくてすむ。その友人は笑って

「気にすんな。けど、俺も今回みたいなことで仕事失うのも嫌だから、お前の提案を受けるよ。でも俺は大丈夫だから、気にすんな!お前は子供のことを一番に考えろ。お前がいっしょにいてあげないと誰が彼女から子供を守るんだ?大変だけど、お前がいなくなったら、娘は悲しむし、その子はキチママと同じ生き方をしてしまうよ。それだけは、何としてでも、お前が阻止しないといけないだ、わかったな?」

そういって最後「Peace!(元気でな)」と言って電話を切った。

その友人は、自分の5つも年下なんだけど、ほんと、自分が未熟に感じる。

本当に感謝している。これまでも。

今回のことは、本当に申し訳ない気持ちで一杯で、迷惑をかけてしまって。もう少しでまっとうに生きている人の人生を台無しにするところだった。でも、その友人が言った「子供ために」。

そうだ!

子供が生まれるとき、理不尽なことをされても、何度も殴られて、顔に唾を吐きかけられて、どんなに屈辱的なことをされても、子供のために、子供を守る為に耐えようと決めたんだ。

自分がもし、このまま別れたら、子供を引き取れない自分は子供を守れなくなる。そしたら、彼女から、子供を守れなくなる。そう何度も何度も言い聞かせた。



休み明け前日、彼女が子供と戻ってきた。

娘が「ダディ!」といって走ってきて、抱き着いてくる。娘の顔を久しぶりにみたら、涙がでてきた。


娘との再会の数分後、「じゃぁ今から、市役所に行くから準備して。市役所の人にあんたが毎月慰謝料と子供の養育費を払うっていう書面にサインしてもらうからね」

というキチママ。

俺はこいつが心の底から憎い。そう思った。

そういったとき、


「自分が全て悪かった。お前は何も悪くない。二度と逆らわない。最後のチャンスをください。お願いします」と泣きながらキチママにあやまった。

そう、最初からこうしていれば、友人に迷惑がかからなかったんだ。

自分の感情を出してしまったから。だから、こうするべきなんだと言い聞かせた。

「は?何を今さら?そんなことをしても無駄だよ」というキチママに何度も何度も、謝った。


すると、自分が正しかったと認められて嬉しくなったのか、最後にキチママはこういった。

「そう、全部あんたが悪いんだ。全部あんたのせいでこうなったんだ。だからもし、私のいうことをきかなかったら、次は絶対別れて娘にも会わせないから」

そう言っているキチママの顔を見たら、死にたいほど、屈辱だった。

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