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今、フィリピンでキチママと暮らしてます。(8)

一人娘


私には一人娘がいる。

毎日仕事から帰ると、「ダディ、ダディ」と玄関まで飛び出してきてバグをしてくれて、

「サマ アコ(私も一緒)」

と言ってどこに行くにもついて来て、寝るまで私にべったりの可愛くてしょうがない娘だ。

フィリピン人特有のダンゴっ鼻と太陽のような大きなオデコ。目は自分に似て、日本人の奥二重を持っているフィリピン人と日本人のハーフだ。

くるくるとした自分と同じ癖っ毛で、しかもつむじが2つ。つむじが2つある人は変わった人が多いと聞くが、キチママと私の間にできた子供だけに特別に変わった人になるのだろか。

私もよく「変わってるよね」と言われてきて、だからフィリピンまできてしまったんだと思うが、娘はいったいどこまで行くんだろうか?もしかしたら、宇宙まで行ってしまうかもしれない。

生まれたばかりのときは、いつも部屋に吊るしたハンモックをゆりかごにして寝ていた。どこに行ってもハンモックを持っていかないと眠れなかったので途中からベッドで寝るようにさせた。

私が旅好きというのもあり、生後1ヶ月くらいの時から色んなところに行っている。どこに行っても眠れて、食べられることはいいことだと思う。

とくにスイカが大好物で、朝昼晩スイカだけいいというくらいだ。私の出身がスイカの名産地だったからとは思わないが、いつか地元のスイカを腹一杯食べさせたいと思っている。

その娘も、もう少しで4歳になる。

言葉も英語混じりのタガログ語を話すようになってきて、しっかりと大人が話していることを理解して聞いているのがわかる。

この子は本当に成長したな、と思う瞬間がある。

大人が何を言わなくてもどういう状況か理解して、何をすればいいのか考えて行動しているのがわかるときがある。

例えば、私とキチママが1週間以上ケンカしてお互い話していないときがある。

私は娘がいるところでは絶対にキチママとケンカしないようにしている。それは私自身の両親がそうだったからで、一度もケンカしているところをみたことがない。

でも、自分勝手なキチママに頭がきて、何日もお互い話しかけない日もあるが、そんなとき娘が私の手を引いて母親の隣に座らせる。そして母の手と私の手を繋ぐのだ。そうして仲直りしたケンカは数えきれない。

きっと娘がいなかったら、とっくにキチママと別れていると思う。

あと、怒る時に眉間にシワを寄せて、口をとんがらせて、まくし立てるの姿はまるで小さなキチママだ。

それに言っていることとやっていることと、本心が違ったりする。ようはスネてる。

「もう嫌いだ、もうあっち行って」と言うが、実は離れてほしくない。

「いらない!」と言ってるけど、実はほしい。

こういう行動を見ると、だんだんママに似てきたなと思う。

キチママも、何かにつけて自分の意に沿わない事を私がするとすぐ「じゃ、別れる」と言う。ひどいときで、1ヶ月に2〜3度、別れ話を切り出してくる。

でも、本心は別れたくない。追っかけてきてほしい。そんな気がする。

それに、ただ自分のわがままを聞いて欲しいのに、聞いてくれなかったり、自分を見てほしいのに、見てくれないことに、腹が立っているんだ。

キチママは4歳の娘と同じなのだ。

でも、もし一度でも私から「別れよう」て言ったら、どうなるんだろう?

もう「別れる!」って言ったときに「うん、いいよ!」って言ったら?

それでも別れないだろうと思う。

もしお金さえ払ってしまったら別れるんだろうと思うけど。

なぜならキチママは常日頃から「子供に父親なんていらない。いなくても子供は育つ」これはキチママが身をもって経験したことだから。

父親なんていなくてもいい。必要なのは金だと。

私がキチママにお金を払うと決めた時、その時はきっとこの関係が終わる、家族が終わるんだろうなと思う。

でも、私にとって父親が必要であったように、娘にとっても父親がいてよかったと思ってもらえるような父親になりたいと思っている。

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