妖精界と人間界の寓話的邂逅―妖精の里への探検録、その②
10月13日(金)~15日(日)に吉祥寺シアターにて上演される、妖精大図鑑『無関係のジョバンニ』。
“エキセントリックセンチメンタル”を標榜し、ハイクオリティなダンスとシュールなコントを矢継ぎ早に繰り広げながら、観たこともない超然的世界へと私たちを手招きする小人たちの集まり―それが妖精大図鑑である。
我々吉祥寺シアターは謎深きその生態に迫るべく、妖精の里への探検調査を敢行した―
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
人里離れた深い森の奥に夜な夜な現れる未確認生物の集合体、妖精大図鑑。
本作『無関係のジョバンニ』は、妖精大図鑑ならではのやり方で「妖精大図鑑」というものを解剖する、いわばセルフタイトル的な作品である。
つまり、『無関係のジョバンニ』は妖精大図鑑をはじめて観るという初学者にぴったりの『「妖精大図鑑」の大図鑑』といったところであろうか。
本作を観れば、妖精大図鑑が一筋縄ではいかない独特のセンスを持ちながら、「観に来た人全員を楽しませて帰ってもらうんだ」という究極のホスピタリティも兼ね備えた唯一無二のアミューズメントパークを展開していることが理解できるだろう。
自分たちのやりたいことをこれでもかと詰め込んだびっくり箱的な驚きと愉しさは自然と私たちを巻き込み、人見知りの妖精たちとその場限りの友達になることができる。
そして劇場を出る頃にはみな妖精たちの虜になり、寂れた遊園地の着ぐるみに抱くような少しの気恥ずかしさと何とも言えない愛おしさを抱え、次に会える時を心待ちにしているのだ。
一見やりたいことを好き放題無作為に詰め合わせたカオスな空間のようにも思われるかもしれないが、その点妖精たちはちゃっかりと作法を心得ており、「目まぐるしいのになぜか見やすい」「混沌としているのにストレスがない」「あれもこれも取り入れつつ、なぜか最終的に作品としてしっかりまとまっている」という奇跡をさらりとやってのける。
ここぞというタイミングで差し込まれる問答無用で最高のダンスが要所で観客の心を掴みつつ、適宜挿入される歌や映像などの小ネタが絶妙なスパイスとなり作品に独特の味付けを加えている。
どうやらこの妖精たちは、あたかも無防備な天然を装いながらもすべて計算づくで自分たちの見せ方を心得ているのかもしれない。
『無関係のジョバンニ』は妖精大図鑑の魅力を最大限まで分かりやすく図解し妖精の里までの道しるべを示した秀作であるが、恐ろしいことに妖精たちは、その底知れぬ才能のほんの一部分をチラ見せしたに過ぎないということだ。
少なくともそう思わせるだけの数々の仕掛けを妖精たちは巧妙に張り巡らせており、人懐っこい親しみやすさを振りまきつつも捉えどころのないステップで私たちを翻弄し、狐に化かされるかのようにその尻尾は掴んだと思えばたちまち煙となり消えていく。
妖精大図鑑が私たちを夢中にさせてやまないのは、一見隙だらけの姿でこちらを油断させつつも、里の奥地へと足を踏み入れた途端深い霧に包み込んでしまうその底知れなさに秘密があるのだと思う。
そんな妖精大図鑑の魅力がたっぷりと詰まった『無関係のジョバンニ』はいよいよ13日(金)に幕を開ける。
何より私が本レポートでお伝えしたいのは、「妖精大図鑑の作品は妖精大図鑑でしか観ることができない」ということだ。
唯一無二で代替不能、妖精大図鑑は「ただただ観に来た人を楽しませたい」という一心でダンスや演劇の線引きを蹴散らしながら妖精大図鑑というジャンルをひとり突き進む。
その快進撃に乗りかかるも乗りかからぬもあなた次第だが、極めて希少な未確認生物たちがこちらを手招きしている今、私たちは未知なる舞台芸術との出会いを手にする絶好の機会を与えられているのだということを強く書き述べ、これにて本調査報告を終了するものとする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
妖精大図鑑『無関係のジョバンニ』
10月13日(金)~15日(日)
■公演詳細
■ご予約
・武蔵野文化生涯学習事業団
https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-s/showList?en=356
・CoRich舞台芸術!
https://stage.corich.jp/stage_main/245068
・e+
https://eplus.jp/sf/detail/3910590001-P0030001
(担当:小西力矢)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?