停電(体験談)

 私の体験した話をします。不思議なというかよくわからない短い話です。

 大阪の北部で大きな地震があった後、各地で震度1、2程度の小さな地震が頻発していた時期のことです。
 いつものように夜の11時過ぎのことでした。晩ごはんを食べ、風呂に入って、本を読みながら、「さて寝ようかな」と布団に潜り込む直亜鉛のことでした。突然耳元で「停電」と囁かれたのです。中年男の声でした。私は「えっ」と思いあたりを見回しました。周囲を見回してみると、窓越しに見えるアパート既に明かりを落としており、私の部屋だけ電気がついていました。ベランダに出てみましたが見渡す限り真っ暗で、街灯の灯りも見当たりませんでした。
 停電になっていないことは明らかでした。だったら中年男はなぜ「停電」と囁いたのでしょうか。その後も停電に陥ることはありませんでした。
 私は頭をかしげるばかりでしたが、中年男の囁きが予言である可能性は捨てきれず、今になっても覚えている、そういう話です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?