見出し画像

植物療法と医療の距離を縮める

 KIBITAKI プロジェクトでは双葉町における食を中心とした町の再出発について、さまざまなゲストをお招きしてお話を伺います。
 第7回のゲストはご自身の体験や感覚をもとに、オリジナルブランド「fragrance yes(フレグランス イエス)」で植物療法やセルフケアを提案する、山野辺喜子(やまのべ よしこ)さんです。山野辺さんがヨーロッパで見て、学んできた町には日常のなかに植物の香りで人を癒す風景がありました。そんな日常を日本にも根付かせるため、さまざまな活動に励まれています。今回のゲストはどのように双葉町と結びつき関わっていくのでしょうか。KIBITAKIプロジェクトの3名とともに話しあっていただきました。


ゲスト プロフィール
  山野辺喜子 やまのべ よしこ
株式会社「with a fragrance(ウィズ ア フレグランス)」代表/オリジナルブランド「fragrance yes(フレグランス イエス)」代表
セラピスト/フレグランスコーディネーター
植物療法を中心とした心身へのアプローチによって、セルフケアや体質改善を提案するワークショップやさまざまな商品開発をおこなう
KIBITAKIメンバー プロフィール

  高崎丈 たかさき じょう


元JOE’S MAN 2号・キッチンたかさき オーナー(新規店舗開店準備中)


日本酒のお燗を広める活動を展開中


株式会社タカサキ喜画を双葉町に設立


  小祝誉士夫 こいわい よしお


株式会社TNC 代表取締役/プロデューサー


海外70ヵ国で展開するライフスタイル・リサーチャーを運営し、

国内外での事業クリエイティブ開発をおこなう
  島野賢哉 しまの けんや


株式会社サムライジンガ 代表取締役/プロデューサー


ブラジル、台湾における芸術文化を中心としたプロジェクトに携わる


クリエイティブサウンドスペース 'ZIRIGUIDUM'(ジリギドゥン)創設者


島野:今回お話しさせていただくのは「fragrance yes(フレグランス イエス)」の山野辺喜子さんです。山野辺さんも丈さんのお知り合いですね。

高崎:はい。双葉町で壁画を描いているオーバーオールズの赤澤さんからのご紹介がきっかけです。

島野:最初の出会いは東京だったんですか。それとも双葉町ですか。

山野辺:丈さんと出会ったのは東京です。赤澤さんと一緒に丈さんのお店へ行きました。

高崎:赤澤さんと喜子さんがお互いに切磋琢磨して活動されてきたというお話を聞いて、僕も福島出身ですし、その後3人で意気投合したという感じですね。今回は喜子さんが関わられている活動の詳しいお話をお聞きしたいと思っています。まず「fragrance yes」を立ち上げたきっかけからお聞きしてもよいですか。

山野辺:はい。もともとは「yes」自体を立ち上げようとして始めたことではなくて、私自身が幼い頃からアトピーで、ずっと使い続けていたステロイドを20代前半のときに辞めたいと思ったことがきっかけでした。食事療法や体質改善など、薬を使わずに自然療法によって自分でケアすることを心がけました。努力して5年くらいかかってステロイドを体から抜いたのですが、同じように悩んでいる人や困っている人に、よくなるんだよ、癒せるんだよということを伝えていきたくて、全国をまわるワークショップを始めたんです。

画像1

山野辺:私はステロイドを辞めてから保湿クリームを自分で手作りしていたのですが、ワークショップではオリジナルでその方のお肌やメンタル状態に合わせて植物をブレンドし、保湿クリームを一緒に作っています。後日そのクリームを使った方々から肌の調子がよくなったので使い続けたいというお声をかけていただけるようになりました。ですが、肌に使うものは化粧品になるので、みなさんにお届するには責任があります。自信を持ってお届けしたい、その思いから化粧品を作る会社を自分で作ろうと決断し起業しました。活動を進めていくうちに、せっかくだからブランド名を考えてみよう、パッケージを作ってみよう、HPを作ってみようというふうに、徐々に形にしていく中で活動が広がり、振り返ったときには「yes」ができていたという感じですね。

小祝:「yes」という名前に込めた意味について伺ってもよいですか。

山野辺:「yes」の名前に込めた想いは、誰に何を聞かれても「yes」と答えられるような製品作りをしています、活動をしていますという、お約束の意味の「yes」です。使っていただく方にもこの「yes」のアイテムを通して、肌に使うものはできるだけ自然素材のものを選ぶ、口から入るものはできるだけ余分なものが入っていないものを選ぶという習慣をお伝えしたくて、「yes」と言えるような生き方や物の選び方をしていますか?という提案の意味での「yes」でもあります。

小祝:なるほど。生き方の約束と提案の「yes」であると。

画像2

島野:僕はそういったものを使う機会がほとんどないので詳しくないのですが…。保湿クリームが始まりとのことですが、フレグランスとつながる部分はあるのでしょうか。

山野辺:私は薬のような感覚でアロマオイルをブレンドして使っています。植物の持つ薬理効果を目的に使用していますが、そこには植物の香りも存在します。日本ではアロマやハーブは香りのアイテムというイメージが強いかと思いますが、私はヨーロッパのメディカルアロマというジャンルを学んでいるのですが、たとえばドイツではお腹が痛いと庭にあるカモミールをとってきてお茶にして飲んだり、風邪をひけばユーカリをとってきてお風呂に入れたりして、ハーブを薬草のように、自分たちで体のケアをするものとして使用します。フランスでは薬局にエッセンシャルオイルが売っていたりして、ヨーロッパでアロマやハーブは「薬草」という感覚があって、それでいて身近にある物なのですが、日本では「香り」のアイテムという印象が強いように思います。アロマやハーブが「お薬」のような存在にもなるという感覚をみなさんに伝えていきたいと思っていますが、化粧品は効果効能を謳うことができません。香水やフレグランスが好きな方は多いので、まずはアロマやハーブの香りの良さから入っていただいて、「yes」の製品づくりや活動を知っていただけれればと思っています。

島野:日本のマーケットに合わせたアプローチとして、フレグランスという入り口を作って、香りを楽しんでもらいながらセルフケアにまで届けるというような感じですね。

山野辺:そうですね。でも目指していたのはマーケットなどではなく、自分の家族や友人、身近な方にもっとわかりやすく知ってもらいたいというところからでした。

画像3

小祝:何年くらい活動していらっしゃるのですか。

山野辺:「yes」は立ち上げて6年になりますが、自然療法全般についてはもう20年ぐらい生活に取り入れ学び続けています。

小祝:そうなんですね。6年前といまではご自身の活動や、具体的なことでいえば商品構成など、変わったことはありますか。ニーズに合わせて、もしくは現在のコロナ禍のような社会の変化など、影響される外的要因がさまざまにあると思うのですが、「yes」を立ち上げた当時から、どのような変遷がありましたか。

山野辺:「yes」を立ち上げる以前の話になりますが、「yes」ができる前は整体やセラピストとして施術を中心に活動していました。最初はそれで独立しようと思っていたのですが、私も福島出身で震災によって実家が被災したり、自分の周りでも様々なトラブルが続いたりして、独立することを一旦見送りました。そんなときに声をかけてくださった方々と共に過ごし活動することで、いまの展開に切り替わっていったという経緯があります。ワークショップを始めた当初は肌トラブルで困っている方や、アトピーのお子さんがいらっしゃる方、メンタルに不調のある方などが自分を変えるきっかけを探して集まってくれるようになりました。その後、参加してくれた方々が植物の香りによる癒しのパワーを身をもって体感したことから、周りの人に伝えてくださるようになって、徐々に広まっていったという変遷があります。自分で宣伝するのはあまり得意ではないので、とにかく地道に全国をまわって伝えていったものが少しずつ大きくなってきて、いまがあるという感じです。コロナになってからのこの1〜2年はとくに需要が高まって、アルコールスプレーやお部屋の中で使う癒しの香りを求めて来られる方がすごく増えています

島野:ブログで見たのですが、マスクのなかにスプレーをして匂いが気にならないようにするという商品は、コロナがあったからこそ生まれた商品開発だなと思いました。

山野辺:そうですね。マスクは自分もつけていることがイヤで、アルコールで消毒できて、さらに香りがあればいいなと思ったのがきっかけで、はじめは自分のために作りました。yesのアイテムは私が使いたいものを作っているうちに製品になったものばかりです。


続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?