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新しい接点を紡いでいく

高崎:最初にお話しした浅野撚糸さんのおしぼりのことについてなのですが、実際使わせていただいて、品質はやはり間違いないと感じました。飲食店のおしぼりとして浅野撚糸さんのタオルを活用されているお店はあるんですか。

浅野:地元では使っていただいているお店がいくつかあります。

高崎:自分のお店でも使いたいですし、僕の知り合いの飲食店の方にもおすすめしたいと思っているのですが。

浅野:ぜひ、よろしくお願いします。

高崎:僕がまず浅野撚糸さんのおしぼりをお店で使わせていただくことで、プロジェクトにならないかと考えているんです。飲食店向けのおしぼりはみなさんリースを利用されているお店が多いのですが、そこを双葉町のことでつながった浅野撚糸さんと組んで、新しい形を双葉町から提案していけないかと考えています。僕ら飲食店はメッセージ性がとても大事なので、ご来店の際には必ず使うおしぼりというものを通して、浅野撚糸さんや双葉町のヒストリーをお話しすることで、よりお店にも色がついて愛着をもっていただけないかと考えています。双葉町で休業されていたり、逆に起業された方たちのことを少しでもお伝えできればいいなと思っています。

島野:浅野撚糸さんの商品となにかを合わせることによって、より発信力が強くなるような、複合的な取り組みをしていけると、互いがより強固になりますよね。

小祝:浅野撚糸さんだけではなく、これから次々と新しい企業が入ってきてチャレンジしていくときに、すでにそういった想いを形にしつつある浅野社長が、先んじて双葉町を民間企業の側から牽引して、世界に情報を発信していくような活動をしていかれるのだろうと思います。そこに対しても、我々がご協力できることがあるはずですので、我々ならではの新しい接点を社会と紡いでいきたいと思っています。KIBITAKIプロジェクトで行う各種イベントや、いま丈さんが言ったようなおしぼりを通じた、飲食業として地球環境に寄与するような動きなど、今回の出会いをきっかけにいろいろとご一緒させていただく機会を増やしていければいいですね。

福島工場パース2

福島工場パース3

島野:双葉町に建てられる予定の新工場「浅野撚糸ふたばスーパーゼロミル」について、浅野さんはどのようなヴィジョンをお持ちなのでしょうか。

浅野:さまざまな要素を考えています。基本的には観光地を目指していて、グランドオープンは2023年の4月になるかと思います。「スーパーZERO」という我々の糸がマイナスからプラスに捻(より)をかけていくということと、双葉の町がマイナスからプラスに戻っていくということを合わせてイメージした、象徴的な建物を設計しています。安八町にあります我が社は観光地となっています。観光バスを呼んで、コロナ禍にもかかわらず1年間で30万人のお客様に来ていただきました。安八町のような田舎でもそれだけの方が来てくださっています。もちろん近くに名古屋はありますし、双葉町の環境とは違うかもしれません。人口を増やすことは非常に難しい。でも交流人口は増やせる。交流人口が増えると、自ずと商業や産業が栄え、そこに住む人が増えてくる。岐阜県では高山もよい例ですね。いろんな努力の結果、一大観光地となっています。いまはコロナの影響が強いですが、いずれ双葉町もそのようになってほしいと考えています。

浅野:スーパーゼロミルは真ん中に空洞がある作りになっていますので、そこでイベントをやりたいですね。やっぱりタオルだけではおもしろくないので、地元の方が活躍していただけるような広場になればいい。最初の1年ぐらいは無理かもしれませんが、なかでイベントができるようにしたいと考えています。

島野:工場でのタオル製造を軸に置きながら、観光などの事業も見据えるといった、安八町でなされていることを双葉町でも展開しようとお考えなのでしょうか。

浅野:そうですね。さらには地元の高校生を集めて、雇用の促進を図ろうとしています。若い人たちに経営を任せたいと思っているんです。うちにも新入社員として高校生が4名入ってきました。タオルショップの一部にコーヒーショップを作る予定でして、企画、経営、仕入れなど、全てを新卒の4人にやってもらおうと考えています。双葉町でも同じくコーヒーショップを呼ぶので、若い人たちが自分たちで考えて売り場を経営していくようなことができればいいですね。このまえ、ふたば未来学園へ行って副校長とお話ししました。ふたば未来高校は中学、高校の6年間、どうしたら双葉町がこれから輝くエリアになるかということを、ひとりひとりが課題にしながら卒業していくそうです。ところがそういった考えを受け入れてくれる企業が近隣になく、みんな違う土地へ行って就職をしてしまうようなのです。そんなお話を聞いて、我々企業の側も解決していかなければならないことがあるなと感じました。

小祝:なるほど。若い人たちに働く機会を。

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浅野:最初の4〜5年くらいは純粋に双葉町、もしくは福島県の人たちだけで運営していきたいということも考えています。そのなかで楽しいとか、双葉町に戻ってよかったとか、双葉町で仕事をやって楽しいという、そういうエネルギーを発していきたいと思っています。それと「ダキシメテフタバ」は9万枚ほど売れていまして、その売り上げの一部で双葉の森を増やそうと思っています。いま100本ほどの木を買える用意ができています。オープンまで2年以上ありますから、みなさんが商品を買っていただいたお金を使って、植樹をしたいと思っています。双葉町には緑が全然ありませんので。

島野:浅野さんのお話をお聞きしていて、それから丈さんや、さまざまな方とお会いしていくなかで私が感じたことなのですが、双葉町に関わる方々は基本的にポジティブなお考えを持っていらっしゃる。私も双葉町には2度訪問しましたが、実際に目で見てなにもないことを実感しました。なにもないところから、なにができるか。発想の転換をすればいろんなことができるじゃないかということを前提に、ポジティブな発想をされる方ばかりだと感じています。企業立地をされる浅野撚糸さんを始め、さまざまな企業が来たときに、いままでの日本の既存の町になかったことが、双葉町だからできるんじゃないかと思わせてもらえるようなこともあって、そういった部分をKIBITAKIプロジェクトとして記録に収めながら発信していきたいと、私たちも強く思うことですね。

高崎:私は双葉町で壁画を描いてもらうところから会社設立に至ったのですが、自分が思っていたよりも壁画の活動がBBCや南ドイツ新聞などに取り上げていただけて、日本を超えて世界に発信できる町なんじゃないかと改めて実感する部分があったと同時に、圧倒的に人材が足りないと感じるんです。プロジェクトとして行政の方と一緒に壁画を作りますが、とにかく手いっぱいです。そしていまの双葉町に足りないものは、それ以上にパッションのような想いの部分ですね。人がそもそも住んでないということに対して、我々が足りていないところにうまく入りこんで、いまはネジが足りていないだけだと思うので、いずれパーツが揃ってくるとうまく回りだすはずです。そうすれば発信力のある町になると思っているんです。浅野撚糸さんの取り組みや活動は、我々とたぶん想いは一緒なのだろうと認識しております。

浅野:発信することは非常に重要なことだと思います。みなさん安八町にぜひ来てください。びっくりすると思いますよ。お客様がびっくりしていただけるようなことをしないと観光バスは来てくれないので。スーパーゼロミルもびっくりするような内装にしようと思っています。うちの工場やお店へ来たら、元気をもらったというような、双葉町のエネルギーを感じられるとかね。そういう空気を出していく場所にしたいなと思っています。


次回はさまざまな自然の素材から香りを作り出す、オリジナルブランド「fragrance yes(フレグランス イエス)」を立ち上げた山野辺喜子さんをゲストとしてお迎えする予定です。ご自身の体験から知識と経験を積み、多角的なアプローチによって心身を癒す活動に取り組むゲストとの対談となります。


文:丸恵(サムライジンガ)
撮影:福山勝彦(プランディング)
収録:須藤高志(サムライジンガ)
撮影場所:Creative Sound Space ZIRIGUIDUM(ジリギドゥン)
2021.6.15収録

今回はリモート収録にて、浅野撚糸様より写真をご提供いただきました。ご協力いただき誠にありがとうございました。

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