見出し画像

同島異夢

私の夢のなかで,ふたつの勢力が拮抗し、互いの行為を否定し合う嵐のような争いが繰り広げられていた。舞台は長年通っている金華山島。私の夢によく出てくる、多数の人が泊まれる宿坊のような建物があり、それとは別に、もっと山中へ入った場所にはあばら屋のような調査小屋がある。

各勢力はそれぞれ別の建物を拠点として、少なからぬ人数が所属している。いずれの勢力も金華山島の多様な景観や豊饒な動植物の有り様を拠り所としながら、対象へのアプローチの仕方や得たものの表現手段が大きく異なり、それが争いの元になっていた。

一方の集団は平均年齢が若く、もう一方は熟年のメンバーが多い。一方は科学的な調査活動を主にしており、公開する刊行物は事物の記載の正確さを重視している。もう一方は芸術表現を行動の基礎に置いており、野外ライブや観察ツアーの開催、情報のネット発信によって、大衆の共感を得ようとしていた。

一方は宿泊場所の使い方が荒く、もう一方は丁寧に使う。一方はスポンサーが付いて多額の金を動かしており、もう一方は自分たちの手出しで運営している。一方は地元の社会に対して融和的であり、もう一方は既存の権益を激しく批判している。

夜に、森のなかでスモークを焚いてそれをスクリーン代わりに映像作品を映写するグループがあり、手書きの調査票を裸電球の下で集計しその結果について議論している人たちもいる。

一方は最新のキャンプ用品で街から持ち込んだ食品を調理して食べており、もう一方は森から採ってきた食材を薪ストーブに掛けた鍋で煮込んで食べていた。

私の夢のなかでは両勢力が互いに自分たちの主張を譲らず、果てしないせめぎ合いを続けていた。私自身は双方へ平等に接しようとしていたが、共に受容するには相手が大きすぎ、右往左往するばかり。夜半に目覚めたときには身体が火照っており、汗びっしょりだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?