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野狐禅

私は、身近に似た人がいなかったがために、自分は特別なことを考える特別な人間であると思っていた時期があった。
今にしてみればそれは多くの人が通過してきた季節であったわけだけど、私がそこを抜けたのは遅くて、ネット上で他の人たちと意見を交換するようになってからだった。

昭和の頃なら、田舎から上京して都会の混沌へ放り出されてから気付いた、というものだったかもしれない。
自身が特別な存在ではなくて、普通の人の一類型であると知ったことは、拠り所を失うような不安を背負わせるとともに、同じ話題で議論できる相手がいるという安心感を、私に与えた。

今もなおネットには、自分を井戸の底から掬いあげる役目を期待している。
それがSNSであれ、自他のブログ上のやりとりであれ、はたまたMMORPG上のチャットであれ、自分以外の視点というものをこれほど見せつけてくれるものはない。
遠くへ出掛けるほど足元がよく見えるようになる、という箴言のとおりだ。

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