記録映像と映像作品

BBCのネイチャー系番組を視聴するたびに思うけど、撮影した映像から(たぶん)時系列や場面を混ぜてストーリーを組み立てている。
しっかりした監修を受けているようだから、嘘や破綻が目立つというわけではないけれど、事実関係の記録を目的とした映像ではなくて、編集により作られた「映像作品」だ。

これがこの放送局のポリシーなんだろうな。「人に訴求できる映像を作る」という。

思えば、学術論文だってひとつの「物語」だ。
過去の知見を踏まえ、新たな観察結果が言語化され、数量化により裏付けられた破綻のない「物語」。

BBCの作る物語は訴求が目的で、学術論文は物語から破綻や矛盾を排除するのが目的。

獣や鳥たちが誕生し、暮らし、命を失う映像を見ることで大勢の人たちが自然界に関心を持ち、研究に予算がついて、関連の人材が育つ。

個人や1プロダクションや1局の主張が浮上し、別の主張と遭遇し、揉まれて普遍の高みへと到る。なべてこの世はこともなし。

散逸構造が出現し、動的平衡へと至る。私も、マクロな構造のなかの1個の泡だ。
(2023.1.5)


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