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六道 餓鬼編 意地汚い人はどこへ行く 3

※地獄のフィクションストーリーです。

最終章 ようこそ。餓鬼道へ

十王の1人、五道輪廻王から「お前は餓鬼道が次の輪廻先じゃ」と言われ、
餓鬼道の意味も何もわからずこの場所に辿り着いた。
理香は、異臭と悪臭、とにかく天も地もなく空間に蠢く気色の悪い、妖怪のような生き物を汚らしげに眺めていた。
皆がみな、痩せているのに腹だけはぽっこり膨れ上がり、目はギョロッとして
髪の毛はまばらに生え、男かも女かもわからない。
まさか、自分もその姿に変わり果てているとは、思いもしない。

「あ〜お腹すいたわ」
周りを見てもまともな食べ物も見当たらない。
それどころか、誰かが食べた残飯を漁るもの。地面の水溜まりに顔をつけて飲むもの。ところどころに、鬼に口から棒を突っ込まれているもの。
糞尿を食べるもの。
どこを見てもおぞましい。
ふと我に返った理香は、自分の体の異変に気づいた。
(えっ?こんなにお腹がぽっこりしてたかしら。確かに太ってはいたけど、手も足も痩せてまるで棒のようなのに、お腹だけ出てるなんて。手もガリガリで爪が獣のように伸びて汚らしいわ。なんなのよ。鏡はどこ?鏡探さなきゃ)
ウロウロするが、家らしきものは見当たらない。
近くにいる化け物に話しかける勇気はなく、遠くに少し大きめの水溜りが見えた。
急いで駆け寄って、水に顔を写してみようとするが、濁ってとても見れたものではなかった。手探りで、自分の体を触りながら形状を想像するしかない。
(もしやあの化け物と私は一緒?)

理香の絶望は計り知れないが、もうすでに自分は何者なのか
私はなんのためにここにいるのか。
考える力もだんだんと薄れる感覚がした。
どのくらい時間が経っただろう。
もう人間の頃に使っていた「言葉」はすでに頭には浮かばなくなっていた。

自分の横にいる化け物同様、そこらに捨てられた残飯を漁り始めたが、
別の餓鬼に取られ、終いには糞尿しか食べられない様子だった。

餓鬼(がき)ってなに?

理香が体験した変わり果てた化け物の正体は「餓鬼」。
常に飢えて、食べても食べても空腹が満たされることはなく、
飢えた鬼のことを言う。
人を妬み、簡単に人を陥れ、強欲。さらに生命の源である「食物」で人を弄ぶ。
生前の行いによって、餓鬼のヒエラルキーが決まるようだ。

人間界にもいますね。餓鬼のような人。
利権を得るために、その人のおこぼれを当てにする。
贅沢な暮らしや着るもの食べるもの。稼ぐ人や権力のある人にくっ付いて自分の懐からは一切出さず、その上、自分より下と認識した者や利権に関係のない人は邪険にする。なりふり構わず。
この様に、餓鬼に取り憑かれると自分の事しか考えず、常に欲が深い。

餓鬼の中でも残飯を食べられるのは、上の階層である。
途中で改心したか、反省したか人生の前半か後半かその途中か。
いずれかの中で、救いの人生に巡り会えた少しラッキーな人であろう。

理香は餓鬼界に生まれ堕ちた。
現世で果てるまで、反省のチャンスは何度か訪れていたのに、気づかない。
理香の階層よりも低いのは、食べることすらできない餓鬼たちだ。
あっちにも、こっちにも、現世で散々自己満足のために人に嫌がらせをして楽しんだ者たち。あの世に辿り着いた今となっては、哀れというべきか、それもまた本望というべきか。己の選んだ道である。
今となっては、人間だったことすら記憶にはない。

常に餓えの中にいる世界が「餓鬼道」である。
餓鬼の寿命は1万5千年程だと言われている。
その後、救いの神は訪れるだろうか。

※これは六道説をもとにした、完全フィクションです。
 





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