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自閉症の子供達向けのクッションから始まったフィンランドのテクノロジーが日本の映画館を変える

2018年春。心底惚れ込んだ商品がありました。いまだに自分たちが取り扱った商品の中でも1、2を争うくらい気に入っているもの。

それは枕の形をしたHUMU(フームー)というスピーカーでした。

フィンランド語で「ハミング」を意味するそのプロダクトは、音響学の博士でありバイオリン奏者でもあるユッカ・リンジャマ氏の妻のリクエストから始まりました。障害者や自閉症の子ども達のセラピストとして働く妻をサポートする優しい触感で落ち着くことができる音の出るデバイスを作りたいと、始めは癒し目的での開発がスタート。開発後すぐ、チームはこれがエンターテイメントとリラクゼーションの両方に有効な発明だと気付いたそう。

自閉症の子供向けに開発された音感クッション「Taikofon」

通常のスピーカーとは音を鳴らす仕組みが全く違い、ギターやバイオリンのように共鳴する2枚の振動板を枕のような柔らかいクッション型のケースで包む構造を持っており、頭をつけると、まるで体を通じて音が直接体に響くような特殊な感覚を得られるものでした。


HUMUの大迫力音響で映画を鑑賞

寝転んで聴いたり、ソファに置いて使うのがよく、ヘッドマウントディスプレイとの相性も抜群でした。OculusのVRゴーグルやKibidangoで開催した「LUCI Immers」や「Photontree PRO」などの映像視聴に特化したヘッドマウントディスプレイを付けてこのHUMUで音を鳴らすと、自宅のリビングルームが映画館のような大迫力のシアターに変身します。

HMDとの相性は最高

その後、メーカーは事業戦略を大胆にピボットし、民生用ではなく業務用の技術開発・業務提携に注力します。その中でも一番フィットしたのが映画館のシート。HUMUで開発した同社技術をシートに組み込んで実際に映画を視聴すると、映像の迫力のみならず体全体に響くものすごい迫力の音響を体験することができるのです。

2020年のCES(世界最大の家電展示会)でのFLEXOUND社ブース

韓国や中東などで同社の技術「FLEXOUND Augmented Audio」を導入するシアターが次々に登場しているというニュースは聞いていましたが、昨年8月に、日本でもユナイテッド・シネマが同社と提携し、新たにシアターへの導入を進めるとの発表がありました。

その後さらに一年の準備期間を経て、12月1日からユナイテッド・シネマお台場の10シアターにてFLEXOUND(フレックスサウンド)社の技術を日本初導入した音響体感プレミアムシートFLEXOUND™がサービス開始。

皆さんもぜひ実際に映画館に足を運んでいただき、その素晴らしい音響効果を体感してもらえればと思います。そして、遠くフィンランドの地で産声をあげた技術が、その姿をまるで昆虫のように変容させながら、より多くの人たちに愛されるようになっていく、その過程にも想いをめぐらせてもらえると、より一層お楽しみいただけるのではないでしょうか。

弊社自体は一商品のクラウドファンディングを通じて、同社の事業成長の一つのフェーズをお手伝いしたにすぎませんが、当時HUMUを支援いただいた数百人の支援者の方々にとって、当時この商品の先見性を見出すことができたことに、きっとご満足いただけることと思います。

文責:きびだんご株式会社(まつざき)

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