【感想】私の名は「月の輪」を観に行った
・『私の名は「月の輪」』の公演を行ったワンネス一座は、フリースクールNPO法人ワンネススクールの現役生・OB・スタッフらによる演劇部である。また、演出をつとめた南光太朗はプローデュース劇団「さざなみ企画」を主宰している若い演出家である。
・南くんから本番二週間前に脚本をなくして即興で公演を行うと決めたと聞いたとき、賛否両論になるなと思ったし、実際、賛否両論だった。
・以前さざなみ企画で「オズの魔法使い」というタイトルで「オズの魔法使い」と異なる筋書きの公演を行ったときも賛否両論だった。南くんはそういうことをよくやる。
・即興になったことで「私の名は月の輪」のストーリーは全く分からなかったが、フリースクールに通う子供たちやスタッフの言葉が音楽の中でコラージュされていく様子は心象風景のようで美しかった。
・即興にしたことは、観た上で、これは非難を承知の上で、ベストを尽くした結果だと言える。即興という選択は、この座組で表現できる限界へ挑戦にするのに有効だと思ったからだ。
・役者としての修練が浅い人が表現できる幅はすごく狭い。その狭い中でさらに役を演じようとすることで、さらに表現の可能性を閉ざしてしまう。
・即興という選択は、できないことを切り捨て、できることに全振りした結果であり、見事迫力のある表現に到達することができた。
・一番大変だったのはこの表現をやり遂げた役者のみなさんだと思う。演出は口出すだけで、最終的に矢面に立たされるのは役者である。普段、言いづらいことを言わないといけない。しかも、衆人環境の舞台上で。これはとてつもないしんどさである。その途方もない苦労の結果紡ぎだされる言葉は、台本にはない、叫び声やうまく言えずしどろもどろになっている様子は、上辺だけの演技よりもずっと真に迫るものがあった。逃げずに最後までやり遂げた雄姿は、観客の心に残り続ける。素晴らしい表現をありがとうございました。
・最後に南くんの友人として。終演後に、演出家が出てきて泣きながら経緯を説明するくだりは、気持ちはわかるけど、ない方が美しかったよ。しかも、あれが原因で叩かれやすくなってるよ。せっかく隠れてた自己愛が完璧にばれちゃうからw
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