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幻影

暴力をふるわれたわけでも、暴言を吐かれたわけでもない。ネグレクトされたわけでもない。
人間的に尊敬できる所が一つもない両親だけれども、弟のことがなければ、もしかしたら適切な距離を取って付き合えていたかもと思ってしまうほどには、積極的な加害性はない。娘から祖父母を奪ってまで、私はあの人達と絶縁しなければならないのか?と、私はずっと迷っていたし、許せない自分に罪悪感を持っていた。

しかし、冷静になってみれば、これだけ私が苦しめられてきた人間達と付き合い続けることに、何の意味があるだろう。その我慢は、何も生み出さないのではないだろうか。
生きている(そして積極的に加害してこない)両親と縁を切ること、それは私が怯えていたような恐ろしいことでも非道なことでもない。
二人の子供の片方だけをあんなに贔屓する、それだけで十分に精神的虐待ではないか。私の苦しみは確かに存在している。

だから私はあの手紙を書いた。
もうこれ以上苦しまないために、苦しみの元である両親と、決別するために。

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