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お行儀の悪い子供

私の両親は、「躾のされていない子供」が大嫌いだった。
そりゃ誰だって、キーキー声を出したり、店の中をドタバタ走り回ったりする子供は好きではない。私も元々が子供好きな方ではないし、全ての子供がかわいいと思えるほど人間もできていない。それでも、特に母のあれは、異常だったと思うのだ。
例えば一緒に出かけた電車内で、幼稚園から小学校低学年ぐらいの子が、「ママ、ここ空いてるよ!」と走って来るとする。すると母は、眉をひそめる。のみならず、相手の親子に聞こえるような声で「いやあね」とか言う。

私の娘は、親の私から見ても利口で素直な方で、幼い頃から「言えばわかる子」だった。
だからさすがの母も、私の娘に注意することはなかったが、三人で出かけた時に店で騒いでいる子供などを見ると、「あら、お行儀悪い」などと、昔と同じように言った。私は、自分の娘にそれを聞かせたくないと思った。けれど、やめてとも言えなかったので、せめてもの反抗心で無視した。
母のあれを聞くたび、胸にこみ上げる嫌悪感に耐えられなかった。

父もよく他人をジャッジした。
母方の祖父が亡くなった際、ほぼ初めて会うような親戚もたくさん来たのだか、精進落としの料理をモリモリ食べている若者を見て「欠食児童」と形容していたこともある。

実家と縁を切るまでは、ぼんやりとした胃のむかつきのような不快感だったものが、今はくっきりとした軽蔑に変わっている。
世の中にはいわゆる「躾のされていない子供」も「行儀の悪い大人」もたくさんいるが、人のことをあげつらって嫌味を言うあなた達ほど下品ではありません。


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