100円おやつと懐古主義ではない私
なんだか朝から変にノスタルジックな気分だ。
大学卒業まであと2週間だからだろうか。
サークルの友人と毎日会って、毎回別れを惜しんでいるからだろうか。
久々に朝から活動しているが、いい天気でいつもの景色も美しくみえるからだろうか。
いや、きっとここに辿り着いてしまったからだ。
近鉄桃山御陵前駅のすぐ近く、大手筋商店街。
観光客向けではなく、主婦とお年寄りで賑わう地域の暮らしに根付いた商店街。
シャッターが閉まっている店は一つも無い。
珍しく活気のある商店街だった。こんなところ、22歳の私は見たことがなかった。
八百屋、文房具屋、時計眼鏡屋。
下町ならではの店を横目にてこてこ歩く。
喫茶店が多い。おなじみチェーンのコーヒーショップから、喫煙可能の喫茶店まで、多種多様な店が並ぶ。ショーケースの食品サンプル。発色の良いクリームソーダからきつね色トーストのサンドイッチまでを網羅した完璧な品揃え。お店に入りたかったが、残念ながら金無し大学生だ。唇を噛みしめ、店には立ち寄らずに足を早める。
数々の誘惑に心を持っていかれそうになりながら、最終的に私が唯一立ち寄ったお店は、駄菓子屋だった。
そうだ、100円おやつをしよう。
私が小学生の時に通っていた学童で、月に1度行われていたイベントだ。
100円玉をひとり1枚握らされ、駄菓子屋に行く。遠足のおやつ選びみたいなものですね。
各々が100円でベストを尽くそうと、頭を悩ますあの時間。小学生1年生が頑張って金額を暗算するあの時間。あの気分を、久しぶりに味わってみたいと思った。
が、
早々に断念した。
上の4つを手に取った時点で、
モロッコヨーグル22円かよッ!!!!!
もう102円じゃねえかッ!!!!!!!
といつもの調子で脳内さまぁ~ず三村さんがツッコんできた。なんでお前だけ端数出てんだよ。
そして、これを見てほしい。
え、少なくない???????
これだけじゃ満足できない。
よし200円にしちゃおう、と即座に方針を変えた。大人になったのだ。
最終的には、
こうなりました。
昔は、何のお菓子でもコーラ味一択だったのだが。
ソーダ味とグレープ味も選べるようになった。大人だ。
平日のお昼頃。店内はお年寄りや主婦、休憩中のサラリーマンで賑わっていた。
皆が個包装タイプのお菓子を大量買いして、キャッシュレス支払いで去っていく。
子どものときは大人買いって憧れだったけど、それが出来るようになったとき、子ども時代のあのワクワクはなくなっちゃうよね。
帰宅して夜、サークルの友人と自宅で飲んだ。
購入した駄菓子で思いの外盛り上がった。
プチプチうらないでは
「『デート』いいって!◎だった!!」
「俺の『なやみごと』◯やわ」「おめでとう!!」
「私の『みらい』△って何事?シビアじゃね??」
4月からは社会に出たりと、ついぞ大人になる私達。
この無責任な占いお菓子に、皆で一喜一憂する時間がとても尊くて楽しかった。
ここから私達はどうなるんだろう。
就職、転職、結婚、病気、、、なにも予測できない。
でも、君らが心身ともに元気で笑ってくれればいいや。
童心と責任。
無邪気さと損得勘定。
大人になるのは嫌だったけど、
多面的に物事を見ることができるようになったり、時に矛盾した複雑な感情を抱くことができるようになったのは悪くないかも。
1ヶ月後には4年住んだ京都を離れて上京する。
楽しみではあるけど、しかたなく大人になる。
心配や寂しさすらも楽しめたらいいな。
よし、程々に頑張るぞ、
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