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テルコムスタイル

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春の日差しが降り注ぐ。いや、もう若干夏が混じった日差しだと思う。そんな日差しを浴びながら、曲を聴く。

最近は、優里さんの「ドライフラワー」を聴く。素敵なメロディーだ。よく口ずさむ。でも、少し引っかかるところがある。サビに少し引っかかる。ここなんだけども、「声も顔も不器用なとこも、全部全部、嫌いじゃないの♪」

いや、顔かぁとなる。なんか引っかかる。なんかね、引っかかるのよねー。仮に誰かに言われたとして想像してみる。「キタバくんの声、嫌いじゃないよ」「キタバくんの不器用なところ嫌いじゃないよ」もし言われたら、ちょっとだけ嬉しい。

だが「キタバくんの顔、嫌いじゃないよ」………うん??
不意に言われたら、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で2度見してしまうと思う。やっぱり引っかかるなぁ。僕だけかな笑。

でも、代案なき批判は、悪口だと思っているので、代案を考えてみた。

一つ目は、これだ。
「声もシャツも不器用なとこも、全部全部、嫌いじゃないの♪」
いかがであろう。嫌いじゃないシャツって、微妙なんだろうな。

二つ目は、これだ。
「声ものども不器用なとこも、全部全部、嫌いじゃないの♪」
いかがであろう。少しホラー感が出ている。のどフェチにはたまらないかも。

三つ目は、これだ。
「声も雰囲気も不器用なとこも、全部全部、嫌いじゃないの♪」
いかがであろう。何が嫌いじゃないのかよく分からない感じに仕上げてしまった。

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結局のところ、いい歌詞が思い浮かばなかった。そんなことを考えながらドライフラワーを歌っているところ、「ただいま〜」と、みんなが帰ってきた。いつもの児童ホームのはじまりはじまりである。

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口癖が「テルコ」と言う方がいる。その方をAさんと呼ぶことにする。Aさんはよく「テルコ」とよく呼ぶ。なぜ、テルコが口癖なのかは分からない。どんなクイズの答えも「テルコ!!」と答える。この前は、「春が来た」という曲をテルコさんバージョンで作詞していた。

そんなAさんだが、ここ数ヶ月で、急に身体能力が上がった。

去年のAさんは、公園に行きたがらなかった。公園に行っても、ずっと座ったり、周りを歩いたりするだけだったが、最近はブランコを漕ぎ始めた。ブランコを漕いでいる時って、ブランコとお尻の触れる感触(触覚)、ブランコを漕ぐ際の筋肉や関節が動く感覚(固有受容覚)、ブランコが揺れる感覚(平衡感覚)、動く景色を捉える(視覚)などなど、色んな感覚を養う遊びなのだ。

ブランコができるってことは、特に平衡感覚が育ってきたのだなぁと。嬉しく思う。そこで、私はある提案をすることにした。

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それは、ダンスだ。

ある子どもが、カンナムスタイルを踊っていて、一緒に踊らないか提案した。

プロジェクターにYouTubeを映して一緒に踊った。ジャストダンスという、画面のお手本に合わせて体を動かすだけで、簡単にダンスを楽しめる動画がある。オランダのある学校の体育で見かけたのを思い出して、やってみたのだ。

最初、Aさんはきょとんとされていた。しかし、少しずつ体を動かし始めた。

それから、毎日「ダンスしたい」と言うようになり、今やテンションアゲアゲで踊っている。今夜も、お友達とあちこちを飛び跳ね、もはや踊りではなく、祭りみたいになっている。

もちろんのことながら、ダンスの最後は、シャキーンとポーズを決めて「テルコムスタイル!」と言う。

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その子が何に興味を持って、どこを刺激したら、学びが止められなくなるのか。常に見ようと思っている。今、その子が興味のあることは、言葉?数字?空間?音楽?運動?人間関係?自然?じっくり考えること?

そこを見極めて、提案してみる。すると、ヒットしたりしなかったり。いつも試行錯誤だけど、もしヒットしたら、異様な没頭ぶりを見せる。私が何も教えなくても、やり続けるし、身につけていく。

私はあんまり子どもに教えない。ダンスの指導もしていない。唯一しているのは、その子と遊んで、その子の心躍る方向に、一緒に飛び込むお仕事をしてるのかもと思った。

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