500万画素の古いコンデジで遊ぶ ~“映える”写真は撮れるのか?
今回は、2005年に発売された500万画素機でいろいろと撮影するという企画なのだが、これをやろうと思ったのはネット(AERA dot.)で目に留まった以下の記事を読んだからだ。
Z世代がハマる「古いiPhone」で撮る日常 500万画素だからこそ“映える”写真の妙味とは?
この記事は、味のある写真を撮るためにわざわざ古い500万画素カメラのiPohe 4を購入する若者の話で、多くのZ世代が「昔のiPhoneの写りがめちゃくちゃエモい」と、広く共感を呼んでいるという内容だ。まあ、リンク先を読んで欲しい。
オールドコンデジのブームやフィルムカメラのブームについては承知していたが、写真を撮るためにわざわざ古いスマホを購入する…という話は初耳だったので、ちょっと興味を惹かれた次第。
閑話休題、僕は「エモい」という言葉が好きではない。「ウザい」「キモい」「ヤバい」と同じく、使う人が自らボキャブラリーの貧困、語彙力の無さを喧伝しているような言葉だ。語源のエモーショナルからかけ離れて使われている「エモい」を、「多感な若者の共感性を示す言葉」として肯定する人もいるが、僕自身は絶対に使いたくない(特に文章表現としては)安易で低レベルな形容詞だ。頭が悪そうな言葉…というのが、いちばん当てはまるイメージである。ちなみに、本稿のタイトルで使った「映える(はえる)」という言葉を、「バエる」と濁点をつけて読むのも嫌いだ(今回は意図的に使っている)。むろん、これらは個人的な意見・感情なので異論があっても一向に構わないし、議論する気もない。使いたい人がこれらの言葉を使う分にはどうぞご自由に…という感じだ。「エモい」という言葉が使われている文章、使っている人を、非難・批判しているわけではない。第一、他人の書く文章や使う言葉にケチをつけるほど、自分の文章がマトモだとは全く思っていない。
それはそれとして、iPhone 4の500万画素カメラで撮った写真に対して、「エモい」という言葉で伝えたいことはわからないでもない。ざっくり言ってしまえば「現行機種よりも大幅に画質が低いゆえに、逆に何か心に訴えるもの、心を動かすものがある」ということだろう。十数年前に見慣れていた画像なのだから、ノスタルジックであることは確かだ。まあ、低画素デジカメ礼賛の流れで言えば一時期の「トイデジ」ブームがこれに当たるし、昨今のフィルムカメラのブームやオールドコンデジのブーム、オールドレンズ遊びなども、この延長線上にあるのだろう。何たってPENTAXが新製品として、わざわざ「ハーフサイズ」のフィルムカメラ「PENTAX 17」を発売するぐらいだから…
ところで、「エモい」という言葉で片づけたくはないが、僕自身も画質だけが「良い写真」かどうかを判断する基準ではないことはよく理解しているつもりだ。フィルムカメラで撮る写真、特にネガフィルムで撮る写真は、その発色や独特で低めの解像感が好きだし、実際にライカ「M8」を始めたくさんのフィルムカメラを所有している。ハーフサイズのカメラも好きで、今でもたまに「オリンパスPEN」を使う。レンズによる描写の違いを楽しむのも好きで、ミラーレスにマウントアダプターでオールドレンズを着けて遊んでいる。一時期は安価なCCTV用の「Cマウントレンズ」をミラーレスに着けて撮影するのに凝っていたことすらある。
さて、余談はこれくらいにして、「500万画素だからこそ“映える”写真…」なる記事を読んだ僕は、あらためて500万画素のデジカメで写真を撮ってみようと思った。むろん画質の傾向は画素数だけで決まる問題ではないのは十分承知の上だ。
iPhoneで使われるカメラセンサーは、2011年からSONY製(IMXシリーズ)だと公表されている。SONY製になったのは、確かiPnoe 4Sの800万画素センサーからだ。冒頭の記事に出てくるiPhone 4は2010年に発売されており、ソニーではなくOmni製の500万画素裏面照射型CMOSが採用されていた。画質の傾向を決めるにあたって、センサーと同じくらい大きなファクターは画像処理エンジンだが、iPhoneは昔から絵作りが上手い。画像処理によって、一見して見栄えがする画像を作り出している。これに対抗できる500万画素のデジカメがあるかどうかはわからない。
大量にある手持ちの古いコンデジの中から、500万画素機を探してみた。ソニー「DSC-V1」やオリンパス「CAMEDIA SP-500UZ(これは600万画素)」など何台か見つかったが、その中でバッテリーに充電が可能で正常に動作する機種として、富士フイルムの「FinePix F460」を使ってみることにした。
FinePix F460は2005年に発売されたデジカメだから、19年前の製品である。小型・軽量で画質もよく使いやすいことから、国内外の旅行などによく持ち歩いた機種だ。上述した記事にあった500万画素カメラ搭載のiPhone 4の発売が2010年だから、それよりさらに5年も前に発売された製品だ。Z世代が生まれた頃に発売されたデジカメということになる。
F460は、有効画素数 513万の1/2.5型正方画素CCD(原色フィルター)を使っている。CMOSではなくCCDゆえに色乗りはいいし、この頃から現在に足るまで富士フイルムのデジカメはフィルムライクな発色が特徴だ。となると、同じ500万画素のセンサーでも裏面照射型CMOSのiPhone 4よりも「映える」画像が得られるのではないかと期待したい。
F460の仕様について、もう少し詳しく見ていこう。まずボディは薄く小さな直方体で非常にすっきりとしたデザインだ。右手でホールドする部分が少し膨らんだ曲線で構成されており、小さいながらホールド感はいい。本体重量は122gと軽い。
レンズは光学式3倍ズームで、焦点距離は5.8mm~17.4mm(35mmフィルム換算:約35mm~約105mm)、開放F値はF2.8~F4.9、絞り(広角端)は、F2.8~F7.0だ。露出制御はプログラムAEのみだが、2EV~+2EV の範囲で1/3EVステップの露出補正ができる。ホワイトバランスも変更できる。なお、手ブレ補正機能はない。
今回F460で撮影して、撮影後に困ったことがある。それはF460の記録メディア が、なんと「xD-ピクチャーカード」だったことだ。使ったF460には256MBのxD-ピクチャーカードが入っていたのだが、それを読み出すためのカードリーダーがなかなか見つからなかったのである。本機に対応する14ピン USBケーブルは見つけたものの、何故かPCに接続しても認識しない。結局、あちこち探し回ってxD-ピクチャーカードにも対応する古いカードリーダーを見つけ出すまでに、小1時間もかかってしまった。さすが20年前のデジカメである。
で、ごちゃごちゃと書くのはこの辺にして、20年前の500万画素機であるFinePix F460で撮った画像をアップしよう。後半は、2005年の発売当時に、たまたま仕事で訪れたバンコクの街角をF460で撮った画像だ。
いずれも画素数が低いゆえに解像感はないが、旅の記録としてもWebで利用するにしても十分に実用的な画質だ。ダイナミックレンジは明らかに低いが、光源が多い夜景画像に大きな破綻はない。原色CCDかつ富士フイルムのカメラらしい、温かみのある発色だと思う。最新のスマホで撮った画像とは、明らかに雰囲気が異なる。なんとなく、フィルムカメラで撮った写真っぽい、ちょっとノスタルジックな雰囲気も感じられる。
果たしてこれらの画像を、人は「エモい」と言うのだろうか…