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迷走する湖南市政

水戸の拠点から滋賀の自宅に戻り、溜まった新聞を整理していて、15日の京都新聞滋賀版のコラム「風」に気がつきました。
立川真悟記者の署名入りの「責任」と題する記事です。ちょうど昨晩の「びわカン」収録で「自覚者が責任者」という言葉を紹介したところでした。政治に携わる者に不可欠なのは「責任」を果たす能力があるかどうかです。
そのコラムは次のとおりでした。極めて興味深い内容となっています。

《2020年の湖南市長選で、無投票当選した生田邦夫氏陣営による政治資金問題を報じて2カ月になる。
関連3団体による法令違反の疑いは団体の政治資金収支報告書の不記載と虚偽記載、有印私文書偽造。生田氏自身は公選法違反の可能性がある。加えて、事実上のペーパー団体の利用や迂回寄付による寄付額の上限規制逃れという倫理的問題もある。
つまり、違法・脱法的な資金運用を行い選挙の公平公正性をゆがめ、不正の実態が見えない報告書を滋賀県選挙管理委員会に提出したのだ。「意識はしていなかった」と事務担当者を務める生田氏の私設秘書の説明を受け入れるのは難しい。
だが、市議会では生田市長への責任を問う声が上がらない。20年市長選では市議13人が生田氏団体に名を連ねた。現職は10人、県議は2人いる。「市長にふさわしい人物」として市民に推薦した県市議は顔に泥を塗られたも同然で、市民のためにも追及する道義的責任がある。
支援団体に属さなかった市議も同様だ。市議会は昨年、税務申告を怠りながら謝罪と修正申告を済ませた市議を政治倫理審査会にかける一方で、審査請求を2カ月手元にとどめ置くという意図的に条例違反をした生田市長を不問に付した経緯がある。市長への忖度を続けるならば市議会の存在意義が問われかねない。
関連団体の一つは自身が代表である生田市長も事実を認め「責任がある」とし、市議会最終本会議で一連の問題を念頭に謝罪をした。一方、4日の会見では既に問題発覚からひと月以上が経過しながら責任の取り方を「相談、検討している」とはぐらかした。
国政では昨年11~12月に2関僚が政治資金の問題で更迭された。市の多くの政治家がかかわった政治活動・選挙運動を舞台にした不正にどう向き合うのか。市長や県市議だけでなく、市民も厳しく見つめる必要がある。》

むっちゃ激烈なコラムです。これまでの湖南市の異常さがこの短いコラムに凝縮されています。こんな文章をばらまかれた湖南市民は、恥ずかしくておちおち市外を歩けなくなってしまいます。京都新聞に強く抗議すべきでしょう。
確かに「国政では昨年11~12月に2関僚が政治資金の問題で更迭され」るほど重い問題であるはずなのに、湖南市の政治関係者だけでなく、県内のマスコミもそろって沈黙しているのはとても気持ちが悪い感じがします。また、やり玉に挙げられた県選管も再発防止策は考えないのでしょうか。

そんなことをぼんやりと考えながら古新聞をめくっていくと、1週間後の紙面にさらに衝撃的なベタ記事があるのを見つけてしまいました。
見出しには《湖南市議会に新会派》とされ、小さく《2会派解散》ともあります。解散した2会派は「令和会」と「みらいの風」で、前者は自民党系、後者は立憲民主党系の会派でした。
記事はこんな具合です。短いので全文引用してみます。

《湖南市議会は21日までに、新会派「会派きずな」が結成され、「令和会」「みらいの風」が解散した、と発表した。
きずなは、自民党、立憲民主党、無所属の9人で構成する。新たな会派構成は、会派きずな9人、共産党と公明党各2人、無会派3人となった。》

え?自民と立民が合体して新会派?しかも前週まで県議会議員選挙で激烈な戦いをしていたはずなのでは?

そうなのです。メンバーを見てみると、代表:森淳、副代表:望月卓、幹事長:堀田繁樹、副幹事長:中土翔太、会計:永田誠治と並んでおり、他に上野顕介、藤川みゆき、大島正秀、奥村幹郎各議員となっています。湖南市議会の会派でこれほど仰々しい役職名が並んだものを見たことがありません。
 特徴的なのは、県議選に絡んで菅沼利紀県議を呼び出そうとしたりと水面下で動いていた森元議長が今回は代表という表舞台に颯爽と登場したこと、議会を代表する堀田議長が代表ではなく幹事長という役職に就いていること、堀田、上野と正副議長がともに同一会派に所属するようになったこと、県議選の構図で見れば自民党公認の菅沼陣営から上野、大島議員が、立憲民主党公認の塚本茂樹陣営から堀田、奥村議員が、生田市長が擁立した無所属の藤川人志樹陣営から藤川議員が参加しており、日本維新の会公認の柴田栄一県議が市議を辞める前に同一会派を組んでいた中土議員までもが馳せ参じているという大野合ぶりです。副幹事長なる謎の役職をわざわざ作ったのも県議選で「中立」を守り切った中土議員への報奨でしょうか。
しかも、16人の議会で9人がまとまるという巨大会派の結成なのに、菅沼陣営の加藤元議長、塚本陣営の赤祖父議員には声がかけられていなかったようなのに対して、夫の県議選出馬で会派を追い出された藤川議員には参加を呼びかけるなど、一般市民から見れば、どのような排除の論理が働いて誰と誰とのきずなが大切にされていたのかがよくわからない不思議な動きです(常識で考えてみれば、頭を下げてまでして塚本陣営の厳しい選挙を手伝ってもらった堀田議長は、是が非でも赤祖父議員には同一会派に加入してもらうのが筋であるように思われます)。

今月の9日まで県議選で3陣営に分かれて激しく投票を呼びかけたり布団を被っていたりした議員たちが、その舌の根も乾かず布団も冷えないうちに大野合をしているのです。少なくとも自分たちの呼びかけの結果として県議選で政治的意思表明をした有権者市民との間にきずなを結ぼうとしている動きではなさそうです。
いや、立川記者の厳しいコラムに反応して、2議席しかない県議選で3候補の応援をするという計算が成り立たない離れ業をして死に体となった生田市長であったとしても議員ひとりでは対峙できないため、大きな群れを作ったうえで、塚本県議という最も大切な相方を失ってパイプが詰まった傷心の生田市長の法令違反を問い詰め、市民に対する自分たちの道義的責任を果たそうとしているのであればまだ救いはあるのですが。
しかし、そうであったとしても、衆参補欠選挙で4勝1敗という好成績を残した岸田政権が、5月の広島サミット、6月の子育て支援大幅シフトの骨太方針を引っ提げての衆議院解散、7月の総選挙を断行するのではと噂されているなかで、自民と立民がわざわざ同一会派を組むという尖った政治的センスは、市民の一般常識からは理解が難しいところです。


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