見出し画像

電気事業制度ー矛盾だらけの温暖化政策

 CO2を排出しない発電所が発電する電気は、化石燃料を使用しないということで、非化石電源と定義される。

小売電気事業者は、自社の需要家に販売する電気の供給力について、一定量を非化石電源とすることが義務付けられた。

非化石電源とは何かを考えてみると、水力、太陽光は、いわゆる自然のエネルギーなので、CO2を排出しないことはわかりやすい。しかし、経済産業省は、これに加え、バイオマス発電、地熱発電、そして原子力発電も、実質再エネ、と定義することを決定した。

バイオマス発電は、未利用材の活用ということで再エネと定義されているが、発電タービンを回転させるための蒸気を生成するために、水を沸騰させる熱源が必要で、その熱源として木材などを燃焼させている。火力発電が同様の発電方式で、燃料はガス、石炭、石油である。また、原子力発電も発電方式は同じで、ウランの核分裂反応の際に発生する熱を利用して、蒸気を生成しており、火力発電と同じ発電方式である。

ガス、石炭、石油は、いわゆる化石燃料と定義され、これらを燃焼させるとCO2が排出されるので、地球温暖化問題で槍玉に挙げられるのである。

木材を燃やせばCO2が発生するが、これは、資源のリサイクルということで、再エネということになっている。

資源のリサイクルと言うならば、石炭は、地球の長い歴史で木が炭化したものであるから、石炭火力はバイオマス発電のカテゴリーに入るはず。実際、石炭の炭鉱に行けば、石炭になり損なった、あるいは石炭になる途中の、数億年前の木が石炭に混じって発見されることがある。

原子力が再エネとは、単に、化石燃料を用いない、からだけの背理法論法であろう。その背後には、国策として原子力発電を稼働させたい国の意向がある。原子力発電は、石油、ガス等輸入燃料に依存しない、エネルギー自給率の向上という名目だが、2011年に東京電力福島第一原子力発電所の事故が起き、10年が経過した今も同発電所の安全化策させ見出せてないこと、同発電所周辺地域の復興が進んでいないことからすれば、原子力発電所の稼働にこだわる意義は見出せない。原子力を再エネと定義したが、これは小売電気事業者に課した再エネ調達義務のための手段であって、国民に原子力が再エネであることを訴求する、あるいは国民の理解を得るためであることは、まったく確認できない。正確には、経済産業省は、原子力を「実質再エネ」と定義し、「再エネ」とは異なるもの、とし逃げ道を確保しているが、まさに、国民、消費者不在の議論である。

昨今の電気事業制度改革は、電気が国民生活の基盤であることを完全に忘れ、場当たり的、つきはぎだらけのものになってしまった。矛盾だらけの温暖化防止策からも、その国の無知ぶりがよくわかる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?