斜めのイカール

『斜めにしたイカールの意味』
アラブの装束で頭に冠のように載せる黒いバンドをイカール(عقال)と
呼びます。
このイカールは真っ直ぐに着用するのが王道ですが、
斜めにする人がいます。


これには意味があります。
どんな意味だと思いますか?
「気合が入っている」
「自分の出自を誇りに思っている」

ということです。


イカールを右斜めに傾けるのはシャンマル(شمّر)族出身の印です。
シャンマルはサウジアラビアのハーイル出身の部族ですが、
イラク、シリア、ヨルダン、クウェート、カタール、オマーン
その他の国々に広がるとても大きな部族です。


シャンマル族人は、
لو يميل الوقت و تميل المراجل ؛ ؛ ؛ ما يميل من الشمري إلاّ عقاله
「もし時が傾き、男気が傾くような時も、
シャンマル出身はイカール以外は傾かない」
といい、つまり時にも、どのような風潮や時勢にも流されず、
しっかり自分を保つという、とても誇り高い人たちです。


初めてシャンマルがイカールを右に傾け出したのは、
アサド族との戦いで敵味方を見分けるためだったといわれます。
シャンマルの宿敵の部族はアニザ族(عنزة)。
(Wikiではアニザの複数形アナイザ族と記されています)
アニザ族はイカールを左に傾けます。


イカールを右に傾けるのは長や主人の印、
左に傾げるのは奴隷や下男などの印と言う説もありますが、
両部族の関係を知っていれば、そのような事をいうのは
シャンマル族の言い分だなということがわかりますね。
ファッションで傾ける人もいますが、伊達に部族じゃない者が傾けると
からかわれたりすることがあります。
また傾けるのは戦に向かう時で、傾けの度合いには気合いが現れます。
そこから、「気合を入れて」というのに「イカールを斜めにして」と
いうような言い回しもあります。

画像1


写真は大人気を博したクウェートのベドウィン・ドラマ
『約束〜愛と旅のサーガ(الوعد-ملحمة الحب والرحيل)』の主人公。
イカールが斜めになっていますね。
実在した、アラブの有名な戦士(ファーリス فارس)で
著名な詩人(シャーイル شاعر)でもあり、
人徳が高い事で知られたアル・シラーリ家の部族長(シェイフ شيخ)、
ハラフ・ビン・ドゥアイジャー(خلف بن دعيجا)です。

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