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最近の朝ドラから見た明治民法

『虎に翼』
日本初の女性弁護士で後に裁判官となった一人の女性三淵嘉子をモデルとした主人公の物語。
第1週、「妻の無能力」(現在の制限能力者に相当する無能力者制度に明治民法時代に規定されていた)(民法)に直面して法律の道を志す主人公のシーンがあった。

出所:奥山恭子『明治民法の「妻の無能力」条項と 商業登記たる「妻登記」』2018年

この引用した論文においても、「いわゆる『家制度』の根幹をなすものとして、よく知られているところ」と説かれている。
一方、『虎に翼』でモデルとなる学者が登場する穂積重遠は、特に「妻」を準禁治産者(現在の被保佐人に相当)などと同列の無能力者として扱うことを批判していた(奥山『明治民法の「妻の無能力」条項と 商業登記たる「妻登記」』)。

三淵は後年、「戦前の民法の講義を聴いたときは、法律上の女性の地位があまりにも惨めなもので、じだんだを踏んでくやしがりました」と述べている。
*明治大学サイトにおける三淵の紹介www.meiji.ac.jp/history/meidai_sanmyaku/thema/article/mkmht0000002myit.html

なお、
私は、法曹・司法書士の資格、修士以上の学位を持たず、裁判所、法律事務所、司法書士事務所での勤務経験はなく、特に家族法は素人であることを、ご覧の方々におかれてはご承知いただきたい。

『ブギウギ』

『虎に翼』の前作『ブギウギ』の主人公は、結婚相手の母親(戸主と思われる-父親は故人)の同意が得られないまま相手の健康状態が悪化して、皮肉にも、日本国憲法施行(「家制度」廃止)の昭和22年(1947年)5月に死亡して、未入籍のままとなった(二人の間の娘が同月出生)。
ブギウギ主人公は、史実同様、この娘について死後認知の手続きをとっていない。
参考 https://president.jp/articles/-/78499?page=2
この作品の主人公のモデル笠置シヅ子と同い年の三淵は、1946年に最初の夫が戦病死した後、裁判官採用願を司法省に提出して裁判官を目指しだしていた。

『らんまん』

明治民法の制定された時代は、『ブギウギ』の前作『らんまん』の舞台となっている。
明治民法制定前に最初、フランス民法を手本にしようとした編纂作業の中心人物に箕作麟祥(みつくり・りんしょう)がいたが、民法典論争を経て、別の人物により編纂された明治民法になった経緯がある。

この箕作の従弟・箕作佳吉をモデルにした動物学者が『らんまん』に登場し、東京(帝国)大学で、牧野富太郎をモデルにした主人公がいる植物学教室とからむ場面がある。
で、民法典論争に戻ると、箕作麟祥らが編纂した民法典の施行「延期論」側に、穂積の叔父・穂積八束と牧野と同郷で同じ郷校・名教館で学んだ土方寧(ひじかた・やすしー『らんまん』に該当人物は登場しない)がいた。
穂積八束の「民法出テヽ忠孝亡フ」は高校日本史で学んだ方も少なくないだろう。

https://www.moj.go.jp/content/001381835.pdf
法務省大臣官房司法法制部『法務史料展示室だより』令和2年5月
https://www.moj.go.jp/content/001260426.pdf
法務省大臣官房司法法制部『法史の玉手箱』

なお、『らんまん』主人公は史実同様、自由民権運動で活動していた時期があり、家制度廃止の頃は植物学研究を続けていた。

さて、『虎に翼』
この後、他の法令はどのようなものが出てくるのだろうか、楽しみだ。
第1回冒頭で日本国憲法14条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION#Mp-At_14
が示されたが。



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