バリエーションを巡って YOASOBI「アイドル」
コミュニケーションや運動に大きな制約がある方の主体的な学びの支援を考える中で、いつも頭の中にあるのは「バリエーション」という言葉。
思い返せば物心ついたときから私のおへそはちょっと横にずれていたように思う。「人と同じ」に納得できなかった。何かちょっとアレンジしたい、変えてみたい。そういう衝動が常にあったのかな。
この業界に入ってもそれは大きくは変わっていないと思う。師の後についていくということをしなかった。自分で選んで自分のアタマで考えたかった。
そして現在も、コミュニケーションや運動に大きな制約がある方の主体的な学びのための教材を考える中で耳を引っ張られるように引きずられるのが「バリエーション」。うまく表すことは難しいが、興味深いバリエーションを提示することにエネルギーを注いでみている。そのことが主体的に興味を持つことにつながっているような印象。朧気ながらだけど。ヒトが等しく持っている「プログラム」の発動に関係しているような心象。
主体的な学びのために、常に同年代の方が触れるであろうことや興味を持つであろうことを捉えて、提示して、さらにバリエーションを探して提示することを続けています。「提示する」というのは、コミュニケーションや運動に大きな制約がある方は、自分から情報にアクセスすることが難しいから。
今はアニメ「推しの子」のオープニング主題曲、YOASOBIの「アイドル」を題材に教材を作っている。「推しの子」は2023年の春アニメのひとつで現在放送中。
放送が始まる随分前からネットで(世界中で)話題になっていた作品。ストーリーや作画もだけど、YOASOBIの歌がすごいと。MVは公開1ヶ月で再生回数一億回を超え、ヒットチャートでもダントツの一位の楽曲。
これは早く皆さんに紹介しなくてはと思っていた頃、バスを待っていたら列に並んでいた二人の男の子が頭をくっつけ合ってスマホで「アイドル」を聞いて歌の練習をする場面に出会って、どのくらいバズっているのか実感した。
皆さんには「4月の最新音楽情報」として紹介し(その中でYOASOBIの紹介やYOASOBIの他の楽曲などの紹介も)、次に「アイドル」の聞き取り教材を作ってみた。今までもBTSのButterやNewjeansのDittoの聞き取り教材を作って一緒に聞き取りに主体的な注意を向けて取り組んでいただいていたのだが、今回は日本語の楽曲の聞き取り。
いや、聞き取れないって。ひとつの音にいくつもの言葉が様々なリズムパターンで入っているので何といっているのかがちゃんとわからない。かっこいいことだけよくわかる、という感じ。
英語の歌の楽曲の場合も、何といっているのかが聞き取れるようになると、頭の中で楽曲を再生しやすくなる。「むーむーむー」と音を流す代わりに音が当てはまって聞こえるようになるから。「あ、これも同じだ」と「アイドル」の聞き取り教材を作った。使うのはいつもKeynote。動画をフレーズでカットしてスライドに貼り付けていく。何と言っているのかを音声でゆっくりと提示して(もちろん画面には文字情報も提示)フレーズの動画を再生する。聞こえたかどうか尋ねる。何らかの発信を受け取ったら次のフレーズ。発信がわからなかった場合にはもう一度同じフレーズを再生。その繰り返し。私は相手が主体的な興味を維持しているかどうかだけに注意を向けて見ている。
頭の中でいろいろな楽曲を再生できることが豊かな生活の糧になると考えるからだ。
そして次はバリエーション。ヒット曲の場合、必ず色々なバリエーションがYouTubeに投稿される。NewjeansのDittoだったら、今現在も世界中の若い子が「踊ってみた」動画をアップしている。発信する若者が暮らしている国の多彩なこと。これもバリエーション。
踊ってみた動画を視聴して、その若者の国の地理的情報を付け加えて提示した。これもバリエーション。
ずっと盲ろう教育に携わってきた方の話の中で、「学んだ題材に枝葉をつけていくようなアプローチ」という話を聞いたことがあり、それはバリエーションだと受け止めたっけ。
「アイドル」の場合はヒットの規模がDittoとは異なるので、あっという間に数々のバリエーションがYouTubeに投稿されている。
例えば、有名な高校の吹部が「アイドル」をアップして5日間で27万回再生。
既に複数の「三味線バージョン」がアップされている。
歌ってみた、踊ってみた動画もたーーくさん。中には歌唱力や衣装、ダンスで秀逸なものも少なくない。複数アップされているおヲタ芸バージョンはかっこいい。YouTubeで「アイドル」+「楽器名」で検索すると、色々な楽器での演奏バージョンが既にアップされている。
やっぱりあった。「英語で歌ってみたバージョン」。これらの中からいくつかセレクトしてKeynoteにして、「バリエーションみっけ」とお届けする予定です。
もし、Keynote教材に興味がある方はご連絡くださいね。