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相手を思い通りに動かす!J1 第31節 清水エスパルス-アビスパ福岡

前節、神戸相手に0-2で敗れ、今シーズン初の連勝はまたもお預けとなったエスパルス。今節は最近好調の福岡相手にアウェイで2-1の勝利となりました!失点後は押し込まれたものの、それまでは大きな破綻なく試合を進められていたと思います。やはり先制点を取ると勝ち点を取れる可能性は大幅に上がりますね。気分良く振り返っていきます。試合内容とは関係ないですが、福岡の限定ユニ、鬼滅の刃っぽいね。良い色。

スターティングメンバー

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清水ベンチ:GK 永井 DF 奥井、鈴木(義) MF 竹内、鈴木(唯) FW ディサロ、指宿
福岡ベンチ:GK 山ノ井 DF 湯澤、宮 MF クルークス、田邉 FW 渡、ジョン・マリ

清水はいつもの4-4-2。前節と比べて、LSHがコロリに代わってカルリーニョス、FWが唯人に代わって藤本となった。前節LSHだったコロリはベンチ外。唯人はベンチ。押し出される形で滝がベンチ外。怪我から復帰した鈴木 義宜がベンチに入ることで、立田が2試合連続のベンチ外。

一方の福岡も4-4-2。前節から、CBが宮に代わってドウグラス・グローリ。イエローカードの累積により出場停止となったファンマの代わりにFWにはブルーノ・メンデスが入った。ブルーノ・メンデスは9試合ぶりのスタメン。

前半

序盤にリズムをつかんだのは清水。福岡は清水のビルドアップ時、RSB原にLSH杉本が、RSH西澤にLSB志知がプレスに行くため、西澤が下りてボール受けようとすることで右奥のスペースが空く。そこにFW藤本が移動してボールを受けることで何回か起点を作ることができた。

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清水の左にボールが出た時は、LCB井林に対してRSH金森が外切りをしながらアプローチする。この外切りをかわして左外の高い位置にいる片山にボールを送り、左内のカルリーニョスへ繋ぎ、ドリブルで前進することもできていた。

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また、福岡はディフェンス時、FWもディフェンシブサード(=ゾーン1。ピッチを3分割した時の最も自陣側のゾーン)まで下がる。このため、清水のDFラインは相手陣内まで強気に押し込むことができ、セカンドボールもよく回収できていた。

なお、藤本が右奥のスペースでボールを受けると話をしたが、ずっとそのエリアにいるわけではない。最初は福岡ボランチの(清水から見て)右脇に下りることでDH 前を引き付ける。これにより、清水のDFラインから西澤へのパスコースを作っていた。この辺の、相手を引き付けることで味方にスペースを作るポジショニングが本当に上手い。たぶんエスパルスの中で藤本が一番。

ただ、リズムはつかめどシュートチャンスは作れない。1:28の西澤のFK、3:59の西澤、4:08の原のクロスはどれも味方に合わず、クロスの精度やアイデアに乏しい出来であった。

5:09の西澤のクロスが直接ゴールラインを割った後、5:56~6:35の間は、お互いにボールに激しくアプローチし、攻守が目まぐるしく変わる展開になる。このあたりで、今日の試合は球際をバチバチにやり合う、面白いゲームになる雰囲気を感じる。

10:58 福岡が最終ラインでビルドアップ。福岡の最終ラインは右から奈良、グローリ、志知の3枚。対して清水は、サンタナ、藤本、西澤と同数でプレス。ボールサイドのボランチに対しては松岡が付いていき、パスを出させない。これで西澤はLSB志知からLSH杉本へ出るパスのみに集中できる。

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結果、タッチラインを割ったが西澤がパスカットに成功。仮に通されてもフタができるよう、原も杉本へアプローチしていた。その後も、LCBの位置に入った志知にボールが渡ると、西澤が外(杉本へのコース)を切りながらプレス。中(DH前へのコース)は藤本が切っており、志知はGKまでボールを下げるしかなかった。

12:02 福岡のチャンスシーン。これまでの流れで、左からのビルドアップは手こずると判断したか、今度は右からの攻め。センターサークル付近 中央のエリアでグローリがボールを持つと、右内の奈良へパス。本来であれば、DH前へのコースを藤本が切り、奈良にサンタナがアプローチすべき場面。だが、サンタナが前へのコースを切ろうと下がってしまったため、LSHカルリーニョスが奈良へプレスに行くことに。CBにSHがチェックに行くため、相手SBが空く。当然、奈良からRSBサロモンソンにパス。この時、RSH金森が右外でLSB片山を引っ張り、ドリブルするスペースを作っている。

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サロモンソンにボールが出ると、奈良に出て行ったカルリーニョスが加速してプレスバック。これにより、中にいる前へのパスコースは無くなり、ホナウドは右内にいるメンデスへのパスのみをケアすればよい形になる。しかし、メンデスにボールが出たところで潰すことができず、前に繋がれてしまった。清水としては、パスコースを限定することで狙いを定め、井林とホナウドでサンドしてボールを奪う筋道は立てられていたので、ここで取り切りたかった。

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その後、前は中にボールを運び、左サイドの志知へ展開。志知からのクロスはカルリーニョスがヘッドでクリアするも、セカンドボールを福岡が回収して左から作り直し。左外の杉本が持った際、前が裏へ抜ける動きをする。この動きに原がつられ、後方にポジションを取る。前が裏抜けを途中でやめることで、杉本から前へのパスコースが空いた。杉本→前→杉本→山岸→杉本とワンタッチでパスをつなぎ、杉本がシュート。権田がセーブしてピンチを切り抜けた。ここで失点していたら、星の色が白黒変わっていたかもしれないだけに、権田に助けられた。

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ブロックを作っていたはずなのに、なぜ中に侵入されてシュートを打たれてしまったのか。原が、裏を警戒しすぎて前との距離を必要以上に開けてしまい、開けた後にすぐにポジションを取り直すことができなかった。そのため、杉本から前へのパスコースができ、前に対して松岡が寄せることになり、松岡がいたスペースを山岸と杉本に使われてしまった。

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福岡も、一連の攻撃を始める際に山岸がCBから離れてボランチの間にポジションを取って準備をしており、しっかり練習してきた形なんだろうなと感じさせた。また、山岸が杉本へパスを出す際、ホナウドに当てないように浮き球にしたこと、そのボールを杉本が膝でしっかりコントロールしてシュートを打てる位置にボールを置けたところも良いプレーだった。

これで流れを呼び込んだ福岡が、ここから攻め立て、左右から立て続けにクロスを送る。しかし清水DF陣がこれをしっかりとクリア。また、LSBの片山はサロモンソンにボールが渡ると勢いよく寄せ、クロスの選択肢を削っていた。これにより、福岡は右からのクロスを金森が供給することになり、(サロモンソンに比べて)クロスの精度を落とすことができた。

藤本の献身性も光る。福岡に攻め込まれたらディフェンシブサードまで戻って相手ボランチへのパスをカットしたり、17:26には最終ラインでボールを持ったグローリに猛然とプレス。もう少しでボールを奪えるというシーンを作り出した。相手が下げたボールには、GKまでプレスに行き、チームに対して「前から行くぞ」というメッセージを送り続けた。こうしたプレーで流れを呼び戻す。

19:46に清水のチャンス。右外から原がエリア内にクロスを送る。奈良がジャンプするも、ボールに触れない。奈良が触ってくれると思っていたため、その後ろにいたサロモンソンも準備ができておらず、キーパーの前にボールを落としてしまう。そこをサンタナが押し込もうと飛び込むも、シュートはゴールの上。

21:10 再び清水のチャンス。センターサークル付近 右内のスペースでボールを受けたヴァウドが、対角のロングボールを左外のカルリーニョスへ送る。カルリーニョスはエリアのギリギリ外側からヘディングで中へ繋ぎ、そこに片山が走り込むも合わず、前がクリア。ヴァウドは33:05にも自陣1/2 右外からセンターサークルのカルリーニョスにロングボールを供給していた。この対角のボールを、井林だけでなくヴァウドも蹴られるようになってきたのは本当に大きい。ビルドアップの出口として、どんどんチャレンジしていってほしい。

21:33 センターライン付近での清水のビルドアップ。左外のホナウドから左内の松岡へ。松岡はセンターサークル内のヴァウドへ送り、そこから右外の原へ展開。西澤が中もしくは右内のスペースに位置することでLSH杉本を引き付けており、原にはLSB志知が出てくることになる。志知が出た裏のスペースへ西澤が走るも、原からのボールは志知にカットされた。西澤は、ヴァウドがボールを持った際に「原に出せ」、原がボールを持った際に「裏に出せ」とそれぞれジェスチャーしている。走りにも迷いがないため、狙っていた形だったのだろう。

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直後の21:50には井林から右奥のスペースへ、西澤を走らせるボールを送る。これも繋がりはしなかったが、右から志知の裏を突いた攻撃は序盤から何回もあり、明らかにチームとして狙っていた。

23:27 清水のビルドアップ。最終ラインでボールを左から右へ動かす。原が持った際、西澤がボールを受けに近づく。これまで同様、原には杉本、西澤には志知が付いてくる。原は志知の裏へ走ったサンタナへパスを送り、起点を作った。藤本もMFラインまで下がることで、相手の2ボランチを引きつけている。

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ここで前半の飲水タイム。守備の基準点を明確に作ってきた福岡(杉本は原にボールが入ったらチェック、志知は外のラインに西澤がいたらマンマーク気味にチェック)に対して、自分たちが動くことで相手の陣形を崩し、スペースを作り、ボールを前進させることができていた。杉本のシュートくらいしか怖い場面はなく、ほぼ完ぺきな内容。それだけに、早く先制点がほしい。

前半飲水タイム後

26:08 そんなことを考えていると、飲水タイム後最初のプレーで先制点を奪う。福岡陣内1/2 右からサロモンソンのスローイン。ハーフウェイライン付近で山岸と松岡が競ってボールが左内のサンタナの元へこぼれる。サンタナはワンタッチで中のレーンにいた西澤へパスを送り、ショートカウンター発動。西澤は中央のエリアでドリブルをするも前に寄せられて奪われる。が、前はボールに触れた後、競り合った勢いでグローリと衝突。コントロールする者がいなくなったボールに藤本が反応し、右足でゴールの左へグラウンダーのシュート。村上にはじかれるも、サンタナがしっかりこぼれ球を押し込んでゴール!仮に自分のシュートが防がれても、サンタナが詰められるように(サンタナのいる)ゴールの左側をグラウンダーで狙った藤本の賢い選択が見事。サンタナもバウンドしながら外側に逃げるボールをしっかりゴールの中に蹴り込んでくれた。

早い時間に先制点を取れたことも良かったが、決めたのがサンタナというのも大きい。これで気分を良くしたサンタナは、スピードを上げてプレスに行くようになる。わかりやすい。サンタナにゴールさせるこのサッカーの設計の意図は、単にシュートの確率が高いだけでなく、彼が毎回ゴール後に増す、前線からのプレスの勢いを引き出す狙いがあるのかもしれない。

27:53 ハーフウェイ付近で右内の奈良にボールが入った際の清水のプレス。12:02ではカルリーニョスが奈良へ寄せてしまうことでRSBサロモンソンを使われたが、今回は点を取って乗っているサンタナが奈良にプレスに行ってくれた。このおかげでカルリーニョスは金森を背中で消しつつサロモンソンを見ることができた。その後ろでは片山もサロモンソンへのパスを警戒。サンタナのプレスによって蹴るタイミングを取り直す時間が無くなった奈良が送った浮き球のパスは、そのままゴールラインを割った。

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片山はプレーが切れた後(28:02)に前線の選手に向かってグッドだと合図している。おそらくサンタナに向けたものだろう。28:15に井林、32:11に原、37:19に西澤がそれぞれボールを送るも合わなかった際、サンタナ自身も拍手やグッドサインで応えており、乗っているのがわかる。36:50にはマイボールの判定をした線審の頭をなでることも。お茶目か。

29:55 福岡のビルドアップ。右からの作りがうまくいかなかった福岡は、改めて左からのビルドアップを試みる。LCBに重廣が落ち、志知を左外の高い位置に上げ、LSHの杉本が左内レーン、西澤の脇に位置する。これで西澤に対して、中の杉本か外の志知のどちらのパスコースを切るのか判断を迫る。的を絞れずに福岡に前進されかけるが、藤本のプレスバックで攻撃を止めた。

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また、31:51にロングボールで左サイドから攻め込まれ、中央のスペースを使われそうになった時は、カルリーニョスが全速力で戻って金森の手前でボールをカット。前線の選手の献身的な戻りによって、福岡にリズムを渡さない。

34:07 松岡が山岸をスライディングで倒してしまい、イエローカードを受ける。これで累積4枚目、次節柏戦は出場停止となる。この場面、片山のところで2回マイボールになるチャンスがあったが、パスがずれたり相手に当ててしまったりでボールを落ち着かせられず、フォローに行ったホナウドも外され、嫌な前進のされ方をしていた。カードをもらうことにはなったが、松岡はよく止めてくれたと思う。

その後、LSH杉本が立ち位置を内側にすることで西澤を引き付け、外の志知をフリーにしたり、DH重廣がウイングに近い位置まで上がって前線に人数をかけるなど、福岡は引き続き左からの攻撃を続ける。終盤は清水に危ないパスミスが出かけたりもしたが、松岡とホナウドが集中力高く守り、前半はこのまま終了。一点、48:56のラストプレーは、中継で見る限りCKだと思ったが、GK判定だったのか、CK判定だったけどやらせてもらえなかったのか気になるところ。

後半

福岡は後半頭からメンデスに代えて渡を投入。同じFWの位置に入る。清水は選手交代なし。

福岡は引き続き左からの攻撃が多い。志知、杉本だけでなく、渡や前が絡むことで人数をかけてサイドを攻め立てる。もう一枚のFW山岸とRSH金森を中央に置くことで渡がサイドに流れた際も中の人数を確保する。また、右からの攻撃自体は少ないが、清水のMFラインが戻り切る前にサロモンソンが素早く清水のDF-MFラインの間にいるFW(渡や山岸)にパスを入れてそこからのコンビネーションでの打開を狙っていた。

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47:42 そんな中、清水に追加点が入る。ハーフウェイライン付近 右から原のスローイン。右外のエリアでサンタナがグローリを背負いながらもボールを受け、藤本へパス。藤本もワントラップからサンタナへリターン。サンタナと前がボールをつつき合った結果、右外の西澤のもとにボールが流れる。西澤はワンタッチで中へ浮き球のクロスを供給。走り込んだカルリーニョスがダイレクトで蹴り込み、ゴール!後半早々に追加点を手にする。走り込んでしっかり枠内に蹴り込んだカルリーニョスも素晴らしかったが、ダイレクトでクロスを送った西澤の判断とそのクロスの質が最高だった。

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失点した福岡は、さらに攻め込む。特にフレッシュな渡が、サイドに流れてボールを受けたり、前線から全力でチェイスするなど、流れを呼び込もうとしてくる。清水はホナウドを中心にしっかりと攻撃の芽を摘みつつ、相手のビルドアップのパスミスを付いてカウンターを狙っていく。

福岡は徐々に、いったん右に運んで清水を右側に引き付けたうえで、最終ラインの奈良から左外の志知にボールを送る形を増やしていく。サイドに流れていた渡含め、FW、SH、ボランチが中央のエリアに寄ることで、西澤や原を中に絞らせる。そうでなくてもボールと逆サイドの大外は、ゾーンで守る清水としては捨てているエリアのため、的確な攻略法といえる。

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すると、57:45にはその左への展開から、左内の杉本がエリア内に低いクロスを供給。これを渡が落とし、山岸がシュート。ヴァウドに当たってディフレクションしたボールがゴールポストの左をかすめた。

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12:02の時と同様、この場面でも原が裏抜けの選手(志知)に寄ることで本来マークすべき選手(杉本)を自由にさせてしまった。ただこの場面では、西澤が志知に完全に前に入られてしまったため、一番危険なエリアを消すために志知に寄るのは仕方がないか。原は、西澤の守備を信頼していないというか、抜かれる・もしくは振り切られた時のことを考え、ケアしやすいようなポジションを取っている気がする。

59:54 立て続けに福岡がチャンスを作る。片山がクリアに近い形でロングボールを前線に送る。カルリーニョスが追うも奈良に跳ね返され、サロモンソンへ繋がり、そこからハーフウェイライン付近でフリーの前へパスが入る。前がフリーになった理由はサンタナの帰陣遅れ。重廣がサロモンソンからボールを受けるため右外に寄ることで、結果的にマークしていた松岡を中央のエリアから引きずり出し、MFラインを広げることに成功。そこに前が山岸にびしっと縦パスを入れ、中を割る。山岸は振り向きざまに渡にパス。渡はマークに来たヴァウドをシュートフェイントでかわすが、ボールが大きくなったところをヴァウドが回収。清水としては助かった。

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前から山岸へのパスコースはホナウドが消してほしいと思ったが、ホナウドは渡へのパスコースを切っていた。ゴールに一番近いが、DFがマークできている相手FW1(渡)と、ゴールへの距離は2番目だが、DF-MFラインでフリーの相手FW2(山岸)。どちらのコースを切るのが正解なのだろうか。私にはわからない。

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61:30 両チーム選手交代。清水は藤本に代わってディサロ。藤本はそれまで問題なく動いていたように見えたが、交代時は担架に乗せられてピッチを後にした。清水としては、危険なシーンをいくつか作られたものの、大きな破綻なくゲームを進められていたため、できれば今のメンバーで長い時間を戦いたかった。
福岡は一気に3枚替え。RSH金森に代えてクルークス。DH重廣に代えて田邉。FW山岸に代えてジョン・マリ。3人とも、OUTした選手と同じポジションに入った。

62:46 福岡の交代選手がさっそくチャンスを作る。センターサークル付近でボールを持ったホナウドに後ろからジョン・マリがプレス。こぼれたところを渡が拾ってカウンター発動。渡は少しドリブルで運んでから右外のクルークスへ。クルークスは得意の左足に持ち替えてエリア内にクロス。ジョン・マリは中央からファーに走る。ニアの渡はスルー。ジョン・マリが空けた中央のエリアに田邉が入ってボールをトラップするも、ヴァウドが寄せてタッチラインへクリアした。攻撃に絡んだ4人とも途中出場の選手であり、この辺りはチームとして作り込まれているのを感じる。ちなみにこのシーン、ホナウドが奪われた瞬間の片山の全力の戻りが素晴らしいのでぜひ見返してほしい。

63:38にも福岡の攻撃。右サイドで清水のスローインをマイボールにすると、クルークスから素早く最終ラインのグローリへ。グローリは1トラップしてすぐに中央の杉本へ縦パスを差し込み、杉本のシュートに繋がった。59:54のシーン同様、ここでも中を割られてしまった。

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西澤が自身右へ開く志知につられてラインを広げ、一番閉じたい中央のパスコースを誰も消せていなかったのが原因。グローリがボールを持った際、志知はグローリに対して、「俺が西澤を引き付けるから中の杉本へパスを出せ」と手で指示をしており、狙い通りとなる。ここでは西澤は、志知だけでなく、自身の背後の状況を一瞬でも見ておくべきだった。それができていたら、優先度の高い中を締めることができたはず。

清水も防戦一方ではない。64:31に相手のクリアボールを中央やや右で拾った松岡が中へドリブル。カルリーニョスとのワンツーから左足で強烈なミドルシュートを放つ。バーに当たった跳ね返りをディサロが押し込むも、オフサイドの判定。松岡は右利きのはずだが、左足であのシュートが打てるのはすごい。

しかし、福岡がボールを持つ展開が続く。清水はマイボールになっても、福岡陣内でディサロやカルリーニョスがキープできない。67:39には再びクルークスが右外から左足でエリア内にクロス。中でジョン・マリがトラップするも、井林とヴァウドでサンドし、ヴァウドがタッチラインに逃げる。この後、エリア内での混戦から渡にヘディングでシュートを打たれるも、権田の正面。

69:03には清水のチャンス。相手最終ラインからのロングボールをハーフウェイライン付近でホナウドが競り、ボールは右外の原の元へ転がる。原はダイレクトで右内レーン、DF-MF間にポジションを取っていたディサロへ縦パスを入れる。ディサロは中へドリブル。中のサンタナがニアに走ることで奈良を引っ張る。空いたスペースにカルリーニョスが走り込み、ディサロからパスが入るも、シュートには繋げられない。

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フィニッシュまでいけなかった要因として、ディサロからカルリーニョスへのパスが弱く、RSBサロモンソンがカルリーニョスの前まで戻ってくる時間を与えてしまったのが一つあるかと。あそこは左足のアウトサイドではなく、丁寧に右足のインサイドで早いパスを出したかったところ。

そして後半の飲水タイムに入る。両チームともチャンスはあったが、ペナルティエリアの中に侵入する回数は福岡の方が圧倒的に多く、それを清水がなんとか耐えているという印象。早々に2点目を入れておいて本当に良かった。

後半飲水タイム後

飲水タイム明けは両チーム選手交代なし。

72:00 清水の選手交代。カルリーニョスに代えて唯人を投入。飲水タイム明けではなく、1プレーさせた理由は不明。唯人はカルリーニョスと同じLSHに入る。カルリーニョスは試合開始から守備に走り回っており、そろそろスタミナが不安。クルークスに片山が手を焼いていることからも、左サイドにフレッシュな選手を入れてケアしたいという意図を感じる交代だ。

73:14 福岡は右サイドでクルークスが右足でクロス。中で田邉がフリーで合わせるもヘディングは枠の上。クルークスには片山と唯人の二人がかりで対応し、得意の左足で上げさせないようにしている。

対する清水も73:52に相手のロングボールを片山が跳ね返し、唯人が絶妙なトラップでボールコントロールし、対面のサロモンソンを交わして左外レーンをドリブル、ディサロのシュートに繋げた。村上がはじいたコースがもう少し内側だったらサンタナが詰めることができたはず。惜しい、もう少し。

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75:06にも清水のチャンス。清水陣内深い位置でスローインを受けた田邉からホナウドがボールを奪取してサンタナへパス。サンタナは中央やや右側で裏へ走るディサロへ絶妙なロングボール。ディサロはグローリと1対1になるも自ら仕掛けることはせず、上がってきた西澤へ。西澤はシュートを選択するも、グローリにブロックされる。西澤にグローリがいくらか引っ張られてくれたら、ディサロが自分で打っただろうが、グローリはあくまでディサロのマークを外さなかったため、西澤を使うことにしたのだろう。しかし、この辺りで3点目を取れないところが、この後のゲームを難しくしてしまう。

福岡が選手交代。サロモンソンから湯澤を投入。同じRSBに入る。中継で解説の中払氏も言っていたが、右サイドからのクロスはクルークスが上げてくれているので、役割の被るサロモンソンを下げた形。個人的には、73:52のプレーで唯人にあっさりとかわされたのも気になったのかなと感じた。福岡の選手交代は5人とも同ポジションの選手同士の交代となった。また、途中でフォーメーションを変えることもしない。他の試合を見ていないので断定はできないが、徹底的にこの形(4-4-2)で勝てるように練習をしているのかなと感じる。

79:20 失点シーン。GK村上からのビルドアップ。左→中→右→左と左右に振られ、エリア内左でジョン・マリが受ける。ジョン・マリはエリア外の前にいったんボールを下げ、前から左外の志知へ。志知からのダイレクトのクロスを中のジョン・マリが合わせてゴール。

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志知のクロスも最高だったが、左右に揺さぶることで守備側の頭を疲れさせる。また、すぐに外を使うのではなく、一度バイタルにいる前を使うことで原、西澤をより真ん中に寄せて志知をフリーにしている。志知は時間だけでなく、よりゴールに近い位置(外側レーンのかなり内寄り)にポジションを取ることができ、精度の高いクロスに繋がった。志知も、左サイドから左足でのクロスになるため、普通はアウトスイングになるところだが、(彼のセンスなのか練習でやってきた形なのかわからないが)ストレートの弾道にしたことで、ブロックに行った原も体に当てることができなかった。(アウトスイングなら、しっかりとブロックできるコースに入っていたように見える)

ただ、清水はフィールドプレイヤーがエリア内に8人(唯人は逆サイドにいるから数えないとしても7人)。それに対して福岡はわずか2人しかない。この、超数的優位な状況にもかかわらず点を決められてしまうのを見るに、ゾーンディフェンスはピンポイントクロスにつくづく無力だなと感じてしまう。相手のクロスの精度を下げさせる方向に進むしかない。そのためにも、相手への寄せをより早め、より近くまで寄せることが必要。

1点差になったことで、ここから福岡の鬼の攻撃が始まる。

81:55 グローリのロングボールをジョン・マリが落とし、拾った渡がヴァウドをかわしてシュートを狙うも、原が肩をぶつけることで渡の体勢を崩して枠に飛ばさせない。

83:42 右からのスローインを細かく繋いでエリア中央の渡がシュートを打つも井林とヴァウドが2枚でブロック。

84:28 クルークスの左からのCKを渡が頭で合わせるも権田がキャッチ。

85:05 右サイドにいたクルークスからジョン・マリへのスルーパスを片山がスライディングでカットするも、こぼれ球を拾った渡が原をシュートフェイントでかわしてシュートも枠外。

86:51 清水が選手交代。西澤に代えて奥井。ホナウドに代えて竹内。原に代えて鈴木 義宜を投入。システムを5-3-2にする。最終ラインは右から、奥井、ヴァウド、井林、鈴木(義)、片山。MFラインは右からディサロ、松岡、竹内。FWにサンタナと唯人という布陣。

このフォーメーションの変更が功を奏し、清水のピンチは飛躍的に減った。この後打たれたシュートは、エリア外からのジョン・マリのミドルとラストプレーの奈良のヘディングのわずか2本。後ろのスペースを埋めることで、相手に地上戦ではなく低い位置からのロングボールを選択させたことも良かった。清水としては、渡にドリブルされた方が嫌だったはず。

95:39 ラストプレー。ヴァウドがファウルして与えたFK。クルークスが左足でアウトスイングのボールをファーサイドに送り、ジョン・マリが折り返したところに奈良が飛び込むもヘディングは枠外で試合終了。リードしている後半アディショナルタイムに嫌な位置でヴァウドがファウルするだなんて、ホーム福岡戦の悪夢再来かと思ったが、何とか耐えきった。試合結果は2-1。清水が競り勝った。

トピックス

◆カルリーニョス
怪我から復帰後数試合は体の重さが見られたが、今節は完全に復調。ゴールを決めたのも素晴らしいが、守備時にサボらず全力でスライドを続け、逆サイドにボールがあるときもきちんと中まで絞ってくれるのが本当に大きい。寄せる際もしっかりと相手との距離を詰めるので、クロスをブロックしたり(みぞおちに当たったのが痛そうだった)、精度を落としたりしていた。また、清水の右サイドから攻撃されている際に、ペナルティアーク付近までしっかりと絞ってくれることで、クロスを跳ね返してくれた。カルリーニョスが絞ることで、ホナウドも中を気にせずボールサイドに寄っていくことができる。チームとして好循環を生んでいた。今節のプレーぶりを見ると、LSHはカルリーニョス一択。

◆西澤
この試合では2点目をアシストした。それはもう数字に残る活躍をしたのだから見事だが、攻撃時にもう少し強くなってほしい。
・プレッシャーのきつい中央でボールを持った時に相手に奪われない。
・CKやFKを味方に合わせる。
・ドリブルからのクロスをしっかり中の味方に合わせる。
・フリーで受けたら、クロスはブロックに来た相手に当てない。
・↑そのためにも、正確に1トラップで自分が蹴りたいタイミングで蹴れる位置にボールを置けるようになる。
欲張りかもしれないが、これくらいのことを期待してしまう。
正直、アシスト以外にクロスは1本も味方に合っていなかった。このチーム戦術ではサイドハーフの運動量がえぐいので、求めすぎているのも事実だが、反対サイドのカルリーニョスのボールキープを見てしまうと、西澤にももっとやれるようになってほしいと望んでしまう。仙台、神戸戦と続けてトピックコーナーに西澤の名前を挙げるほど最近気になっている選手であり、もっと強くなることを期待している。頭の良い選手なので、通用していないところと、どうすればいいかは理解できているはず。きっともっとうまくなってくれる。

おわりに

85:05に渡がシュートフェイントで原をかわしたとき、ラストプレーでジョン・マリに折り返されたとき、どちらも心臓が止まるかと思いましたが、何とか勝ってよかったです。終盤押し込まれたせいで印象があまりよくないかもしれませんが、全体を通してみると、清水が準備してきた形を出すことができ、長い時間試合をコントロールできていたと思います。

個人的には、疲れの見えていた右サイド(特に西澤)をもっと早くに代えてほしかったところですが、藤本のアクシデントで交代回数を1回使ってしまったのが響いたかなと。鈴木(義)を入れて5バックにするのはアディショナルタイムを入れてラスト10分くらいと考えていたと思います(あまり早くに5バックにしてもサンドバックになるため)。藤本、カルリーニョスで2回交代を使ってしまったため、右サイドの修復と5バック移行を同時にやらなければいけなくなり、結果としてあの時間帯になったのだと考えます。

試合後に権田も言っていましたが、この試合は球際でガツガツやりあっており、見ていて楽しかったです。かわされてブロックに穴が空くことがタブーの守備戦術ですが、寄せるべきところでしっかり寄せればボールを奪えます(この試合で言えば、特にホナウドが素晴らしかった)。
以下、権田選手の試合後コメント。

福岡は好調だということもあるが、良いチームだと思った。一人ひとりが戦っているし、全員が自分の仕事をやっていた。自分たちのサッカーはそういうところがベースにあるんだというところを思い出させてくれたし、そういう相手に負けないために、その部分にこだわっていたので、良いきっかけを与えてもらった試合だと思う。

次節は勝ち点34の柏が相手。勝ち点32の清水からすると、ぜひ勝利して順位を入れ替えたいところ。中盤の要である松岡が出場停止で出られず、藤本やホナウドも怪我の状態が心配されますが、幸い2週間間が空くので、リカバリーが間に合うことを祈ります。また、仮に彼らが出られなくても、チーム全体として今日のようなアグレッシブな守備・素早い攻から守への切り替えができれば自然と勝ちに近づくはず。期待して次節を待ちます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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