見出し画像

ミュージカル「チェーザレ」

2020年幻の公演となってしまったチェーザレ、私としては初めての明治座だったこともあり公演中止が発表された時はやはりショックでした。今回また新たに上演されたこと、観劇出来たことを嬉しく思います。
観劇したてのホヤホヤな感想を綴っていきます。

まず私には内容がかなり難しく…役名も覚えられない程だったのですが、序盤でアンジェロが「何も分からずこの大学に入った」おかげで作品の中で役が説明をしてくれたことがありがたかったです。年代と場所を表示してくれたこともあって、アンジェロと一緒分かっていく感がありました。

まあ私はそれでも全員の役を覚えられず、全体像も掴めずだったので、私がよかったなぁと思った場面とセリフを順不同で繋ぎ合わせていきます。


学位試験の場面で生徒が「キリスト教では"与えなさい"というが、銀行がお金を"貸す"のはキリストの教えに背いていないか?」と聞かれ、「いいえ、人が生活をするにはお金が必要です。その生活を与えていると思います」
「銀行は利子を乗せている、その利子は銀行のための儲けだが?」「人の生活は慎ましいものだけではありません。芸術に触れ、豊かな心を持つことで与えることができます」みたいなセリフが少し前の工場建設の場面と繋がっているように思えました。
貧困層が集まり住んでいる場所。飢えに苦しみ、教会から渡される残飯を受け取って生活している人々を見て、アンジェロが「どうして教会はこの人達を救わないのですか?」と聞く。チェーザレは「地獄がなくなると人は地獄を信じなくなる。だから地獄の存在が教会には必要。この人達は教会から渡される残飯をありがたく受け取り、祈っている」と。2幕から工場建設が始まり、アンジェロは貧しい人々を建設現場で働かせて住まいと仕事を提供。自分は親戚の家で育てられたから「家族」という感じはなかったけど、その親戚が職人だったからこういう現場仕事は身についている、とのこと。

チェーザレとアンジェロは最初「この馬泥棒め!」「馬泥棒じゃないですよ!」という出会い方なんだけど、アンジェロという天使の名を持つ不思議な青年をチェーザレはなんやかんやでずっと気にかけて、気に入ったいる様子でした。アンジェロが「この壊れたマリア像直せますよ」と言い、その生い立ちと技術を聞いて「自分が後ろ盾になる」と工場建設を任せてサポートする。

最後にチェーザレが「祈るだけでは利用されてしまう、自分が強くなれ」と歌うんだけど、チェーザレ自身が父親から「私の皇帝」と言われ権力者になる英才教育を受けてきたと言う。それは周りに回って父親のためにされた教育の様に聞こえた。

チェーザレは、君主制上等!喧嘩も上等!のアンリと喧嘩できる程力が強く、権力者から目をつけられてもかわせる程頭の頭の回転も良い。権力者から「チェーザレを殺せ」と命じられている役からも「君は友人だから殺せない」と言われるくらいの人柄。

側でチェーザレの護衛?をしていたミゲルはユダヤの家系とのこと。権力者から指示された裏切り者が死に際に「自分は利用されることしかできない。成果を出しても向こうは対等と思っていない、ミゲルなら分かるだろ?」とミゲルに話す。ミゲルは「チェーザレは貴族だからすごいんじゃない、それを君は生涯分からないと思う」と話し、裏切り者は「俺の生涯はもう終わる」と息を引き取る。

「王座はただひとつ」とかつて皇帝だったハインリッヒが座っていた椅子、「その椅子に座るのはチェーザレ」と歌われたチェーザレ。真の指導者とは何か、上に立つ者とはどういう人か。という内容だったかなと思います。

私の中のミュージカル世界史だと「聖職者」より「皇帝」「王室」が断然強いイメージなんだけど、1400年代という超昔でローマとなると、聖職者達の権力や先導力は強かったんじゃないかと思う。

志強く立ち向かうことだけが力ではないなとも思いました。アンジェロが「マリア像を直せる技術」を持っていたからチェーザレという後ろ盾ができたように、苦労話でもなくアピールでもない、この「ただ出来る」は案外強いなと思いました。役の素直さとひた向きさも素敵で名の通り天使でした。


役がみんな男!というのも面白かったです。男だけでもこんなに揉めるんだなと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?