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個展「西成」までの手記 その2
個展まで思ってることや展示の進捗などを書いていくシリーズその2です。
その1は下のリンクからからぜひ↓↓↓
「個展をやる」と宣言したのは去年の9月だった。それから個展をやるために必死に写真を撮り続けてきた、と書きたいところだけど、何のテーマで個展をするのかイマイチ決まらず、だんだん何を撮っていいのか分からない、何を展示したらいいものになるのか分からない…とモチベが迷子になることが多かった。
とは言ってもなんだかんだ写真は撮っていて、その時その時の気分で写真をまとめてはZINEを作り続けてきた。ZINE自体はコンビニでペッと印刷できるものが多く、また、大きな柱になるようなテーマがあったわけではない。でもそうやって毎月自分の写真を見返しながらZINEを作っていると、だんだん自分の中で西成の写真の存在が大きくなっていた。(ちなみに今まで西成の写真だけは売りに出していなかった)
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そんなとき、お世話になってる人から「ZINEを作るノリで個展もやったら?」と声をかけてもらった。人が来てくれるか分からない、大金をかけられるわけでもない、やらない言い訳ばかり考えていたところだった。
そういえばZINEにしても最初は数人しか手にとってもらえず、しかし続けていたら30冊売れたものもある(地元佐賀で撮った写真をまとめたZINE「REP」)。また金銭面にしても、探すと1日単位でレンタルできるところも多く、そうなってくると、だんだんやらない理由を探す方が難しくなってくる。
まずは「個展をやる」というハードルを越えよう。そう思ってからは早かった。西成の写真は個展できるものにはなるだろうし、簡易的なポートフォリオを持ってギャラリーにアポを取った。展示していいか微妙なラインの写真も少しあったけど、嬉しいことに作品として認めてもらいすんなり会場が決まった。
またDMのタイトルは「擬態」に引き続き姉に依頼。翌日には候補となる書を送ってもらい、友人たちに意見をもらいながらすぐにデザインが決まった。本当にありがたいことで、周りの人に恵まれてることを実感する。
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DMデザインができたらすぐにTwitter、あ、いや、Xで告知。いろんな反響があった。めちゃくちゃ嬉しいし、同時に背筋が伸びる思いで今はその準備に忙しくしているところです。
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さて8月8日。西成に行った。
何人かが酒盛りをしてる。若い兄ちゃんふたりもいたので、一緒になってみる。
新幹線で帰るんよ~と言うおばちゃんからなんか飲む?と聞かれ、酒を飲むとどうも自制がききにくくなるタイプなので断って、夏のお供ことダカラを飲みながらいろいろ話を聞いた。
おばちゃんは自分のことは多くは語らなかった。何回も説明したからもうええわ~と陽気に返しながら、時たま昔のことを話すときは、今の優しさや陽気さがその裏返しなのかなと思わせるものがあった。
ヤマちゃんという黒髪ふさふさのおじさんがちょうど72歳の誕生日とのことで、そのパーティーだそう。ママは岡山から来たんや、岡山言うとあれや、ほら、そうそう桃太郎や、桃太郎言うと桃が流れてくるやろ、でもな、あれはさつまいもや思うてんねん。なんだかよく分からないが、おっちゃんは誕生日でゴキゲンだった。あんたならやれる!という根拠のない励ましは、どこか心地よく胸に響いたりもした。
隣にいた口数の少ないおじさんは、防衛大学を出てずっと自衛隊を勤めあげ今は年金で暮らしてるそう。「労働者の街」として表現されることも多い西成だけど、そういった経歴がある人ものんびり過ごしてるのがいいところだと思う。あいつらうるさいなぁと笑うその口に歯は少なかった。
天からの精霊だと名乗る兄ちゃんも来た。陽気なギラギラなグラサンと真っ赤なハットを被って、海外に行くとええぞ、富士山もいい、霊山やからな、パワーがある。俺にもオーラがあるやろ、兄ちゃん分かるか?悟りっちゅうのは難しいけど、難しいと思ったらあかん、案外手元にあるもんや、難しく考えたらあかんで。そんなことを高らかに喋りながら颯爽と帰っていった。
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俺もその場を離れ、この前喋ったおじさんに挨拶をする。すると以前話題にあがった酒を飲ませるおじさんに捕まってしまい、酒を飲むことになった。正直何を喋ってるのかイマイチわからんのだけど、やっぱり酒は一人で飲むより二人で飲む、二人で飲むより三人で飲む方が美味いってことだろうか、憎めない人たらしが多くてそういうのも楽しさのひとつ。
セグウェイみたいなものに乗った少年が通るたびに妹もおんねん、それが上手いんやと何度も教えてもらった。ほんでな、あっちは怖い、人がちゃうんや、と西成の三角公園の中でもそれとなくグループがあるらしい。たしかに歩いていてもなんとなく雰囲気が違う感じはしてて、おじさん間でもみんながみんな仲がいいわけではないという当たり前のことに気づかされたりする。
酒を飲んでるとまたおじさんがやってきて、お父さんも酒飲みや、俺は飲まへんねん、コーヒーや、と話し始める。そういえば俺は西成の老人男性を「おっちゃん」とか「おじさん」だとか呼んでるんだけど、「お父さん」と呼ぶのはなんか新鮮で、やっぱり親しい間ではもっと近しい呼称になるんやなーなどと思いながら聞いていた。
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しばらく一緒に酒を飲んで、またその場を離れる。もう日が落ちてきて涼しい頃合い。デカやろ!と言ってくるおじさんがいる。そんなわけないじゃないですかとか返しながら雑談してると、俺はハルカスの屋上に住んでんねんとか言って嘘やで嘘!と大笑い。コミュニケーションに嘘も本当もなくて、ただ一緒にいて言葉をかわすだけがある。そんな感じ。
そういえば今の西成は若い人もちょくちょくいる。まぁ俺もその一人ではあるんだけど。岸和田からやってきて、もう四軒目まで行ってきたところだという5人組の兄ちゃんたち。写真撮らせてもらっていいですか?というと、やっぱりというかなんというか「え、アノニマスちゃうん?」との返事。まぁ酔っ払い同士なので笑いながら写真を撮ってインスタを交換した。
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個展をやることになって写真へのモチベーションが上がって西成に来てるんだけど、今までとは少し心境が変わってるのか最近はコミュニケーションの方が多い感じ。展示写真への焦りよりも、ここ西成の写真を展示するということがどういうことなのかを自分の中で整理する時間を過ごしてるという意味合いの方が大きいのかもしれない。
まとまったことはまたいつか書くとして、今回はこんなところでまた。
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鷲﨑雄一写真展「西成」展示情報
会期:9/16,17
会場:アートギャラリー ヒルズワン (大阪府豊中市本町6-1-1 2F 阪急宝塚線「豊中駅」から徒歩8分)
※入場無料
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