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適量ないと困る微量ミネラル

ミネラルは、私たちの体に必須な栄養素の一つです。ミネラルには、大量ミネラルと微量ミネラルの2種類があります。微量ミネラルは、その名の通り、わずかな量で私たちの体の機能を正常に保つために必要な栄養素です。私たちの体が正常に機能するためには、適切な量の微量ミネラルが必要です。

【微量ミネラルと他のミネラルの違い】


食物には、体に必要な成分が含まれています。その中でも、炭水化物、タンパク質、脂質は3大栄養素と呼ばれています。さらに、ビタミンとミネラルを加えると、5大栄養素となります。

私たちの体に必要なミネラルは、16種類存在します。それらは、1日に摂取すべき量によって「主要ミネラル(多量ミネラル)」と「微量ミネラル」に分類されます。例えば、主要ミネラルにはカルシウム、リン、イオウ、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、塩素の7種類があります。また、微量ミネラルには鉄、ヨウ素、亜鉛、銅、セレン、マンガン、コバルト、モリブデン、クロムの9種類が含まれます。

厚生労働省が作成した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、主要ミネラルの一つであるカルシウムの一日摂取量は、成人男性では650~800mg、成人女性では650mgが推奨されています。一方、微量ミネラルの一つである鉄の摂取量は、成人男性では7.0~7.5mg、成人女性では月経がない場合は6.0mg、月経がある場合は10.5mgが推奨されています。また、モリブデンの摂取量は成人男女ともに20~25μgと非常に少量です。

微量ミネラルはわずかしか含まれていませんが、それぞれが異なる働きを持ち、私たちの身体の正常な機能に貢献しています。

特に女性にとって注意が必要な微量ミネラルは鉄です。月経によって血液が失われるため、貧血になりやすいことはお分かりかと思います。そして、貧血の中でも最も一般的なのは鉄欠乏による貧血です。鉄が不足すると、無力感や食欲不振などの症状が現れることがあります。

鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」という2つの形態があります。動物性食品のレバーや肉、魚に豊富に含まれるヘム鉄は、卵や野菜、海藻などの植物性食品に含まれる非ヘム鉄よりも体内への吸収率が高いため、食事が植物性食品に偏らないようにすることが重要です。

通常の食事では健康な人が鉄の過剰摂取を心配する必要はありませんが、サプリメントや鉄製剤を適切に使用しないと過剰摂取になる可能性があります。

【銅やコバルトも体内にある】

銅やコバルトは、一般的には金属や元素として知られていますが、私たちの身体にも存在しており、鉄と共に血液を作るための重要な役割を果たしています。

銅は、鉄を取り込んだり貯蔵したりする役割の他にも、骨髄でヘモグロビンを作り出すのにも重要です。したがって、銅の不足は貧血や成長の障害などを引き起こす可能性がありますが、通常の食事を摂っていれば銅不足になることはありません。ただし、大量の亜鉛を摂取してしまうと、銅の吸収が妨げられる可能性があるという意見もありますので、亜鉛の摂り過ぎには注意が必要です。

ビタミンB12には、赤血球やヘモグロビンの生成に関与する鉄の吸収を促進する成分としてコバルトが含まれています。コバルトは、主に動物性食品に多く含まれており、一部の食品(例えば納豆やもやし)を除いた植物性食品にはほとんど含まれていません。しかし、健康な人々が通常の食生活を送っている限り、コバルトの欠乏症や過剰症はほとんど起こらないとされています。したがって、貧血を治すためには単に鉄を摂取するだけでは十分ではないことがわかります。実際、鉄剤を補充しても貧血が改善されなかったケースがあり、それによりコバルトが必須のミネラルであると考えられるようになりました。また、ある栄養素は他の栄養素の吸収を促進または阻害することがあるため、偏った食事をせずにバランスの取れた食事を摂ることが重要です。したがって、動物性食品と植物性食品の両方を摂取することがおすすめです。

【亜鉛不足が招くトラブル】

亜鉛は微量ミネラルの一種であり、適切な発育や成長、インスリンの合成に不可欠です。さらに、亜鉛は皮膚の代謝や糖の代謝、免疫機能にも関与しています。亜鉛の欠乏は、味覚障害、皮膚炎、食欲不振、免疫機能の低下などを引き起こす可能性があります。

亜鉛は牡蠣をはじめ、肉類、魚介類、豆類、種実類、穀物など多くの食品に含まれています。味噌にも多くの亜鉛が含まれているため、塩分を過剰摂取しないように注意しながら、味噌を料理に活用することも一つの方法です。これらの亜鉛を含む食材を摂取しても、通常の食事だけでは亜鉛が過剰になることはありません。ただし、亜鉛をサプリメントとして継続的に過剰摂取すると、胃の障害や免疫の問題、神経症状が現れる可能性があります。さらに、亜鉛の過剰摂取は銅や鉄の吸収を妨げることがありますので注意が必要です。

セレンは、亜体内の過酸化物質から細胞を保護する役割を果たします。具体的には、セレンは強力な抗酸化作用を持つ酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼの一部として機能しています。セレンは体内で容易に吸収されるため、欠乏の心配はほとんどありません。ただし、土壌中のセレンの量が低い地域では、克山病(心筋症)やカシン・ベック症(関節症の一種)などの症状が見られ、これらの症状とセレンの欠乏との関連性が指摘されています。中国北東部やシベリアの一部地域、ニュージーランドなどの地域が該当しますが、日本でも類似の症例が報告されているため、十分な注意が必要です。セレン自体は毒性が強いとされているため、サプリメントなどで過剰に摂取することはリスクを伴います。過剰摂取により脱毛や爪の変形、胃腸障害、神経障害、心筋梗塞などが発生する可能性があるため、適切な摂取量を守ることが重要です。

【ほかの微量ミネラル】

これまでに取り上げた成分以外のミネラル、マンガン、モリブデン、クロムについては、一般的な食事を摂っている健康な人には欠乏症や過剰症がほとんど見られないと考えられています。ただし、ヨウ素は例外です。日本人の食生活では海藻など、ヨウ素を多く含む食品を摂取する機会が多いです。そのため、海藻を過剰に摂り続ける場合などには、甲状腺の機能低下や甲状腺腫の発症が報告されています。また、ヨウ素が不足していると甲状腺の機能低下だけでなく、妊娠中に不足すると死産や流産、胎児の先天異常などにつながる可能性があるため、注意が必要です。

マンガンは酵素の働きを支援するために必要不可欠です。マンガンは、マンガンスーパーオキシドジスムターゼなどの酵素の構成成分として機能し、抗酸化作用に関与しているだけでなく、骨の代謝や糖や脂質の代謝にも関与しています。

モリブデンは、いくつかの酵素の構成成分として存在し、糖や脂質の代謝に関与しています。また、体内で尿酸を生成するために必要な酵素の働きをサポートしていると言われています。

クロムは、インスリンの働きを活性化させる役割を果たし、糖質やコレステロール、たんぱく質の代謝にも関与していると言われています。ただし、糖の代謝に関する作用は、クロム以外の要因によるものとも言われています。

これらの微量ミネラルは、わずかな量でも体に必要な栄養素です。食事のバランスを重視することの重要性を理解しておきましょう。

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