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黒鍵の音を入れておしゃれにしたい

作曲を初めて最初の頃、楽譜が簡単なハ長調の曲ばかり作っていた。(今でも多いけれど) いきおい、メロディーは白鍵ばかり使うことになり、黒鍵を使うことは稀であった。

しかし、黒鍵の入ったメロディーはお洒落である。そして、作曲をしている人はやっぱりお洒落な音をメロディーに入れて、人とは違うところを見せたくなるものであろう。

そこで今回は、うまいこと黒鍵を入れるパターンをいくつかご紹介したい。
いつも通り、説明はハ長調・イ短調を前提に説明することにする。

基礎知識: 導音

基礎知識として今回は「導音」を覚えてもらいたい。例えばドに対してのシのように「行きたい方の半音下の音」のことである。音階として、半音下の音は半音上に上がりたい気持ちがとても強い。特に本来普通の音階に出て来ない黒鍵の音が導音の場合、イレギュラーな音を解消するために半音上の白鍵に移動するパワーは更に強くなる。(細かいことは気にしないで丸覚えしてください。) 今回はこの「導音は半音上がりたい」の原理がたくさん出てくる。

短調の音階を混ぜる

ハ長調とイ短調はほぼ同じ音階を使う。つまり白鍵ばっかりで、ドから始まって終わればハ長調、ラから始まって終わればイ短調というのがざっくりしたところである。

ただし、イ短調の音階には実は3つの音階が存在する。

1つ目は先ほど説明した白鍵だけを使ってラから始まって終わるやつである。これを自然的短音階 (ナチュラルマイナースケール) と呼ぶ。これは黒鍵が含まれない。

2つ目は、ソが半音上がって#ソに変わった和声的短音階 (ハーモニックマイナースケール) 上行形 (じょうこうけい) である。「上行形」というのは、この#ソになる変化はメロディーが上がっていくときには起きるが、下がっていくとき (下行形) には自然的短音階と同じで普通のソを使う。

#ソに変わることによって、ラの導音になるので、普通のソよりラに戻りたい力が強くなる効果が得られる。また、コードで考えても、自然的短音階ではEm7だったものが和声的短音階上行形ではキモチ悪い増四度/減五度の響きをもつE7になり、よりAm7に戻りたい感じがする。(これをドミナントモーションという)

なお、下行するときは導音があるのに逆向きに進んでしまうため嬉しくない。よって#ソは元に戻すことになる。

3つ目は、ソに加えてファも半音上がって#ファと#ソになった旋律的短音階 (メロディックマイナースケール) 上行形である。

これは和声的短音階ではファと#ソの間が1.5半音 (増二度) という大きな間隔になるのを防ぐ目的がある。こっちのほうがメロディーを作ったときには自然という寸法である。

さて、和声的短音階上行形と旋律的短音階上行形を使えば黒鍵の音を一つないし二つ使うことが出来てお洒落感がアップする。ポイントとしては#ソを使うときはラに動きたいという感覚があるので、ほぼ必ず次の音がラになることである。また、#ファも広すぎる間隔を埋めるためのものなので#ソへ動くことが多い。

同主調へ転調する

同主調とはハ長調に対してハ短調のように主音が同じ音階である。ハ短調 (の自然的短音階) ではミとラとシが半音下がってbミとbラとbシとなる。

ハ長調からなめらかにハ短調に移行したい場合はドミナントコードG7がCM7にもCm7にも移行できることを利用するのが簡単である。G7が出てきたらすかさずCm7のコードとしてそれに合うようにメロディーを作れば良い。
(ややこしいのだがG7はハ短調の自然的短音階ではなく、和声的短音階あるいは旋律的短音階のコードである)

意外性のあるメロディーとなるセクションが出来るのでおすすめと言える。

ブルーノートを取り入れる。

ブルーノートは第3音ミ、第5音ソ、第7音シの半音下、つまりbミ、bソ、bシのことであり、それぞれ元のミ、ソ、シに移行しやすい。(主音のコードCM7の構成音の半音下と覚えよう) 

これは独特のお洒落感がすごく強い。特にミの半音下bミからの移行は個人的にとても好きで、多用している。

内容的に概ね前項の同主調への転調と同じと思うかもしれないが、転調した場合は例えばミはbミに変わっていて同時に使うことはあんまりないのだが、ブルーノート音階ではbミからミのように同時に使う点で若干異なる。

(読み飛ばし可、間違っている可能性大) 音楽理論的にはいろいろな理屈があるのだと思うが、個人的には「近い調からの借りてきた音」という風に理解している。bミはイ短調の属調 (隣の調) ホ短調での主音ミの導音、bソはハ長調の属調のト長調の主音ソの導音、bシはハ長調の下属調 (逆の隣の調) ヘ長調の第4音という感じではないだろうか。

クロマティック音階を使う

クロマティック音階とはすべて半音で構成された、全部の鍵盤を使う音階のことである。当たり前だがコードに合わない音が大半になってくるので使い所は難しいが、小節の後半で次に繋げるときには「導音から次の導音、そのまた次の導音」という感じになるわけでなめらかに移行出来ることが多い。

個人的に好きな使い方は、テンションがたくさん入ったコードから次のコードに移動するときに使う方法である。

例えばG9からCM7へ移動するような場合を考える。G9のコード構成音はソ、シ、レ、ファ、ラである。このときメロディーがソから始まって、CM7でドに移動したいときなどクロマティックスケールのチャンスである。

前提としてG9の構成音にソラシと連続した音階がある。そしてドの導音はシなので、シ→ドがなめらかな接続である。次にシへ移動するにあたって構成音ラからクロマティック音階でラ→#ラ→シとする。同様にソからラについてもソ→#ソ→ラと移行できる。結果的にソからドへ動くのにソ→#ソ→ラ→#ラ→シ→ドという半音階的なメロディーが出来上がる。後は黒鍵の音の違和感がないように常に裏拍になるように配分すれば完成である。(例えばソから#ラまで8分音符、ソが4分音符、ドが全音符とか)

黒鍵はやり方次第で全部使える

以上、黒鍵を使う方法の一部を紹介した。他にも転調を複雑にすれば嫌でも黒鍵を使うことになるし、他の民族音楽の音階を利用すると変わったテイストのメロディーを作ることも出来るので、また自分でも調べてほしい。

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