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DTMミックスのやり方 (注)自己流のやり方です

ミックスとは

音楽制作におけるミックスとは、異なるトラックの音 (周波数) を最適に調整し、全体としてバランスの取れた楽曲を作り上げる工程である。

ほとんどの楽器の音には倍音がたくさん混ざっており、特有の周波数帯域を持っている。ミックスは多くの楽器から構成される音楽の中で、各楽器の音の周波数を棲み分けし、それぞれの音が混ざったときに最も美しく聴こえるようにする作業である。このため、最適に調整した結果、楽器のトラック単体で聴いたときには良くないと感じる音になることもある。

なお、ミックスとよく比較されるマスタリングは、音圧 (音のうるささ) を調整する工程である。これはこれで重要だし、ある程度は同時並行に行うのだがスペースの都合上今回は割愛する。

やり方はいろいろ

ミックスには様々な手法が存在し、正解は一つではない。今回は私自身のミックス手法を紹介する。

準備

ミックスを始める前に、トラックの数が多い場合はある程度まとめると良い。例えば、Cubaseを使用する場合、グループチャンネルトラックにまとめると便利である。

また、全ての楽器とグループチャンネルのトラックを-7dB程度に合わせる。これは、それぞれの音が重なったときに、合計の音となるStereo Outの音量の上限を突破しないようにするためだ。(Stereo Outにlimitter のプラグインを刺して-0.1dBにしておけば更に安心。)

音量はミックスの後で調整するので、ここでは深く考えない。

基本的な考え方

イコライザー(EQ)は基本的に音量を下げる、つまり「削る」ことを考える。音量を上げる、すなわち「持ち上げる」のは微調整の場合のみである。

具体的な作業

楽器ごとの「箱鳴り」の除去

まず、楽器それぞれのトラックで「箱鳴り」を除去する。楽器によっては反響音などの「箱鳴り」が存在する。(VSTインストゥルメントでもある。)

そのトラックにイコライザー (CubaseだとFrequencyという元から入っているプラグインが便利) を刺して、音を鳴らしながらイコライザー上でシャープな帯域を最大限に持ち上げて、周波数方向に移動させていくと、変に響く箇所がある。これが「箱鳴り」であり、見つけたらそのまま下に下げて「削る」作業を行う。楽器にもよるが概ね4個ぐらいはこうした箱鳴りポイントがある。

ただし、この作業、とても面倒なので重要な楽器だけに適用すれば十分だろう。

低周波帯域のカット

次に、グループチャンネルなどまとめたトラックで低周波帯域をカットする。低周波帯域は重なったときに不快な音になることが多いため、基本的にはドラムのキックとサブベース以外は全て50Hz以下をカットする。

CubaseのFrequencyの場合だとCut12とかCut48とかの設定が一番左端のポイントでできるのでこれを利用すると完全にカットできる。

グループチャンネルのイコライザー処理

各楽器の最も鳴らしたい部分以外をカットしていく。一番鳴らしたい部分は概ね以下の通りである(諸説あり):

  • バスドラム:70Hzくらい

  • スネアドラム:100Hzくらい

  • ベース:50-100Hzくらい

  • ピアノ:200Hz-2kHzくらい

  • ギター:100Hz-1kHzくらい

  • ボーカル:500Hz-1kHzくらい

  • シンバル:1kHz以上

とはいえ、実際にはもっと調整が必要である。

例えば、同じベースでも、ウッドベースは低音を響かせるべきだし、スラップベースは高い周波数帯域を残さないと重要な部分が聞こえない。このように調整は永遠に続く。

ボーカルとの重なりを解消

ボーカルは一番聞こえなくてはならないため、他の楽器には譲ってもらうことになる。ボーカルと重なることが多い楽器は、ピアノとギターの伴奏(中音域)である。

ピアノは伴奏の要なので、500-1kHz付近を少し凹ますだけにする。

ギター伴奏は左右にパンを振り、それでもボーカルが小さいときは500-1kHz付近を少し凹ます。なお、ソロギターは別途トラックを作って置くと良い。

また、伴奏をオクターブ上下させることで解決することもある。

その他

脱線:パンについて

正直ジャンルによるが以下のような方針でやっている。

  • 基本的に低音域はパンを振るべきではない。

  • ダンスミュージックの場合、フロアのどの部分でも聞こえないといけないのでパンは振らない楽曲が多い。よって違和感を起こさないようにこれに倣う。

  • 生音系の音楽の場合は楽器の仮想的な位置を決めてパンを振るか、良い音に聴こえるようにパンを振る。

    • 後者の場合が上で出てきたギターを振ったりする作業である。

    • 同じような周波数の楽器は逆位置にして棲み分ける。

AIにやってもらう

最近はOzoneなどの有名なAIプラグインが多く登場しており、これらを使用してミックスを行うのも一つの方法である。自分の場合は序盤にOzoneでやっつけて、一旦Ozoneを切って調整して、Ozoneを再度かけたときにOzoneのイコライザーがあんまり動かなければ大丈夫と考えている。(Ozone解釈一致説)

喧嘩になる

最初に書いたように正解は無い。周波数の宗派によって宗教戦争が起きることが良くある。音楽なんだから・・・楽しもうよ・・・。






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