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三次元の音楽

はじめに

作曲にはさまざまなテクニックがあり、これらは創造的な幅を広げるのに有効である。複雑な転調、装飾音、普段と違うスケール、ポリリズムなどなど、いずれも重要な作曲におけるスパイスである。

しかし、スパイスや薬味ばかりでは料理が成り立たないように、細かなテクニックだけでは音楽は成り立たない気がする。より包括的な、大局を見ることも必要なのではないだろうか。今回は、音楽を三次元的に捉えることで、全体観・大局観について示唆が得られないかを議論する。

音楽の3つの軸と立体

音には3つの軸が存在する。

音量の軸

1つ目は音の大きさである。大きく捉えると、音の大きさは音楽の盛り上がりと直結している。当然、音量が高いときはクライマックスを感じさせ、静かな音はそれとは異なる感覚を与える。大きな音から急に小さな音へ、あるいはその逆へ、変化をつけることで起伏が生まれる。

また、無音も音の大きさの一つと捉えられる。休符は何もないわけではなく音楽の一部といえる。

音の高さの軸

2つ目の軸は音の高さの分布である。音楽は異なる楽器が組み合わさって音の風景を作り出している。

ベースがその名の通り支えとなり、ギターやキーボードなどの中音域が続き、さらに主旋律を担当するボーカルやヴァイオリン、フルートが続き、最も高音ではシンセサイザーパッド、あるいはハイハット、シンバルなどの金属音が配置される。

各音域ごとの音量の組み合わせ、つまりその時のスペクトルアナライザーの状態が雰囲気を決定している。

例えば、サンプルループ一つを選ぶ際には、どの音域に配置するのか、必要の無い音域はイコライザーでカットするべきか、他のどの音と重なっていて、どの音から独立しているのかを考える必要がある。

時間の軸

最後の軸は時間である。音楽は時間経過が原理上不可欠である。

より大きな流れで時間を捉えると、楽曲内のセクションの組み合わせ方をどうするのかといった考えに至る。

もっと小さな範囲を細かく見ると、一小節内で音がどこに配置されているか、つまりリズムを考えることが出来る。

音楽の立体

音楽を三次元的に捉えるとは、時間の軸に沿って無数のスペクトルアナライザーの絵が連続的に配置されてできた立体を想像することと同じである。このような三次元的な視点を持つと、別のアプローチを手に入れることができる。

あなたの音楽の形はどうなっているだろうか。三つの軸に沿って見たときにバランスは取れているのか、意外性はあるのか。そういったことを考えることで、作品をどのように進化させることができるかもしれない。


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