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居酒屋「タンバム」(甘い夜)をあえてSHOP自分と呼びたい〜キム・ダミ、柳沢きみおへ捧ぐ鎮魂歌。

いやァ、なんだかんだでもう2022年もスタートして10日が過ぎてしまった。

ちなみにこの年末年始、ボクは紅白も駅伝もろくに観ずにキム・ダミに夢中になった。

あえて映画「The Witch 魔女」をリピートしつつ、戻ってきた場所は梨奏院だった。

そう。あえて断言する。「梨奏院クラス」は2周目がイイ。きっと3周目はもっとイイに違いない。

この事実に気がついたのは年末「イカゲーム」を完走後のこと。キム・ダミ新作も配信スタートしたけど、どうも乗り切れず、さてどうすっかと思い何気に「梨奏院」2周目にチャレンジしてみたんだが、、コレがね、実にぐっときた。おかげで年末年始にダラダラ観しがちなテレビ番組、ほぼ観てない。観る気にもなれなかった。「プロ野球戦力外通告」、やってたことすら気がつかなかったし。

キム・ダミがとにかく最高。あえて「この表情」残しちゃう?な生々しい演技もOKしちゃう韓流ドラマの懐の深さよ。いやいや、日本の事務所ならNG出しちゃうよな箇所がイイ。路上で殴られて相手に立ち向かってく表情とか生々しく、かつほのかなエロスもあり。気がつけば彼女のトリコですよ。

もはや今さらこのドラマについて語ってどうすんのさ的なムードは無視させていただく。日本版リメイクに関してはボクがどうこう言える話じゃないので割愛。言いたいことはですよ、、韓流ドラマに柳沢きみおのDNAを見た&感じたってことです。またかよ、、、なんて思わないで欲しい。たしかに何度もきみおについてボクはnoteでしつこく書き綴ってきた。おそらく今年もソレは続行。いや、そんな話じゃなくてとにかくボクは感じてしまったのだ。「梨奏院クラス」というドラマに柳沢きみおのDNAを。

「梨奏院クラス」は青春群像劇であり、同時に復讐劇でもある。主人公パク・セロイは韓国イチの外食産業「長家」に勤務する父をもつ融通の利かない頑固な学生として登場する。学校ではその「長家」の御曹司といちいち対立、さらにその御曹司に父親をひき逃げされちゃうんですよね。で、因縁勃発と。その御曹司を殴って刑務所行き→出所後、その「長家」に復讐すべく韓国ソウルの繁華街「梨奏院」に居酒屋をオープン。打倒「長家」を誓いつつ、そこに集う仲間達との甘く切ない青春ドラマとしても機能する傑作なわけです。

柳沢きみお研究家のボクがまず感じたのは「復讐」って部分での「きみお」DNA。そう、90年代初頭にビッグコミックスピリッツで連載されていた「DINO」だ。

嫁探しマンガ「妻をめとらば」のあとに連載されたこの作品。主人公がディーノですからね。亡き父が愛したフェラーリーディーノ206GTから命名された名前なんですね。志半ばで失脚し亡くなった父親の遺志を継ぐべく親戚の家をたらい回しにされながらも普段は杉野一郎と名前を変えて、もともと父が社長をやっていた丸菱デパートへ入社する。そう、「梨奏院クラス」でパク・セロイが長家に入社するみたいなもんです。

セロイが梨奏院で居酒屋を開業するのを読み、コアな柳沢フリークなら容易に「SHOP自分」を連想するはずだ。スタートアップ。まずは起業してから考えようなノリ。きみおは90年代末期に先取っていたんですね。だって主人公のチョク、勤めてた会社が倒産→いきなり古着屋起業ですよ。このスピード感、まさに2010年代の感覚を先取りしてたとしか思えない。

よくよく考えれば今の時代ってまさにSHOP自分なんですよね。国も政府も会社も頼れず自分自身をセルフブランディングしてどう売ってサヴァイヴしていくかじゃないですか。別に古着の知識があったわけでも特別オシャレでもないチョクは「古着なら低コストで商売できるかも」と安易に開業します。で、うまくいくわけもないんですが旧友の勧めで紅茶の絞染めTシャツを自分で作ってスマッシュヒット。連載当時、絞染めのTシャツって流行ってたっけ?とか考えちゃいましたがここは疑問を持っちゃいけない。低コストで確実に利益をあげる。まさに商売の基本中の基本。このへんの悪戦苦闘ぶりも「梨奏院クラス」でも描かれてますね。別に料理が得意なわけでもない仲間を「こいつならやれると思った」とセロイの思い込みオンリーで店は苦境に立たされます。この感じ、まさにSHOP自分だよ!

じゃあ肝心のキム・ダミは柳沢作品で重なるキャラクターはいるのかよって話なんですが、まあいませんわな。
頭脳明晰、容姿端麗、ファッションセンスもあり、、ファニーな女の子。「SHOP自分」冒頭で出てくるミーナという女の子?(路上で悩み相談を行ってる)、それとも「DINO」における杉野あや?(ディーノが父親没後養子に出された家の次女)どっちも違うよな。

キム・ダミ演じるチョ・イソはフォロワー70万越えの人気ブロガーにしてSNSを自由自在に操るまさに現代の才女。ソシオパスとされてるけど、ドラマが回を重ねるごとに描かれるのは彼女の恋愛に関して一途な姿。こと恋愛に関しては鈍重な男、パク・セロイへの可憐な思いを抱きながら彼のために尽くす姿は実に健気。コレ、2周目だと余計に感じちゃう部分なんですよ。たしかに物語冒頭はクソ生意気なキレる女なんですけど、中盤以降の彼女の魅力に撲殺されない男をボクは信用できない。いやそこ理解しなくてもいいんですけどね。アハ。だってさ、イソってドラマの劇中何回ぶん殴られてるんだろうか。そのたびに鼻血は出すわ頬にアザは作るわ、それでも目一杯鼻の穴を膨らませて相手を罵倒する熱演ぶりはおせじにも美人とは言い難い。だけどソコがいいんだよ。むちゃくちゃな表情でも「ああ、かわいい」とボクらはすっかり魔法にかけられてしまう。最新作「その年、私たちは」でも物語冒頭で塩かけられそうになったりいろいろやられてますが、まだ足りない(笑)とはいえまだボクはこの作品3話目までしか観れてないのでどうこう言うのは早いんですけどね。彼女には物語設定上、ひたすら逆境ですよ、必要なのは。叩けば叩くほど輝くんですから。

だからボクはあえて言いたい。柳沢きみお作品を韓流ノウハウで映像化したらどうなるか。「只野仁」はクールでヴァイオレンスな映画として生まれ変わるだろうし、「青き炎」なんかむちゃくちゃハマるんじゃないかな。話の主軸である田舎の高校生が金と暴力で成り上がっていくサマを徹底したB級ムービーとしてエロスも加わり、世界的にニーズある気がする。いまの東京を舞台にやるよりもソウルのほうがサマになると思うし。どうかなー、ダメかなー。

とここまで書いてきて、間違いなく「梨奏院クラス」にハマった半数以上、いや9割以上がこのテキストを読んで理解できないよなァと自覚してしまった。なのでいい機会だ。読んで欲しいんです。柳沢きみおを!

むちゃくちゃ雑な物言いするけどパク・セロイのこと恋愛に関しての鈍重さ、優柔不断さはラブコメ伝統芸じゃないですか。まさにラブコメ古典中の古典、柳沢きみおの出世作「翔んだカップル」の田代勇介そのまんま。勇介は高校時代に知り合った圭ちゃんと大学進学後付き合うも破局。理由は勇介が始めたボクシングで殴り合いに夢中になる彼にどんどん熱量を失い、ラガーマンと付き合い始める。勇介は勇介で別の才女との出会いがあるも結局両者ダブルノックダウン。完結編「翔んだカップル21」によるとそれぞれ別の相手と結婚し家庭を持つが勇介は伴侶を病気で亡くし男やもめの父子家庭で息子を育てる。圭ちゃんは順当に家庭を築くもひとり娘がなんと勇介の息子と付き合うことになり、、とまあカオティックな内容で物語は進めば進むほど混迷の一途を辿る怪作となっている。えっと、この完結編は柳沢きみお上級者以外は読んじゃいけないので間違っても電子読み放題とかで手を出さぬように。何事も手順が大事だ。特にこのテキストを読み、「あ、読んでみよっかナ」とライトに思ってしまった方々は要注意。黙って「DINO」「妻をめとらば」「蒼き炎」あたりから始めて欲しい。

あ、「只野仁」シリーズもボク的にはきみおクラス上級者向けなのでどうぞよろしくちゃんで。

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