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脱・プラスティック(ラブ)宣言〜「アイドルを探せ」を読みながらラ・ムーを聴きたい気分について語ろうか。


なんにも考えたくないとき、90`sのドラマは役に立つ。

ついにParaviとかで30年近く前のドラマを掘り返してるんですが、これがまたよかったり再発見あったりして悪くない。「ADブギ」とか最高ですよ。アイドル卒業寸前の輝きを放つ浅香唯が絶妙で。ちょっと原秀則の「冬物語」に出てくる奈緒子っぽい雰囲気がバブル瓦解寸前のTOKYOにベストマッチ。そして主題歌が楠瀬誠志郎「ほっとけないよ」じゃないですか。当時いきなりドーンとチャートを駆け上がった1曲。

「いやいやそんなことありまへんでえ」と語る方々もいるかもだけど唐突ですよ。前振りなしでヒットチャートを駆け上がったのに変わりはないし、それだけ民放ドラマの影響力があった時代だったんだよなと思いつつ。ちなみに郷ひろみがカヴァーした「僕がどんなに好きか君は知らない」のロングヒットは93年である。80年代中盤にソロデビュー前はバックコーラスセッションに参加しつつのたたき上げのひとで、ソニーからKittyへ移籍後のアルバムがまたいいんだよね。って、今回本題はそこじゃない。


RAMUである。唐突にRAMU。なんでかって言われても困るけどRAMUだ。某誌で1回原稿書いたことあるけど、ボクはしつこいのでnoteでも書いてみる。


RAMUって今の時代だから再評価されたんだと思うんですよね。思い出してみて欲しいわけ。RAMUがデビューしたあのときの衝撃を。誰もが「これはロックバンドじゃない」と思ったあのときの気持ちを。菊池桃子ファンならば「どう反応すればいいのか」などっちつかずのあの気持ちを。


どっかに書いたことあるけどRAMUがロックか否か。東北の片田舎の高校までその論争は飛び火した。ボクにロッキンオンを教えてくれたSはもちろん否定派。

喧嘩したんだよなァ。一週間ぐらい口を聞かなかった。RAMUのせいで笑

たとえ当時のオリジナル盤(アルバム)がめちゃくちゃ高値を記録していたとしても、ボクは忘れませんよ。あのときの疎外感を。ええ、忘れるものか。ちなみにRAMUはロックか否かでボクは親友と大喧嘩し10日ほど絶交(笑)した男です。いや、わかってたの。そうなんです。RAMUはダンスミュージックであり、ロックというカテゴリーに入れるべきではないってことぐらい。少なくても当時の邦楽ロックシーンでRAMUを受け入れる懐の深さはなかったし、今だって決して深いわけではないからね。

ダイドーブレンドコーヒーCMソングにもなった「愛は心の仕事です」なるデビューシングル。ボクはこの楽曲の路線に関して最もまともな評価は菊池桃子ソロ時代の「Say Yes!」から続くポジティブメッセージ路線、音楽的には「Say~」がディスコサウンド経由のポップソングとするならばソロ時代後期の「Nile in Blue」や「ガラスの草原」から続くブラコン要素をさらに強調したダンスミュージックへとシフトしたという解釈が正しいと思っていて、アルバムも含めずーっと聴いてきたファンからすれば唐突でもなんでもない。別に過激になったわけでもないんですよ。ここ、ほぼ誰も触れてないので書いておく。3枚目のアルバム「Adventure」4枚目の「ESCAPE FROM DIMENSION」を聞けばわかります。音楽性的にはもはやアイドル・ポップスではなく、当時の最先端の洋楽のエッセンスをこれでもかと詰め込んだ単なるグッド・ミュージックの塊なんですよ。RAMUはそれらの音楽性をよりダンス・ミュージックに寄せていった結果なんですよ。

どっちかといえば印象論なんですよね、1988年に沸き起こったRAMU問題ってやつは。「ロックバンド」なるワードだけが先行しちゃった。ただそれだけの話。あれは邪魔だった、たしかに。

だけども見方変えればロックはロックなんですがね。予想の斜め上をいった展開って意味で考えれば。あの時代じゃなかなかそんな感性論も伝わりづらいんですがね。


たとえば松田聖子や斉藤由貴、もしかすると原田知世もここに入れてもいいかもしれない。菊池桃子一連の作品もカテゴリーとしてはここに入っていてもおかしくなかったし、実際かぶってるファンも多かったと思うんですね。だけど松田聖子斉藤由貴も原田知世もロック宣言はしなかったし、する必要もなかったんです。驚きますよ、斉藤由貴のロックバンド宣言なんてされちゃったら。あー、そういや本田美奈子のロック宣言は驚かなかったな。


もしもRAMUがあのまま続いてたら。シングル3枚、アルバム1枚の短命ユニットで終わらなかったら。意外とダンサブルな方向ではなくソフト&メロウな路線にシフトしちゃったりして90年代渋谷系ブームに乗っかる可能性だってなくはなかったはず。これ、唐突な話でもなんでもない。


知ってるひとは知ってるが、カルロス・トシキ時代のオメガトライブで作詞家としてピチカート・ファイヴの小西康陽氏が起用されている。これ、RAMUのプロデューサーでもありオメトラ生みの親、藤田浩一のアイディアであり、「第二の康珍化、売野雅男」に小西さんを仕立て上げようとしていたのは容易に想像がつく。もしRAMUの作詞家に小西さんが、、と思うと野宮真貴時代のピチカートよりも先にハッピーでキャッチーかつチャームなダンスミュージックが世の中を席捲していたなんて可能性もなくはなかったわけです。あくまで可能性の話ですよ、念のため。


ちなみにRAMU、菊池桃子にオメガトライブプロジェクトとシティ・ポップブームの中で藤田浩一プロデュース案件、もろもろ再評価されてるんでしょうが、まったく陽の目を浴びてないのが井浦秀知だ。「風のPassword」「春のモーニングトレイン」「青春のOne-way ticket」と3枚のシングルをリリース、作曲は林哲司で2枚目から編曲を新川博が手がけている。菊池桃子の主演映画「テラ戦士ΨBOY」に出演してたり俳優活動を並行させつつ歌手デビュー、つまり男版菊池桃子を目指してたのかと思う。シングルも桃子でいうところの「青春のいじわる」路線のシティ・ポップというよりも、青春歌謡のいなたさ路線でイイ曲なんですよ。オメガ時代の杉山清貴風のスーツ姿でビートたけしの「SUPER JOCKY」歌コーナーによく出演してた。3枚のシングル、おそらく1枚目の頃だと思うがプロフィール上特技とされているカンフー的構え(曲調と全然合わないミスマッチ)で切々と歌う姿は妙なインパクトがあったのは覚えている。青春歌謡路線でカンフーである。しかも衣装はカジュアルなスーツ&ネクタイ姿。当時の村生ミオのラブコメで主人公男子が目一杯お洒落すると必ずスーツだった。そんなスタイル。


結局ね、井浦はトップ10ヒットに至らなかったんですよ。歌手活動はシングル3枚で終え、俳優活動にシフトしながらいつのまにか芸能の世界から消えてしまった井浦だが個人的には「青春のOne-way ticket」好きな曲なんですよね。いい曲なんですよ、ほんとに。


藤田プロジェクトで池田政典に関しても、まともな評価を見たことがない。矢沢永吉を目指して京都から上京、アルバイトに励みながら歌手になるのを夢見ていたところプロデューサーの目に止まりデビュー、なるアナクロなストーリーはオメガトライブのアーバンかつメロウでお洒落な世界観とはかけ離れた存在で、実際初めて月刊明星に掲載された記事は立ち食い蕎麦屋の前でどんぶり抱えて鋭い目つきでカメラを睨む池田の姿。でもデビューシングルは「ハートブレイカーは踊れない」で王道林哲司のシティ・ポップでダンサブル歌謡。初期吉川晃司を彷彿とさせる洗練された匂いのビートと甘い歌声はセカンドシングル「SHADOW DANCER」で早くも花開く。そしてアニメ「きまぐれオレンジロード」主題歌の「NIGHT OF SUMMER SIDE」。売野雅男の歌詞が乗る前は「ミュージックボーイ」なる楽曲で野村義男率いるザ・グッバイ3枚目か4枚目のシングル候補曲だったはずのポップ・ナンバーは紆余曲折を経て池田の元にたどり着いたのだ。実際「ミュージックボーイ」なるタイトルは当時明星かなんかの野村義男のページで見たことがあるタイトルだったし、そもそも野村本人から聞いた話なので間違いはないだろう。もしも「モダンボーイ狂想曲」でも「YOU惑MAY惑」でもなくグッバイがNOBODY作曲の「ミュージックボーイ」をリリースしていたらなんて夢想をする2022年。でも「YOU惑MAY惑」で正解ですよ。サーフ&ホッドロッド歌謡路線でシングル勝負を賭けた当時のスタッフの勇気が正解。

ちなみに池田の場合、「NIGHT OF〜」のヒット後、「FORMULA WIND」(林哲司作品)を挟み88年「君だけ夏タイム」なる実にダンサブルな楽曲をリリースしているがNight Tempo的チョイス視点だとばっちりな気がするんだけど再評価の機運ゼロ。当時はキャッチーさに欠け「どうかなー」と正直思ったんですけどね。作曲はなんと船山基紀である。

ちなみにこの曲リリースの前年、菊池桃子と共演したのが吉田まゆみ原作の映画「アイドルを探せ」だ。トレンディな女子大生がトレンディな恋愛を自由気ままに楽しむ名作だし個人的には紫門ふみより好きだったんですよ。続編「夜をぶっとばせ」も最高。こんだけ世の中シティな雰囲気なら音楽だけじゃないとこもしっかりフックアップして紹介すべきだと思うんですけどね。2022年初夏は脱「プラスティック・ラブ」、脱「亜蘭知子」で笑

うーん、ひさびさに好き勝手書いたらスッキリした。そして「アイドルを探せ」読みたくなったなあと思い自宅書棚を続編含めて探すもナッシング。全巻コンプしてたはずなんだけど見つからない。イチから買い直すかあ。そんなシティ・ポップ(歌謡)なフィーリングの週末。さあて、今週も掘りに出掛けますかね。ブックオフ、ハードオフという名の泥沼ツアーに笑

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