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原秀則の行方〜「しょうもない僕らの恋愛論」後の世界への要望書。

iPhoneの常用イヤフォンを忘れたことに気づいたのは最寄駅行きのバスに乗り込んだ直後だった。これで電車の中で音楽も動画も楽しめない。最近デモのやりとりを始めたシンガーソングライターの新曲上がってきても「自宅に戻ってから」と間抜けな返答をしなければいけないこと確定。

物忘れついでに眼科に立ち寄ることにした。この数ヶ月あきらかに視力減退。行かなきゃなー行かなきゃなー(稲川淳二風)と思っていて忘れてたのだ。ついでにコンタクトも作り直しと思いきやMEGUMIをシェイプし地味さをバージョンアップしたような担当医に「問題なし」とばっさり。つまり視力は落ちてるけど0.1程度じゃ問題にならず。目には傷も異常もない。コンタクトも作り直し不要。診療費は380円。なんだかなァと柳沢きみおフィーリングになるも近くの100均ショップへ。イヤフォン端子ぐらい売ってるだろと思ったわけです。やっぱ売ってんじゃんと即買いするも冴えない日はどこまでも冴えない。悪い予感はあたる。端子、入んねえじゃん。仕様違うじゃん。返品するのもカッコ悪いのでポケットに突っ込む。ポケットには秘密がいっぱい、なんて曲ありましたよね?いや、ねえよ。それを言うなら「ポケットが虹でいっぱい」。YMOですね。いや、ノットワイエムオーか。1993年4月に発売されたんですよ。さくらももこが脚本手がけたドラマの主題歌でした。加瀬大周が出てたんだっけ。

93年といえば。原秀則が「部屋においでよ」をヤングサンデーで、「やったろうじゃん!」をビッグコミックスピリッツで連載していた時期。かたやトレンディなラブコメ路線、かたや熱血野球マンガ。ちなみに「やったろうじゃん!」の後半の鬱展開は最高だと思ってます。いわゆる江崎直人の章ですね。

「ドカベン」里中智を彷彿とさせる母子家庭だがピッチャーとしては天才的。肩に致命症あり。彼女の藤村ももこをめぐる事件には驚いたが復讐より試合を選ぶ江崎とそれにともなう精神的葛藤をきっちり逃げずに描いた「やったろうじゃん!」。ボクは好きなんですけどね。

この物語の影は以降の原秀則作品に色濃く反映していく。「いつでも夢を」の多田野一郎の小島能理子に対しての仕打ちもそうだし「やったろうじゃん!」のあとにスピリッツで連載された「青空」は最初っから飛ばしまくっている。なにがってダークネスですよ。タイトルとは裏腹に。最初っから主人公、天野光一はアウェイに置かれてるんですよ。逆境につぐ逆境。野球マンガとしては「やったろうじゃん!」のほうが圧倒的に面白いしサンデーに連載されていた「ジャストミート」のほうが楽しめるだろう。だがヒューマンドラマとしては「青空」ですよ。逆境に耐え続ける天野がついに泣き崩れるシーンとか最高。

「しょうもない僕らの恋愛論」が終わってしまい、次作の動向が気になるところだが今のところブログをみるかぎり具体的な動きは見受けられない。

だが6/22 のブログをみると「日出処の天子」(山岸涼子)が全巻「担当編集者から送られてきた」と書いている。「正確には編集長が言ってたらしいが、、なぜ〜?」と書いている。ええええ、、、まさかの歴史物なんだろうか。前にボクが提言した「冬物語」中年版は?柳沢きみお、国友やすゆきを超える作家はオンリーワン、原秀則だけなんだぜ、、。

村生ミオも最近はゴラクにすら描いてない。国友先生は亡くなってるし柳沢きみおはネット限定の柳沢きみおマガジンに新作は描いているが一般誌に復活する気はないような気がする。いや、復活して欲しいんです。週刊文春とかダメなんですかね。「大市民」とか。

まあ、そんな状況を考えるとですよ。週刊ポストや現代にさらりと中年壮年の鬱展開の和製ソープオペラを描けるのは原秀則だけだ。そう思いませんか。マンガ史の中でも最強ランクの優柔不断な主人公を生み出してきた原秀則がかつてないほど最弱、いや最強に優柔不断かつ冴えない中年を主人公に描く人生晩年愛憎乱れまくりのピカレスクロマン。コロナ禍で業績悪化、収入もダウン、家庭もマンネリな環境、とまあ設定はイージーなほどよし。国友やすゆきが描き続けたキャッチーかつ不毛なエロスを原秀則のペンでリブートさせるのだ。「幸せな時間」を超える作品を描ける可能性あるのは原秀則だけだと思うんですけどね。江川達也がそのラインにいくかなと予想はしてましたがどうやら違うみたいだし。

長らく原作ものを経て、実質的第一線に「しょうもない僕らの恋愛論」で再戦を果たした原秀則がさらなる闘いで勝っていくためには和製ソープオペラ路線、これしかないですよ。てゆうか描くべきだ。ダメかなァ。描いて欲しいんですけどね。次回作、まじで期待してます。



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