小説 迷惑な生き物(2007年)

 その青い木の葉の爽やかな裏地では、なにか極彩色の生き物が、全身を鋭く毛羽立たせていた。その先端は黒とオレンジのだんだら模様だったが、後ろに行くに従って、白くなり、うすうすしているローズピンクに変色していた。また後ろになっていくに従って半透明のゼリー状になっていた。まだるっこしそうな動きでもって、身体がうねうね這い回るたびに、柔らかく毒気地味た全身の表面が、弱々しい木漏れ日に反射して、くねくねくねくね生光りしていた。顔、というか、先端部分からは、とてもひょろひょろとした小さな触角が、三本ほどすべすべと伸びていた。それぞれの先端には、爬虫類のような鼻先と、ビーズのような両目が座って、ぴくぴくぴくぴく震えている。時たまそいつは、オレンジのような匂いを発しながら、鳥のようにけたたましい声で、泣き喚いた。それは音にすると「ウヴェー、ウヴェー」というような感じの、はた迷惑な声だった。けれどもそのたびに、かすかな山百合の花の匂いみたいに清潔な予感が町中をひとめぐりした。というわけで、街の住人にとっては、文字の通りに、良い迷惑だと、いうわけだった。

(2007年から執筆~2011年に完成、その後修正)

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