散文詩 2008年の2月20日の詩(2008年)

 真っ赤になった宇宙を唄っていた、口移しでメロディーたちがいっせいに流れた、雲を信じる子供たちが白い影になって、影も形も無くしていって、ほどけていって、ぼくの背中に積もっていった、雪のように、黒い宇宙は乗り物になって、何にしようか、船になって?虫たちになって?兎たちになって?狐たちになって?長い尾をひく、不可能にかがやく線条たちになって。ぼくたちは旅行した、たくさんの、星に変わった生きものたちと一緒になって。リズムはリズム、音色は特徴、効果は意味だ、やっきになって、体中の葉脈から白い炎を噴き上げて、楓の木の葉がゆらゆら揺れて、流れ流れて両目の中で、新たな光の熱帯雨林を、光と、水と、色彩だけの、頸の長い銀色の蛇たちや、たくさんの黄金色の血をたぎらせるオレンジみたいな歌を奏する、口から伸ばした金属で奏する緑色の魚たちと、一つの精神生命体につき動かされ、木と木の間で狩をする、人間たちが一杯になって、溢れるようだ、流れるようだ、ほの暗い洞窟のなかで、宝石たちが音を立てて転がる、ひとりでに、しずかに、たくさんのたくさんのあざやかな白百合たちが、その入り口で花咲く夜に、燃える水たちが坂道を昇っていくのをきみは見とどける。微粒子たちが連続することで、瞬間的な時空間たちの瞬間が連続することで、成り立つ檻が次々に砕かれ、火花を散らす、やわらかい火花だ、やさしい火花だ、霧のような火花、形をなくして、液体になって、泣き叫んでいる洞窟の中の宝石たちのような、自分たちの母親のたくましい胸のなかでまどろんでいる、黄色いライオンの子供たちが見るその夢みたいな、自分自身の家を失い、子供を失い、居場所を失い、ずたずたにちぎれた幸福のヴェールの、亡骸たちの目の前で、体をくずして泣き出す女が見る夢みたいな、やさしい火花だ、そんな火花たちが結ばれあって、身をほどきあって、別の形でもう一度結ばれ――そしたらすぐさま反響たちが、きみの体で目を醒まし、めくるめく色彩を、ひとつひとつの空気のゆらぎに変えながら、かすかな声で、感覚だけで、燃え上がり、泣き叫び、寒気を感じたり、ちぢこまったり、伸びあがったり、誰かの寒さを察知して、あたために行ったり、燃やしに行ったり、繰り返している。

(2008年)

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