散文詩 キリスト(2004年)

キリストは讃美歌を歌いながら小人になって、分解しきって液状になり、スポンジ状になった空気の無数の穴の中に、浸されていった。ぎゅうっと絞ると、そこから出ていき、テーブルに置かれた、チーズの無数の穴の中に滑り込んでいった。冷蔵庫に容れられて、冷やされて、切れ込みを入れられ、スライスされた。パンに載せられトーストされて、苦痛の記憶を綴じ込めた、オレンジ色のコンフィチュールを塗り込められて、キリマンジャロのコーヒーと一緒にわたしに食べられていった。その日は雪が降っていた。窓際にもたれて讃美歌を歌った。手拍子を叩いて――聖なるかな、ホサナ!――キリストを食べると、わたしはすっかり落ち着きをなくした。ぱちんぱちんと指をならして、ミケランジェロの、ダヴィデやピエタをぼんやり思った。キリンみたいに首をのばして、ミニチュアを造った。器用でもなく、器量もよくないわたしとしては、キリストみたいに、磔にされて、切り捨てられて、きりきり舞って――一人っきりで、錐揉みしながらきらきら光ることができるだけだった。

きりっと静かに、綺麗な言葉や奇妙な言葉を、貴族みたいに着飾って、規則正しく、気取りをなくして、季節の奇跡に、妃の期待に、きざに機敏に、挙動不審に、きちがいみたいに、自由気ままにきよらかに、着の身着のまま――きみを思って、危篤になって――にもかかわらず、きちんとしていた。

(2004年から2012年)

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