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道具としての動詞

道具。剣豪・宮本武蔵の『五輪書』から引用してみる。武士の兵法の基礎編「地の巻」。意外にも大工に喩えた記述が多い。「大工は、種々様々な道具を工夫して作り、それぞれの道具をよく使い覚え、暇なくその技を駆使して世を渡る」。道具は作るもの、使い覚えるもの。はじめからわれわれに備わっていた訳ではないのだ。後天的に身につけるもの。自分でその道具を研ぎ、いろいろな責め道具をつくり、大工の箱に入れて持ち、棟梁の指示に従い、隅々やめんどうまでも手際よく仕上げる。それが大工のあり方。この譬えなら武蔵のいうことを誰しもがイメージしやすかっただろう。自分のかわりに働く道具ではなく、自分とともに働く道具。そんな道具観。動詞も各人がもっているエネルギーと能力を最大限にひきだす存在だ。動詞もつくるものであるし、使い覚えるものだと思う。だから、ひとり一人が『五輪書』の如く、道具としての動詞を磨いていきたい。

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