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動詞に憑かれたひと③:グラント大統領

時は1885年7月のマクレガー山。第18代アメリカ合衆国大統領ユリシーズ・S・グラントは、退任後、ここで回顧録を執筆していた。死の床にあるグラント。自らを蝕む咽頭がんのため話も出来ず、主治医に次のようなメモを鉛筆で書き残した。「実は、わたしというのは人称代名詞ではなくひとつの動詞なのだと思う。その動詞とは、あること、行なうこと、苦しむことを意味する何かだ。わたしとはこれら3つすべてを意味している」。彼はその数日後に亡くなったため、この短く難解な数行を記したときの真意を知る由もない。わたしたち自身について、わたしたちが人間であるとは何を意味しているのか?この問いかけの鍵になるのが動詞。彼の場合は、ある、行なう、苦しむ。グラント将軍の壮絶な人生が窺える。人間であるとはひとつの動詞なのだ。

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