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「エレックする」という動詞は今

小さな、小さな本屋で藤井基二さんの『頁をめくる音で息をする』を購入。クスっと笑えたり、ホロっと泣けたり。尾道にある彼の古本屋。日々の出来事や人間の喜怒哀楽が巧みに切り取られている。センシティブな一冊。その中にこんな件があった。古本屋ではタブー視される料理本。彼の店ではそれがよく売れる。高度経済成長期。一般家庭でも西洋料理は憧れの的だった。料理のレシピ本を台所机でワクワク眺めた少女がいた。ノスタルジー。その料理本を大切そうに抱えて古本屋をあとにする中年女性がいる。電子レンジにも秘められたドラマがある。松下電器が電子レンジ「エレック」を発売する際にエレック料理本が誕生した。この料理本にはなんの衒いもなく「エレックする」という動詞があるのだそうだ。もちろん、電子レンジを使うという意味。いまは「チンする」と音的な表現が一般的。米国でコピーすることをゼロックスすると言っていたが、どうやらこちらは当てが外れたらしい。

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