フィルギアいいなあ

フィルギアはいわゆる「女の子」に対する接し方が上手いと思う。
「自分が女性である、またはカワイイである」ゆえに与えられるちやほやされる権利とか慰められる権利を、世間や周囲に無意識に求めてる、そんな「女の子」に対して、正確に女の子の求めを満たせるような、そんな仕草が身についている。
フィルギアはどうやら女性に対してヒモになることで生活資金を得ているらしいことが示唆されている。生きる糧を得るためにしていることなので仕事と言っても差し支えない。フィルギアがフィルギアらしく金を得るための最適な手段がそれなのであろう。

さて、相手からの無意識な期待に応えることは疲れる。相手の顔色を伺い、時には自分自身ではないキャラクターを演じて籠絡することが必要になる。それを繰り返す彼は何者なのか。ただただ期待に応えていくオイランめいた軟弱者なのか。それは違う。

サークル・シマナガシ
そんな彼も子供っぽい態度を取ったり、あえて相手をイラつかせるような言動や態度を取ることがある。それは対等だと認めた男性を相手にしている時だ。

「……誰だ」男の顔が目の前にあった。「死神ですよォ。ここはサンズ・リバーさ。俺はカロン・ニンジャだ」「なにを……畜生……」ショーゴーはかがみ込む男の背後に「タラバー歌カニ」を認めた。「……何を言ってやがる」「ハ!信じた?いやなに、お前さん、結構ガッツあったからね」 2

「てめえは何だ」「さっき、窓の外から覗いていたのさ。フクロウになって」男は歯を剥き出して笑った。四角いサングラスをかけた、痩せた男だ。真っすぐなワン・レングスの長い黒髪、臙脂色のシャツ、首にはインディアンめいたアクセサリー。ショーゴーは唸った「殺せ」「命令できるザマか、お前」3

「ふざけるな!」命を吸ってやる!……そして気づく……既に、それを、している。男がショーゴーの手を自身の心臓部に当てているのだ!?ショーゴーは困惑した。男は頷く「ドーモ、はじめまして。フィルギアです。あいにくカロン・ニンジャってのは嘘……お前は俺のせいで生き存えちまう……」4
ニュー・メッセンジャー・オブ・ホワット」より

彼がカロン・ニンジャを騙ることに意味はない。意味のない軽口だ。

「なぜセクトに……宣戦布告を……」「話が進まねェ!段取りが悪いぞ、フィルギア=サン!」アナイアレイターが吠えた。「あァ?」「俺らがバイカーのガキどもをコケにする。ガキがヤクザを呼ぶ。ヤクザがアマクダリを呼ぶ。それを潰す。だろ!」「ああそうだ、うん」フィルギアが頭を掻いた。 2
「ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード」 より

アナイアレイター=サンは「サークル・シマナガシ」の一員だ。彼の気安い言動からも、仲間とそう距離を取っている方ではないと思われる。(アナイアレイターは元々粗暴で敵組織の幹部に対してでも敵部隊を前にして瀕死の重体でも挑発的な目線を投げかける無謀な性格とはいえ)

「サークル・シマナガシとかいうカスが、セクトに宣戦布告!トラッカー=サンがアンブッシュを受けて死んだ!一刻も早くこいつらを……」フィルギアがジョイントを咥え、火をつけた。スーサイドは火を借り、自分のタバコに着火した。ルイナーは辞退。アナイアレイターは我慢の限度を超えた。 8
ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード」より

「忍殺において共に食事をする事は特別な意味がある」という考察は見聞きするが、タバコをシェアすることはどういった意味を持つのだろうか?
「ルイナーは辞退」とあるが、スーサイドかフィルギアが勧めたものと考えられる。「火を借りた」のはスーサイドのため、火を持っているのはフィルギアであり、個人的な願望としてもフィルギアが差し出していたらいいなァァォォォ。

パンク・ニンジャを憑依させたスーサイドのジツは、対象の魂の力を吸収する危険な「ソウル・アブソープション・ジツ」。空気中の重金属分を触媒にニンジャソウルのエネルギーを結晶化させて作り出す、アナイアレイターの恐るべき鏖殺鉄条網を破壊する事ができるのは、そのジツゆえだ。 18
ではアナイアレイターの憑依ソウルとは何なのか?その名をフマー・ニンジャ。通常、憑依ソウルの格は必ずしも現世のニンジャの力をそのまま規定するものではない。しかしそれを置いてなお余りある暴力的な力!サークル・シマナガシとは即ち、彼アナイアレイターを中心とする反逆組織なのだ!19 同上より引用

サークル・シマナガシの面々は全員フィルギアからの勧誘で集ったとされている。名付きのニンジャソウル憑依者をして自分の味方と認めるフィルギアは、決して自分のことを小さく見ている訳ではない。

「ハァーッ……ハァーッ……」「シーッ……もう少し静かにしないと」「そんな事……今更そんな事」「今更そんな事?すっかりその気なのに、俺が意地が悪いって?」「そう、そう」「ヒヒヒ……よっぽど辛いのかい……抑圧ってやつかい……」「そうなの、抑圧……ひどいの」「ひどいのかァ」 39
「ひどいの」「いや、わかるよ、すごいワカル……人間ってのは色々抱えてるものさ、どうにか自分をごまかして……」「そうなの、辛いんです」「ワカル。なんでも話していいよ。俺、それしか能がないしさ。無害だし……」「ひどいのォ」「生徒の、何だっけ?ソサイエティ?」「そう。ナカヨシ」40
「ナカヨシが?」「ねえ、私なんて、あの子たちより立場が実際下なんです。わかるんです」「そりゃ酷い……先生なのに」「ウウーッ」「泣いていいよ。俺、それしか能がないしさ。なんでも吐き出していいよ」「好き、ナツイ=サン、好き……」「いいよ俺のこと好きになってよ、楽になるよ」「好き」41
「話して。楽になるよ。カヤカ=サンは生徒に受け容れられない……その、ナカヨシの子たちが率先してるって?」「そう」「カヤカ=サン、こんなに魅力的なのに」「教師よりも強いんです、あの子たち」「君が素敵だからだよ。子供の嫉妬は怖い」「ナツイ=サンだけです、わかってくれるの……」42
グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド」より

セリフのみのシーンだ。これは主人公が声だけを聞いているゆえの演出であるが、やり取りの陳腐さが強調されていて笑いがこみ上げてくる。このように無害を装って人を依存させ、情報を引き出す事もする。

あっちに行ったと思えばこっちに現れる。高校教師のフリして保健室で女性教諭を魅了しているかと思えば梟頭の怪人に変身して渾身のカラテを振るう。彼に「本当の顔」が存在するかはわからない。
ただ彼は自分の「タノシイ暮らし」が脅かされるのであれば手段を選ばず、社会的組織にも反抗する。そこには彼の確固たる意志やカラテが必要であり、ただの軟弱者ではない事がわかる。

彼の自分がナメられても構わない、というよりそれを狙った節さえある行動や言動、他者から自分の人格を誤解されることを恐れない姿勢、いずれアマクダリが自分の暮らしを奪うと見た確かな先見性とその時その時のタノシイ暮らしを優先する態度が好きだ。

#NJSLYR #DHTPOST #ニンジャスレイヤー #フィルギア

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