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リーダー修行記52(本番直前スペシャル~リーパー逆転の落とし穴~(後編))

本番1週間前のレッスンで、「リーダーはよき支配者たるべし」と開眼し、リーダーの視点に気づいた私(詳細はこちら
今さら間に合う気はしないけれども、やれるだけの努力はやろうと意気込んでレッスンに行ったのはその2日後のことでした。

そして、リーダーとしての「立ち方」を根本的に見直すついでに、ずーっとずーっとずーーっと気になっていた「組み方」もこの際改善しようと思い立ちました。
気にしていたわりに放置していた理由は、実害を感じなかったことと、他にやるべきことが多すぎて後回しになっていただけです。

リーダーを始めた当初の私のホールドは、左手を上げて、右手をパートナーの背中に回す、くらいしかわかっていなくて、自分の腕すら自分で支えられなくてふらふらしていたので、先生が私の左手を持ち上げてがっちり固定してくれていました。正確に言えば、そうしてくれていると思っていました。
私が先生と踊っているときのホールドは、わりと初期の頃から、へっぽこにしてはなんとかなってる感を見せていましたが、実際は先生が上から支えているだけで、とりわけ落ちがちな左腕に関しては、ほとんど自分の筋肉は使っておらず、先生が、歯車を嚙み合わせるようにガチャっと私の手を固定して形を作っていたのです。

できることが増えるに従って、ホールドも独り立ちしようと思い立ったのは実は半年前、Dance GALA に出る直前でした。プロの先生たちの組み方を観察したところ、左手でパートナーを引き寄せる姿が大変に凛々しく美しい。真似したい。でも、いざ先生と組もうとすると、何度トライしても先に左手をつかまれてロックされてしまって、引き寄せる隙がないのです。ホールドが頼りないのはわかるけど、いつになったら自立させてくれるのかなあと思っているうちに、半年が過ぎてしまいました。

先のレッスンで「支配する」をテーマにしようと決めた私。これを機にホールドも巣立とうと決意して、まだぴよぴよ🐥してるけどもういい加減左手の支えを外してくれていいですよ、と持ちかけました。
私の左手を持っていくのをやめて、私のホールドが完成してから右手を添えてほしいと。

先生「組むときにリーダーの両手が完成してる必要はないんだよ?」
私「右手が完成してなくていいのはわかるんですけど、左手も完成してないんですよ」
先生「う~ん、左手は完成してるというより、下の方でパートナーの右手をキャッチして引き寄せる感じだよ?」
私「それもわかってるんですよ(妙に食い下がるなあ……)」

いまいち話がかみ合わないので、実際に組んでみることにしました。

先生「僕が右手をここに置くでしょ。それをこう上げていって、けやきさんが引き寄せてこう組むよね? 何か問題でも?
私「!?!?!?(何を言っているの!?)」

引き寄せてない。私、1ミリも引き寄せてないよ!!!

私「先生が私の手を持ち上げてるし! 持っていっちゃってるし! ガチャってロックしてるし! そこ私の意思と関係ない場所だし! なう!」

先生「あ、そう……?」

あ、そう……って何。ねえ、何!?

先生「そうか……。じゃあどうすればいいのかな……えっ難しいな……

えっなんで? 何が難しいの?
その右手を! 私の左手にタッチして! 近づいてくれればいいのよ? それだけの話よ?
何がそんなに難しいのーーーーー!?!?!?

先生「えーっと、こんな感じかなあ?(自信なさげ)」
私「そう!これ!こうしたい!(やっと引き寄せられた!)」
先生「なるほど。僕が支配されきれてなかったんだね」
私「……………」

それは何かい。つまり、今まで私のホールドの頼りなさをカバーしてくれていたわけじゃなかったということかい?

先生「ずっとリーダーの感覚で組んでた。無意識だけど」

マジか……。
マジかーーーーーーー!!!

試しにそのまま踊ってみたところ、全然感覚が違いました。
おかげさまで支えを失った私の腕はあっさり重力に負けて見た目は劣化したかもしれないけれど、気分が違う。全然違う。ただ左手が解放されただけで、「支配してる感」が芽生えてやばい。私、やっとホンモノのリーダーになれた気分よラリホー。
と浮かれていたら、先生にしみじみ言われました。

先生「今、僕の中に新しい感性が芽生えたね」
私「はい?」
先生「右手を『知らないところに持っていかれる』っていうのが、もう未知の世界だよね」

マジか……。
まさか本当に無自覚に私の腕をロックしていたとは。1年間に渡って。
リーダーって、どこまでも自由を奪われたことのないイキモノなんだね…。

かくして、前回のレッスンでは私がリーダーの領域に開眼し、今回は先生がパートナーの領域に開眼しました。
こうやってひとつひとつ紐解いていかなければ気づかない潜在意識がお互いの中に眠っていて踊りに影響を与えているということが、どこまで行っても沼地のようなダンスの奥深さだと思います。特に、男女逆転したからこそ気づくことが本当にたくさんあって、私はその紐をこつこつほどいていく作業が嫌いではありません。

ていうか好き
変態的に好き

今回の件では、私にはパートナーの受動性が、先生にはリーダーの能動性が、本人も気づかない深層心理のレベルでしみついていることを発見しました。何もなければ永遠に気づかなかった可能性が高いので、気づいたこと自体が、北島マヤのウォーターのような(しつこい)奇跡です。
できれば1ヶ月前に起きてほしかった奇跡です。

あと1回のレッスンで、定着させられるわけない(震)

(本番につづく)

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