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「フォロワー」という呪いが解けた日の話

注:私は「フォロワー」ということばが大嫌いで、常日頃は頑として「パートナー」という言い方をしているのですが、今回は内容的に、あえて一部「フォロワー」というワードを使用しています。

 4スタンスのタイプチェックをしてもらいました。
 そこで、私がまったく同じルーティンをリーダー側とパートナー側で踊ったスタンダードの動画観てもらったのですが。

「圧倒的にリーダーの方がいいよね。体幹が使えてるし、本来の自分の動きができてるし、何より生き生きしてる
「パートナーの方は男性に合わせて無理な動きをしていて、窮屈そうで、とても不自由そうに見える

 なるほど。ぐうの音も出ない。

私「どうすればいいですかね?」
先生「相手がどうでも、自分の形を押し通せ
私「!?!?!?」

 ダンスを習い始めたとき、最初の先生にも次の先生にもその次の先生にも「リードに合わせろ」「勝手に動くな」「男性に付いていけ」と教えられた。サークルでもフリーダンスでも「リードについてこい」「勝手に動くんじゃねえ」と怒られた。いい加減嫌になって、これでダメならダンスをやめようと思って今の先生のところに体験レッスンに行ったら、「僕のリードはプレパレーションで終わり。あとは自分のタイミングで自分の歩幅で自分の動きたいように動いて。僕はそこまで君の面倒をみたくない」(というようなことをだいぶやさしく)言われたとき、もう少しダンスを続けてみようと思ったのでした。

 そんなことを徒然思い出したものの。

 プロリーダー相手に「自分の形を押し通す」ことが物理的に可能ですか、やっていいんですか、許されますか、それどうやったらできるんですか。

 という難問を抱えて行った次のレッスン。

 4スタンス講習に行って以来、自分の動画(パートナー側)を観ながら「何故私はこんなにもしんどそうなのか」をずっと考えている、という話をしました。

先生「実際に踊ってるときはしんどいですか」
私「しんどいですね(断言)

 オマエこのダンスやめろよ、と言われても仕方のない、およそ社交ダンス教室で交わされるものとは思えない会話。
 ですが、先生は、「フォロワーでいることがとにかくしんどい」という身も蓋もない私の訴えを真剣にひも解いてくれました。

先生「リーダーのときはしんどくないんですよね。理由は自分でわかります?」
私「わかりますよ(断言)。自分の向かおうとする方向に自分が一番動きやすい形で動いてるからだと思います(断言)」
先生「じゃあ、パートナーのときも同じ心持ちで踊ったらいいと思います(断言)」
私「!?!?!?」

 4スタンスの先生と同じことを言われた。えっでもそれ可能?

先生「僕をまったく頼りにならないヘボリーダーだと思って、自分がどうにかしなきゃどうにもならんと思って踊ってみて」
私「う、うん……?」

 それは「フォロワー」としてどうかと思うが。
 まあそこまで言うなら…。
 とりあえず、私が思うところの「フォロワーの禁忌」を全無視して、自分がリーダーのつもりで踊ってみた。

先生「いま、フォローしてる感覚はないですか?」
私「ないわけじゃないけど…半分くらいは好き勝手踊ってますねえ…(恐る恐る)」
先生「ぜんっぜんそれでいいです!(食い気味)」
私「!?!?!?」
先生「むしろ僕はそれを待ってた
私「(えっ3年も?)」

 そう言われると、体験レッスンのときから、折に触れそんなようなことは言われ続けてきたような気がするけど、私の中には「フォロワーたるものリーダーに合わせるのが正義」という考えがあって、そうは言ってもリードするのはリーダーだし勝手に動いたらまた怒られるんだろうとどこかで怯えていて、「リードを正しく受け取れるのが上手なフォロワー」だと思っていました。

先生「リードは受け取らなくていいです。受け流してください
私「!?!?!?」
先生「踊っているとき、僕はけやきさんにずっとメッセージを発してるけど、けやきさんは僕に返さなくていいです。むしろ返さないでほしい。僕とけやきさんの間では、それでちゃんとコミュニケーションになってます」

 私はそのとき心底思いました。
 私を縛っていたのは、私自身が勝手に作り上げた「呪い」だったのだなと。

 ああ、よかったなあ。そんな稚拙な表現しかできないけど、心から思いました。よかったなあ。うん、よかった。

 リーダーに挑戦しなければ、4スタンス理論を学んで適格なコメントをもらっていなければ、そして私の、社交ダンス愛好家としてはわりとレアであろう悩みを真摯に受け止めてくれる先生がいなければ、私の「呪い」は解けなかった。これは、縁とタイミングと、時間をかけて培った信頼関係がなければできないことでした。そう多分。絶対。

 私が「フォロワー」として抱えていたストレスはただうまく踊れるかどうかという話よりずっと根深くて(詳しくはこちら)、それが解消された瞬間の感動…というより安堵感は、ちょっと言葉にしがたいものがあります。文章で伝えるという面では完全に失格だけども、この気持ちを表現しきる自信が私にはもうありません。

 なので、とりあえずこの日のレッスンを、こんな言葉でまとめたいと思います。

「神回」

 これで伝わるかな。伝わらないか(笑)

(おわり)

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